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こんばんは。あの、ですね…少々テンション低いです。
早く、ホムペ作って仲間作りたい…
感想欲しいっ!!orz
イラついてます。よーちゃんは、大変イラついてると思います(自分の事です
と、いうことで…今回の⑩は、そのうっぷんを晴らすかのごとく「ばしゅっ」となっています。
作ったのは(◎Д◎)←こう、なる二日前くらいですが…
ふっ……ふはははははははh((


では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から10お楽しみください。
 




======


 砂地の奥に面したドリフト国。地方の地図だと、中心の真上にある王国。国民を見降ろすために立てられたその城はとても大きかった。ウォーグルのリベットに乗ったタキは、街の目の前で地面へと足を付けた。一息ついてリベットの頭を撫でる。

「ありがとう、リベット。ここから先は一人で行くよ」

 そう言った瞬間、タキの腰に付いていた赤い球からクジャが飛び出して来た。タキの隣で一声鳴いたそれは、私が着いているから大丈夫よ、と言っている様にも見える。しかし、タキは首を横に振って見せた。

「嬉しいけど、駄目だ。この王国は『人間と獣、一人一人の自由への道を作る』ことを肩書にして生きてる。獣と人間が一緒にいるところを見られれば、クジャも俺も…リベットだってどうなるか解らない」

「グぅ…」

 つまらない、と言った表情でクジャは頬を膨らませると赤い球の中に自分から戻って行った。タキはそんなクジャに一言謝るとリベットに声を掛ける。

「リベットもばれない様に近くを飛んでてくれ。何かあったらリベットに聞こえるように口笛を吹くから」

「グォー!」

 リベットも理解してくれたようで、大きな翼を広げて空へと羽ばたいていった。羽ばたくリベットの姿を見つつも、タキは眼の前に広がるドリフト国へと歩き出した。王国に入るのは簡単で、警備もなく難なく入る事が出来た。城の門も警備が薄いのだろうか…。
 街の中は一見はとても綺麗だ。砂地…砂漠の中に出来た国だが、食料も豊富なようで近くには観光グッズも売られていた。そういえば、ビクとベルに何か買って帰らないとな。タキは、まず『ドリフト名物』と木の看板が立て掛けられたテントの中に入った。入った瞬間、嗅ぎ覚えのあるアルコールの匂いがしてタキはまた片手で口を押さえる。

「おぅ! らっしゃい!」

 店の店員も悪そうな顔はしていない。周りには、リバリー国で使われているような技術のものもなかった。青ざめた顔をしていればにひひ、と喉を鳴らしながら店員がタキの背中を軽くたたいた。

「お客さん。入った瞬間に喉が渇くほど酒が好きなんですねぇ」

「ああ…昨日の今日も酒で喉が渇きまくりでした」

 この世界で一番、酒が憎くてたまりません。もう当分は眼にしないだろうと感じていた矢先にこれか…。タキの言葉に笑って見せる店員。一体、苦しんでいる自分を見てざまあみろ、とでも思っているのか…それさえも解らない。酒に関わる人間は、荒れ狂うバッファロンも同じだ。

「まあ、そんなお客さんにはこの一品! ドリフト名物、モモンワインだ」

「モモンワイン?!」

 酒=モモンワイン。これもまた、一昨夜に事件があったばかりの品物だ。木箱の上に並べられたボトルに入った桃色の液体を指で突いてみれば、たちまち昨日泥酔する前の事件が鮮明に甦る。口元を引きつるタキを横に店員が続ける。

「このワインにはねぇ、その名の通りモモンの実が使用されているのです。有名な話もありまして、かなり昔にこのモモンワインを使った毒殺事件もあったんですよ! いや、今はもう毒なんて入ってませんし、おいしい酒です」

「へぇ…」

 モモンワイン毒殺事件。リバリー国で一騒動起こるところだったものと似ている。となると、作られた場所はドリフト国。リバリーまで距離があるのに、よくあんなに大量にモモンワインを持って来れたものだ。タキは、ボトルを突くのを止めると微笑んで見せた。

