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こんばんは!
昨日は朝5時まで書いてました…それでがっこから6時に帰ってきて今まで寝ていたわけですが…
今回はとても長いお話になっています! 皆さん下へのカーソル頑張ってくださいね(^-^)
最近、前回や前々回などのお話を読みなおしてみたのですが、本当に誤字脱字?等が多いです。気がついた方で、お時間ある方などは、拍手やメールで伝えてくだされば凄く助かります!
そして…
ビク編と○○編で分ける予定でしたが、分けないで合体させます。
前回ビク編を読んでくださっていた方々は、①から読んでください。
ビクとのお話はまったく変わりません。



では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から8お楽しみください。




======



 ちりーん、ちりーん

 リビングから鈴の音が聴こえてくる。きっと、ベルのものだろう。普段とは違うその音色は、優しく心地よすぎてまだ寝ていたい気分にもなる。ベッドの上で横になっていたタキは、そう思いながらゆっくりと眼を開けた。右隣りには、丸くなって眠るクジャの姿がある。
 寝室内にある小窓から漏れる光は、どことなく赤色が混ざっていた。多分そろそろ夕方なのだろう。ビクとの夕食の買い出しも早めに行かないと…
 まだ眠りについているクジャを起こさないよう、タキはそっとベッドから離れてリビングへと向かった。
 リビングへ行けば、ベルがなにやら本を持って必死に声を張り上げていた。真剣な表情で本を見ているベルの傍に行くと、タキは本のタイトルを見つめる。

「『体術入門発声編』…?」

 声がしてベルは驚いて本を机に置くと、嬉しそうにタキの胸に抱きついた。
それにしても…なんでビクに貸していた本をベルが読んでるのだろうか?
 タキはふとそう思い、何気なしに見たテーブルの上を凝視した。朝持ってきたシチューの入った鍋の中は空っぽになっていて、パンの入っていた紙袋はくしゃくしゃに潰れている。そして、朝食を全て食い散らかした張本人は、鍋に抱きつきながら幸せそうに眠っていた。
 俺が眠っている間、一体この子たちに何があったのでしょうか?
 唖然と立ち尽くすタキを見て、ベルは理解したのか眼の前で解説し始めた。

「ちりりー! ちりっ」

 小さな手で腰に手を当てて、ビクのように鼻を鳴らすと本を持ってタキの周りを周る。
 つまり、「本だ! 本だやったー! おいらだって人間の言葉くらい読めるんだぞー 凄いだろー あーはっはっはっ」と言ってるのか…

「ちりん! ちりり… ちりーんりん! ちりー? じりっ じりりりぃー!」

 今度、ベルは本を捲って考え込む表情を取ると、急に怒って本を投げ出した。
 つまり、「よし、早速読んでみるか! どれどれ… うーはっ! はん? ふざけているのかこの本はー こうしてやるー」か。

「ちりん!」

 投げた本をベルがまた取りに行く。これは多分、「駄目だよ!」か。ベルは、本を床に置くと、眼と口端を吊り上げて小さな片手をテーブルに向って降る。

「じりぃー! じりりぃー! ちりぃい」

 籠った鈴の音を喉で鳴らしながら、ベルは手を口に付けて何かを食べる仕草を取っていた。
 つまり、「ふん! 上手そうな物があるぞ! オイラが全部食ってやるー がぶがぶー」か。その後、ベルはひゅっと床に落ちていくとばたりと寝たふりをした。寝たふりをしながらこっそり本の落ちている場所に行き、両手で本を取ると頭上に高々と上げて鳴いて見せた。

「えっと…ビクが一人で本読んでて、ムカついて全部食べ物食べたのか?」

「じりぃぃー」

 いーっと歯を噛み締め、届いてはいないが真上でバツ印を腕で作ろうとしていた。

「じゃあ…ビクが一人で本読んでて、お腹空いたから食べ物食べたのか?」

「じりん! じりりん!」

 ぶんぶんと頭をふっている。やはり違うのか。ベルは、ふくれっ面で自分を指した。

「ああ! ベルも一緒に読んでたのか?」

「ちりーん!」

 ようやくタキに伝える事が出来て、ベルは満足そうに頷いた。タキは、やれやれと両手を振るとビクの肩を揺らした。

「ビク、ビク!」

 大きな声で名前を読んでも、ビクは起きない。代わりに小さな手でタキの手の甲を叩いてきた。

「…こりゃ、駄目だ」

 一言そう呟くとタキは斜め掛けバッグを肩から掛け、玄関へと向かった。ビクと夕食の買い出しに行く予定だったけど、無理して起こすのも悪いし一人で行こう。玄関の扉を開けて外に出ると、背後からベルがゆっくりやって来る。気づいたタキも振り向いてベルを見れば、じっと口をあんぐりと開けてこちらを見ている。