「いや、すいません。このワインは、深い事情があって一本飲み干す事も出来そうにないので止めておきます」

「へい…そうですかい」

「あ、だけど…子供が遊ぶような物が売っている店を紹介してくだされば嬉しいです」

 微笑むタキに、少しでも沈みかけた店員の男の顔がまた輝きはじめた。

「そんなら、私の経営店でおもちゃ屋があります。すぐ隣ですので行ってみてください!」

「ありがとうございます」

 お辞儀をするとタキは足早に店を後にした。外に出て先程より新鮮な空気を吸い上げる。アルコールの匂いは強烈で、とてもじゃないが⒑分もいられなかった。観光グッズが売られているって、全くのガセネタで本当はお酒じゃないか。
 溜息をつきながらタキは、隣のおもちゃ屋へと足を急がせる。おもちゃ屋の中は、先程のテントと同じ形の作りで出来ていたが、天井からは綺麗に光る星やバニプッチの人形が垂れ下がっていた。店員は、眼鏡を掛けた老婆で本を読みながら椅子に座っている。これは、勝手に見ててもいいのかな。
 そう思いきょろきょろ色々な玩具を見た。綺麗な鈴やぬいぐるみ、ボールにおもちゃの馬車など沢山ある。面白い。子供の頃は、こんな玩具で遊んだ事はなかった。いつもクジャと森で遊んだりして…それでも凄く楽しかったのを憶えてる。ふと玩具が置いている台の下を見てみれば、真っ黒な玩具の乗り物を見つけた。車の形ではないそれは、本や近国で話題になっている汽車の形だ。

「うわぁ」

 凄い、と思わず声を出しながらそこにしゃがみ込んだ。リバティ王への報告で書類を読みあげる際に、文字と挿絵でしか出会えなかったが今、眼の前にその形の玩具がある。そうだ。ビクはこの玩具にしよう。きっと喜ぶだろうなぁ。
 そっと汽車の玩具を掴もうとすると、頭上から自分よりも少し大きくて細長い指の手も同時に現れた。びくりと体を震わせて後ろを振り向けば、眼の前に見覚えのある緑の髪に瞳の青年がいた。服装も以前纏っていた黒いマントではなく普段着のようであった。ここの国の国民だったのか。

「あ、あの! 前は、本当に助けてもらってありがとうございます」

 戸惑いながらもなんとか言葉を連ねて青年に声をかけた。青年の瞳にも少し明かりが射したように見える。憶えていてくれたのだろうか? だが、青年の腕や右目は以前会った時の様に包帯で巻かれていた。

「まだ傷、治ってないんですね…大丈夫ですか?」

 聞いてみるが青年からは声が返って来なかった。ただ、じっと何かを見ている。青年の視線を辿ってその先を見てみれば、そこには汽車の玩具があった。そうか、この人もこれが欲しかったんだ。タキは汽車の玩具から手を放す。

「これが欲しかったんですね。すいません」

 笑顔でそういうタキに青年はようやく目線をこちらに向けた。

「……いいの?」

「構いません! 前に助けてもらったお礼もありますし…」

 言ったタキの顔をじっと見つめたまま汽車の玩具を取ると、彼は本を読んでいる老婆にお金を渡してタキの方へと戻ってきた。汽車の玩具の入った箱を片手に彼はじっとタキを見つめている。流石に恥ずかしくなってきたタキは、痺れを切らして声をかけた。

「あの…なんですか?」

「ジャローダやあの子とは離れたのかい?」

「いえ、あの…えーっと……」

 この場で本当の事を言うべきなのだろうか。この青年はこのドリフト国の人間だ。事実は隠すべきだろう。タキが心の中でそう思い、話しかけようとしたその時。彼は、タキの耳元まで口を近づけると静かに呟いた。

「『着いてきて』」

 青年の声を聞いてタキは眼を丸くする。タキの瞳は段々と光を失うと心を失ったようにぼんやりと青年を見つめた。タキの表情を確認するように青年は顔を覗くと、そのままタキの手を取って店を出た。タキ本人は、表情さえ作れない自分の体に心の中で違和感を感じていた。足も彼に勝手についていく。自分で動かしていないのに…
 彼に手をひかれながら、ドリフト国内を歩く。自分の意思がない以上何も反発できない。しかし、彼と一緒に歩いていて気付いた。ドリフト国内に入った道なりは綺麗に建物や店が創られているが、そこから違う道へと出ればスラム街になっていた。人々は貧しい服や食べ物で生活している様に見られる。家を持っている人も少ないようだ。街の人間は、彼や自分を睨みつける様に見ているのが解る。
 だが、彼はそんな人眼も気にせず街を歩き続けていた。青年とタキは街を抜けると大きな城門の前へと行く。城? ドリフト城なのか? どうしてそんなところに連れていくのだろうか。まさか、自分がリバリー国から来た事を知っていたのかもしれない。だけど、逃げ出そうとしても体が言う事を利かない。
 そうしているうちに、彼が城門に立っていた兵に声を掛けられた。街の警備と城の警備の差はこの光景を見て解る。

「ハルモニア様。おかえりなさいませ」

「うん、ただいま」

「失礼ですが…そちらの方は?」

 城の警備員が自分の顔を見つめているのが解る。その眼はなにか怪しいものでも見るかのようだった。同時になにか嬉しそうな表情にも見える。警備員がタキに触れようと手を伸ばすが、青年の制止によってその手は下げられた。青年は続ける。

「僕の人間の友達です。あまり不愉快なことはしないで」

「も、申し訳ございません」

 冷汗を額に流しながら警備兵はその場に道を開ける。青年はタキの手を強く握りしめて城門を潜った。城門から城へ入るとまず、手前には庭があった。国民の住む場所とは違いが激しい。ディスコード王が人や獣を物の様に扱う姿が眼に浮かぶ。青年の言う事を聞く自分の体は、青年と共に城内に入りコンクリートで出来た階段を駆け上がった。
 そして、小さな少年のように小さな扉の前まで駆けていくと、青年は扉を開きタキを連れて中に入った。直ぐに扉に鍵を掛けると、少年はタキの手を引いてカラフルな絨毯の上に座らせた。部屋の中は、滑り台や小さな子が乗れそうな車の玩具などが置かれてあった。天井からは、先程のおもちゃ屋のように空を飛ぶウォーグルやバルジーナの玩具が天井から垂れさがっていた。
 タキは、未だに動かない自分の体の内側から部屋を見ていた。

「ダルマッ!」

「しゅー…」

 滑り台の裏側から獣の声が響く。滑り台からひょっこり顔を覗かせる獣は、ダルマッカであった。青年はくすりと微笑むとダルマッカに声をかけた。この人…今、はじめて笑った。

「みんな、大丈夫。この人間は悪くないよ」

 彼がそう言うと、滑り台から顔だけ出していたダルマッカがタキと青年の元へとやってきた。それに連なるように、オタマロやバニプッチ、ゾロア、ギアル、チョロネコなど沢山の獣達が眼の前に集まってきた。獣達はみんな、不思議そうにタキを見ている。バニプッチは好奇心からかタキの肩の上にまで乗ってきた。
 獣達が安心そうな顔をしているのを確認すると、青年はタキの耳元で囁く。

「『僕がいるかぎり自由にはなれない けどみんなでお話をしよう』」

 言った瞬間がくりとタキの上半身は絨毯に着いた。力を入れてみれば、体が動く。ぼんやりした瞳のまま、タキは青年を見つめた。

「君はここの兵なのか? 王様? 君は、ディスコード王なのか?」

 もし、本当に自分がリバティ王と別行動でドリフト国を見ていたことがばれれば不味いことになる。やっていたことは、ドリフト国のスパイとも似ているから…。慌てて立ち上がろうとするが、足には力が入らない。驚いていれば、青年は続ける。

「僕の名前はハルモニア。君には…なんだか興味があるから教える。君の名前は?」

「た、タキ」

「そうか。タキ…よろしく、て言えばいいのかな」

 青年、ハルモニアは頷くと持っていた箱から汽車の玩具を取りだして遊び出した。タキは、どうすればいいのか解らないままハルモニアに声をかける。

「あの…」

「なに?」

 汽車で遊んでいたハルモニアがタキを見れば、周りにいる獣達も一斉にタキを見つめる。とりあえず、何か話さなければとタキは口を開いた。

「名前、ハルモニアって言うんですね」

「うん、そうだよ。敬語は止めよう。なんか城の人と似てて嫌だ」

「あ、ごめん…」

 タキは条件反射で頭も下げながらハルモニアに謝った。

「ハルモニアって良い名前だな」

「ありがとう。王様が付けてくれたんだ」

「王様が? じゃあ、ハルモニアはドリフト国の王子なのか?」

「いや、王子ではないよ」

 遊んでいた汽車の玩具をゾロアとオタマロに奪われながら、ハルモニアは悲しそうにそう言うとタキに体の向きを合わせた。

「僕は…この国に来る前の記憶がないんだ」

「記憶がない?」

「そう、僕には記憶がない。気が付いたら君くらいの身体つきで、この城の…この場所にいた」

 話しているとチョロネコがやってきて、ハルモニアは優しく顎を撫でてあげた。ハルモニアは続ける。

「この場所には、僕と同じでこの子たちもいたんだ。寂しい時は一緒に遊んでた。今もそうしてる」

「そうか…この獣達は、ハルモニアの家族なんだな」

「家族…? あ」

 ハルモニアは間抜けな声を出しながら首を傾げると、タキの腰に手を回して赤い球を取りあげた。取られた瞬間、タキもハルモニアと同じように間抜けな声を出してしまう。赤い球からは、クジャが出てきて嬉しそうにタキの体に巻きついた。
 その姿を見て、ハルモニアはクジャをじっと見つめる。クジャは、ハルモニアに眼を合わせると嬉しそうに頷きながら一声鳴いた。

「うん、家族ってそういう意味なんだ」

「え…」

 勝手に会話が成立している。驚いてタキはクジャに眼を合わせた。クジャは、そんなタキに気が付きじっと頬を桃色に染めながら見つめてくる。なんだ? なんでクジャの声が聞こえるんだ。眼を合わせれば聞こえるんだろうか。そう思いながらクジャを見つめていたタキに、不意打ちを掛ける様に顔を近づけてタキの口元にキスをした。

「なっ! なにをっ?!」

 顔を真っ赤にして驚くタキを見てハルモニアは可笑しそうに笑う。

「ジャローダは、好きな人と眼があったらキスのサインなの、て言ってるよ」

「えぇぇっ?!」

 今のでクジャの声が分かったのか、とタキは眼を輝かせながらハルモニアを見つめた。キスをした張本人であるクジャもタキの頬に顔を寄せながら恥ずかしそうにしている。

「ハルモニアは、獣の声が解るんだな」

「怖い? 獣の声が解るし…変な力は使えるし…」

「いや、全然、全く! 凄いと思う!」

 自分の言葉を否定したタキの真剣な表情を見て、ハルモニアは驚いた顔をすると嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。君だけだよ、僕を化け物って呼ばないのは…」

 本当に嬉しそうにそう言うハルモニアに他の獣達も驚いている。そこにゾロアが突然タキのところへ寄ってきた。クジャの体の上に登れば、タキの眼の前にゾロアがやってくる。少し体の震えたゾロアをそっと撫でてやれば、ゾロアは何かを溜めていたのかボロボロと涙を流しながらタキの手に頬を擦り寄せてきた。
 他のオタマロやチョロネコ、ダルマッカにバニプッチも一斉にタキの体に付いて涙を流す。少し戸惑ったが、タキも獣達の心情を受け取るとそのまま優しく一匹一匹を撫でてあげた。その姿を見ながら、ハルモニアが続ける

「その子達は、人間に酷い事をされてここにいるんだって。どんな人間かは解らないけど…」

「そうだったのか…」

「それを考えれば…タキも少しはディスコード王様の考えが解るんじゃないかな?」

 確かにハルモニアの言うとおりだ。人間と獣が関わると、色々な事件も起こる。ベルの時だってそうだ。人間に酷いことをされていた。

「ディスコード王の考えも正しいのかもしれない。けど…」

 話しだしたタキを真剣な表情でハルモニアは見つめる。タキは続ける。

「けど、俺はクジャと離れたくない。だから、自分勝手だけど…やっぱりディスコード王の考えだけが正しいとは思えないんだ」

「タキもそう思ったか」

 ハルモニアがぽつりとそう言葉にすると立ちあがって滑り台の上へと登って行った。そして、背中を付けながら滑り落ちると天井のバルジーナを見上げた。

「世界中の人間や獣達が同じことを考えてる訳ではない。人間といたいと願っている獣も、人間が憎い獣もいる。はっきり言ったら、リバティ王もディスコード王も両方が正しいとは言い難い」

「リバリー国の王の名前を知ってるってことは……やっぱり、俺がなんでここに来てるか知ってたのか」

「まあね」

 立ち上がりながらハルモニアは汽車の玩具を取って箱の中に詰め直した。

「ディスコード王様がリバリー国にスパイを送っていたのも、リバティ王を今夜パーティに誘ったのも知ってるよ。全部…全部知ってる」

「全部って…何を」

「タキも不思議に思わなかったかい? リバリー国にスパイを送って君達の作った技術を探っていた。不審に思ったリバリー国は、タキをここにスパイとして侵入させたけど…解ったのは、国民の半分以上が貧しい暮らしを送っていること、それだけだろう?」

 汽車の玩具が入った箱にオレンジ色のリボンを付けながらハルモニアは話しを続ける。

「折角、リバリー国で技術を盗んだのにも関わらず…国民には一切その手は加わらない。食料と水だけがなくなっていくこのドリフト国でずっと獣も人間さえも…国民は憎んで生きているんだ」

「なんで国民にその技術を教えないんだ? 人間は人間で暮らしているんだろ? ディスコード王が国民を嫌う意味が解らない」

「そこだよ」

 縛り終わったリボンは、少し不格好であったがハルモニアは満足げに頷くと青い袋の中にそれを詰めた。

「ディスコード王様は、最初から自分だけが幸せになれる国を作る予定でいたのさ。獣も物も自分だけの物。そういう考えだった。そして、国民へと活用されないその技術は、自分の身の周りや僕の研究に使われた」

「ハルモニアの研究?」

 首を傾げたタキ。クジャもタキに絡まるのを止めると隣でそっと二人を見つめた。ハルモニアは自分の胸に手を当てる。

「僕には昔の記憶がない。もしかしたら、ここで作られたのかもしれない」

「どういうことだ…」

「君の国では遺伝子というものが最近発見されたみたいだね。それではっきりしたんだ。僕は、人間でなく、獣だってこと。人間と同じ姿だけど、獣寄りらしいんだ。城の人間からは、ここに来た時から獣の言葉を聞けるせいで化け物扱いされてきた。獣のように、技も多少は使える」

 そう言うとハルモニアはタキの耳元に顔を近づけ小さく囁いた。

「『もういいよ』」

 ハルモニアの声と同時に、タキはぼーとした暗い瞳が明るくなった。ゆっくり足を動かしてみる。動く! タキの反応を見てハルモニアは答える。

「僕の声は人を操れるんだ」

 立ち上がったタキの足の周りで獣達がぴょんぴょん楽しそうに跳ねている。タキは急いでバッグに着いていた懐中時計を見るとぎょっと眼を丸くする。もう6時30分だ。

「もう時間だね」


 悲しそうに言うハルモニアに獣達が駆けよる。獣達も悲しそうにタキとクジャを見ていた。

「うん、もう行かなくちゃ…最後に、ハルモニアに質問がいくつかあるんだ」

「いいよ」

 優しく言ってくれたその言葉を紡ぐ声さえも…彼の技なのだろうか。タキはポンチョを脱いで片手にかけると続ける。

「人を操れるなら、なんでその力を使って逃げようとしなかったんだ?」

「誰かを操るのが怖いんだ。時々、童話や童謡を口にしたりするけど…聞いていた人間も獣もみんな僕の思ってたようになってしまった時があった。それが嫌だ…怖いんだ」

「そっか…」

 笑顔だったハルモニアは眉をしかめて俯いていた。そうだ、誰かを操るのは確かに恐ろしい事だ。みんな同じ思考にも出来てしまう。ひとりの人間が多くの命を操るのは勇気がなければできないものだろう。タキは、背の高いハルモニアの両肩を掴んで真剣に話す。

「ディスコード王やリバティ王の考えに納得出来ないように、ハルモニアは自分の考えを持ってるんだ。それなら、自分が本当にしたいことをすればいい。君は一人の人間なんだ」

「人間じゃ…ない」

「人間じゃなくても! 獣でもなんでもいい! 生き物一人一匹、それぞれに夢がある。夢を諦めたらそこでおしまいだから・・・」

 タキの言葉を聞いて俯いていたハルモニアが顔を上げた。ハルモニアの目の前にいたのは、真実を知ったタキの姿と理想を追うようにハルモニアに告げるタキの声だった。

「ハルモニア…君が本当にしたいことはなんなんだい? それを探して、自分だけの道を進むんだ」

 じゃあね、とハルモニアの右肩を叩くとタキはクジャを手招きして部屋の鍵を開けてその場を後にした。獣達と一人残ったハルモニアは、右肩に握り締めるとバルジーナの玩具が浮かぶ天井を見上げた。
 夢ってなんだろう。僕の夢は…なんだろうか。




======




 ハルモニアの部屋を後にしたタキとクジャは、急いで城門へと戻る。階段を急いで降りていたら、この国の召使の女と出くわしてしまった。彼女は、クジャを見るなり金切り声を上げながら逃げ出してしまった。本当に獣が嫌いな人が多いんだな。
 ドリフト城の城門に出ようとすれば、大きな城のホールの扉からリバティ王様が入ってきた。リバティ王の隣には、迎えに出たドリフト国の七賢者のひとりがいた。

「王様!」

「おお、タキか。どこへ行ってたのじゃ」

 リバティ王は、タキを先に行かせたまでは把握していたがドリフト城から迎えに来るとは思っていなかったようだ。だが、ドリフト国の賢者の一人がいる今はどんな会話も交わせない。タキはリバティ王の隣に着くと冷静な表情で賢者を見た。

「リバティ王様の迎えをありがとうございます」

「いえ、めっそうもございません。ではどうぞ、こちらです」

 王様から離れると賢者は先頭を立って階段を上がり出した。タキとクジャは、リバティ王の隣で普通の顔をしながらも辺りを警戒して賢者に着いていく。しばらくずっと階段を上り続けていると、窓が暗くなっているのがわかった。黒ずんで見える絨毯は、大きな黒木の扉へと続いていた。
 賢者が扉を開けると、そこには長い食卓テーブルが広がる。食卓テーブルの周りには七賢者が全員集まっていた。周りの黒と似合わぬ白いテーブルクロスの上には、食事が用意されている。奥の真ん中の席には、ディスコード王がいた。整った顔立ちに、笑みを浮かべたディスコード王はなんとも厭らしい。

「これはこれは、リバティ王! 出会えて光栄です」

「ディスコード…」

 声に少し怒りが混じっていた。タキは、王様の顔を覗いて首を縦に振る。わかっておる、と一呼吸するとリバティ王はディスコード王の目の前の席に座った。その隣についたタキ。二人に着いて行こうとしたクジャは、扉の隅に隠れていた兵士に周りを囲まれた。

「随分な兵の数じゃの。今宵は、パーティと聞いて参加したのだが…」

「大切なパーティを誰にも邪魔されたくないのです」

 片手を大きく振ると、ディスコード王はグラスに注がれていたワインを口にした。リバティ王は、食事になにも手をつけずにいる。

「お食べになってください。長旅で疲れたでしょう」

「いや、実はお主と話しがしたくての」

 グラスを片手にディスコード王はリバティ王を見つめる。

「私もお話しがありました。今後を左右する重要なお話しです」

 今後を左右する、だと? なにを言っているんだこの王は。タキは少し心無しか賢者達がこちらの様子を伺ったのを見逃さなかった。なにか企んでる。リバティ王は続ける。

「ディスコードよ。お主はなにかを企んでいるのではないか?」

「貴方こそ…何を企んでいるか分かりかねますな。一体、ビクティニを手に入れるなど何を考えているのやら。一騒動起こすつもりですか?」

 ドキッと心臓が大きく高鳴るのをタキは感じた。この王は、ビクティニのことまで知っていたのか。一体、どこから情報を仕入れたのだろうか。リバティ王も驚いたように両手を食卓テーブルに力強くのせると席を立った。

「何故…お主が知っておるのじゃ?!」

「風の噂ですよ。私は、以前に同盟を組まれないと貴方に言われてから、貴方が何を考えているのかわからなくなりました。しかし、この噂を聞いて解ったのです」

「同盟を結ばなかったことでお主もわかっていたじゃろう。お主と私は、考えが全く逆だったのじゃ!」

 必死に反論するリバティ王を目にしながら、ディスコード王はナイフとフォークを手に肉を切り始める。そして、一口肉を頬張ると音をたてながら飲み込んだ。口端に付いたソースを前掛けで拭いながらまた口を開く。

「太古の昔から伝説として伝えられている勝利を齎す獣、ビクティニ。この獣が参加した戦争は、どんな戦いにも勝利を約束されると言います。貴方は、ビクティニを使って貴方と全く考えが真逆の私を殺そうとしていたのではありませんか?」

「勝手に話しを進めるでないぞ、ディスコード!」

 逆上するリバティ王だが、今は何も止めることなど出来ない。

「お主こそ、何故私の国にスパイなど送ったのじゃ!」

「それはよく分かりませんな。身に覚えの無いことです」

「白を切るでない!」

「ビクティニをこちらに渡していただきたい」

「なんじゃと?!」

 ディスコード王の言葉にはリバティ王だけでなく、タキも驚いていた。クジャも兵士達に囲まれながらも低く唸っていた。これは、おかしい。間違っている。ディスコード王は、何を考えているのか全くわからないが…全てハルモニアの言っていたとおり、自分だけしか考えていないそれだけは改めて理解した。
 フッと目の前で動いた一人の賢者を見つけて、タキはその賢者に指を指した。

「ジャローダ、つるのむち!」

 タキの声を聞いたクジャは、すぐに長い弦を出して素早く賢者を蔓で叩いた。しかし、それは壁を砕いただけで賢者の姿はどこにもなかった。瞬間、クジャの体に鉤爪ロープが回された。首や体に鉤の刃やロープが食い込み、苦しそうに唸りながらクジャはその場に倒れた。

「クジャ!」

 苦しむクジャを見て思わず王様から離れるが、姿を眩ませた賢者が短剣を持って王様に襲い掛かって来る。しかし、タキも腰に隠していた短剣を取り出すと賢者に投げつけた。気づいた賢者は、軽々とその短剣を交わした。落ちた自分の短剣を拾い上げ、目の前にいる賢者へと駆け込む。その賢者の目の前でタキが消えたかと思うと、タキは賢者の足を払いこけさせた。
 尻餅をついた瞬間を狙って、賢者の首元を切りにかかったが、短剣を持った右手を捕まれて素早く背後に回られた。左手も後ろで縛り上げられて痛みが走る。賢者はタキから短剣を奪うとグイッと首元にそれを当てた。

「タキ!」

 リバティ王が冷汗を流しながら叫ぶのが見える。ディスコード王はニヤリと不敵に微笑むとタキを指差して続けた。

「その子供を随分と大事になさっているようですね」

「や、止めろ。もう止めるんだ、ディスコード!」

「止めて欲しいのなら条件を飲んでもらいましょう。ビクティニを渡すか…」

 ディスコード王の指が下げられると同時にタキを拘束する賢者の手が強まる。それでも声を漏らすまいとぎっと歯を食いしばるタキ。

「その子供の命か…」

「ぐぅぬ…」

 タキとクジャを見つめて、リバティ王は黙り込んでしまった。駄目だ王様…
言う言葉は一つのはずです。タキはリバティ王になんとか分かって貰おうと瞳でそう語った。それに気が付いた賢者は短剣の柄でタキの頭を殴って見せた。流石にこれには堪えきれず少し声を漏らしてしまったが、リバティ王はその姿を見てディスコード王に目を向けた。
 待っていたと厭らしい目つきで相手の出方を伺うディスコード王。リバティ王は、深く息を吸い込むと大きく口を開いた。

「お主が傲慢なように私も傲慢なところはある! ビクティニはお前なんぞには渡さんし、タキもジャローダも殺させわせん!」

「なん…だと?」

「よく言ってくださいました、王様!」

 ニッと口元に笑みを浮かべると、タキは賢者に足をかけてそのまま体を倒した。拘束された手が緩むと短剣を奪い、肘で相手の鳩尾を突いた。賢者は逆流した唾液を吐き出すとばたりと動かなくなった。

「クジャ、周りの縄にリーフブレードだ!」

「クジャーっ!」

 力強く唸るとクジャは自分にかかった縄を尻尾で切り裂いた。クジャは鉤の刃を蔦で引き抜くとぐるりと王様の周りを囲みディスコード王を睨み上げた。クジャの瞳を見たディスコード王は、身震いしながら席を立つ。

「なんと恐ろしい姿だ」

 タキもリバティ王とクジャの隣にやってくると、今まで閉ざしていた口をこじ開けた。

「先程から王様と貴方の話を聞いていればなんですか! 自分のことばかり…! なんでも人を操れると鼻を高くしない事です」

「クジャアァっ」

 言ってきたタキを次はディスコード王が睨みつける。きっと、身分が低い者が王の話合いに口出しをしているからだろう。けど、こんなの話し合いじゃない。タキは、短剣を構えると更に怒鳴った。

「人や獣を道具のように扱う自分勝手な貴方にビクティニは絶対渡しません! ビクは俺の大事な家族だから!」

「家族? 獣がぁ?」

 喉で笑いながら、ついには腹を抱えて馬鹿にしたように大笑いすると、ディスコードは両手を掲げた。

「なんとも、馬鹿馬鹿しい。そうですね…貴方の大切なご家族のビクさん。ビクさんは、まだ私の有能なコマです」

「ビクは道具じゃない!」

「まあ、聞きなさい。ビクさんやそこにいるリバティ王様は大切な、大切な存在です。しかし…貴方はどうでしょうか?」

「なにっ…?!」

 ブワッと辺りに血が噴き、テーブルクロスまで赤で塗りつくす。それは一瞬で、痛みは感じなかったがドクドクと首筋から縦に傷が開き、血が出ているのが解った。熱くて、感じていなかった痛みは段々と増していく。何が起こったか分からないまま、タキは目の前で短剣を持つ賢者を見つめた。
 さっき、自分が気絶させた一人だ。彼は、短剣を投げ捨てるとニヤリと不敵に微笑みながら右手を顔にあてた。すると、たちまちその姿がゾロアークへと変わっていく。
 獣だったのか?!

「貴方は、先程まで私の有能なコマでしたが、今では私の視界を塞ぐ生ゴミでしかないのです」

 ディスコード王の声と共にタキはその場にバタリと倒れた。ゾロアークは、俊敏な動きでディスコード王の隣へ移動する。タキは、出血した首筋を震える手で押さえるとゆっくり瞼を閉じた。ディスコード王の気味の悪い笑い声と、クジャの高い叫び声のような鳴き声を耳にしながら。


 11話に続く…

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☣プロフィール☣
HN:
代珠
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
  学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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