「ベルも来るかい?」

「ちり?!」

 えっいいの、とでも言いたげにゆらりと体を揺らすとベルはタキの隣についた。タキとベルは、家を出ると街へと歩き出す。

「そういえば、ベルは友達出来たか?」

 質問に首を縦に振ると、ベルは喉を鳴らしながら隣でわいわいと話しだした。だが、タキには全くなにを言っているのかは解らず、それでも理解しようと考えに考え、そうか、と一緒に笑っていた。
 話していれると既に街についており空はさっきよりも赤く染まっていた。夕食の買い出しは、早めに済ませないと危険だ。後からこの街の商店街はお酒祭りと化する可能性もある。獣も人間も仲がいいのはいいが、酒癖の悪い人が多いのは直してほしいな。




===




 街を歩いていれば、魚屋、肉屋、八百屋などが多く並んでいた。それぞれ、もう品数は少なく店を閉めようとする店主も多かった。夕方だし、もう食料はいつも通っていたあの店で調達するしかないだろう。タキは、『きのみDE』という看板が出されているお店に足を運ぶ。

「すみません!」

 店内にいる店主を呼べば、中からパンチパーマの女性が現れた。ぽっちゃりした体つきは、オボンの実そっくりである。女店主は、タキを見て片眉をしかめるが隣にいたベルを見て頬を染めた。

「あらぁ! 可愛い子ねぇ。どうしたの?」

「ベルっていうんです。遠くの地方から来たんですよ」

「へぇーそうかい。疲れただろうに…」

 高い声でそう言うと女店主は、丸々とした手でベルの頬を撫でた。ベルは少し照れているようで、女店主もその姿を見て可愛いね、と頭もふにふにと撫でていた。それを横目にタキも微笑むと、木の実を見てすぐにモモンの実を掴む。

「ちょっとお待ち」

 モモンの実を持った腕を掴まれて、タキはどきっと体を震わせた。女店主の顔を見れば、少し怒っているように見えてタキはモモンの実を置くと、次はオレンの実を掴む。しかし、その腕も実を掴んだ瞬間に掴まれて、タキは額に冷汗を流しながら笑顔で口を開いた。

「ど、どうしましたか」

「アンタ…旅の間はなにを食べてたんだい?」


 沈黙が少し続くとタキは、モモンの実を指差す。

「も、モモンの実で出費を浮かせてました」

「やっぱりねぇ」

 呆れたように呟くと女店主は、肉屋や魚屋を指差した。

「昔から木の実、木の実って…アンタ、獣になっちまうよ。たまには他の食べ物でも食べな」

「いや、魚は食べ方が解らないし、肉は前に食べたけどクジャは好きじゃないみたいで…俺もお腹痛くなったし」


「もしかして生で食べたりしたのかい?」

「肉はあれで食べれるんじゃ…」

「なに馬鹿みたいなこと言ってんだい! 肉は焼くに決まってるだろう! それでよく王様の秘書なんてできたもんだい!」

 がみがみと叱られるタキをベルは少し不安げに見ていた。タキは、なんとか興奮している女店主を落ち着かせようと掴まれている手に持っていたオレンの実を目の前に持ってくる。

「俺は色々な場所を旅したけど、ここの木の実が一番おいしかった!」

「当たり前だろう。アタシんとこの木の実は絶品さ。だけど…それとアンタの食生活は関係ないよ」

「そんなことないって! 時々、城の食堂で食事をくれたりするし…頼むよ」

 手を合わせて必死に木の実を売ってくれるよう頭を下げるタキ。まったく、と女店主はタキの腕を放すと奥の方へと向かった。戻ってくると、手には白い紙袋を持っている。どうやら、木の実ではないようだ。

「はいよ」

 普段の顔つきに戻った女店主から紙袋を渡される。タキは眼を丸くして女店主を見つめると、にやりと女は笑んだ。

「野菜や肉でパン焼いたから持っていきな」

「いいんですか…こんな、いくらですか?」

「今回はタダ。アンタん家に増えたベルちゃんの家族祝いさ」

 そう言いながらまたベルの頭を撫でた。タキは紙袋を抱いたままお辞儀をする。それを見て、ベルも女店主にぺこりと頭を下げた。

「ホントにありがとうございます」

「有難い、と思ってるんだったら料理の勉強でもするんだね」

 店主の言葉に喉を詰まらせながらもタキとベルは店を出た。外に出れば、空はもう半分暗くなっていた。さっきまでは、まだ少し明るかったのにな… ベルは隣で欠伸をしていた。俺は寝てたけど、ベルは本を読んでいたから寝てないのか…
 タキは、そっとベルを肩の上に寄せた。これで家に着く間は楽にできるだろう。方向転換してもと来た道を戻ろうとすると、視界が桃色になり自分の体が後ろにボヨんと跳ねるのが分かった。

「見つけたよ! リバティ王の小さい執事」

「秘書です」

 背後に立っていたのは、ムシャーナと魔法使いみたいな格好をした小さいお婆さんだった。この老婆の名前は、ヨダと言ってリバリー国唯一の占い師であった。ヨダは、角度を変えるごとに紫色に変化する衣を首元に寄せ、ムシャーナの大きな背中の上に乗っていた。

「またなんか見えたんですか…」

 苦い顔をするタキにヨダは大きく頷いた。

「そうよ。私は見ちまったのさ…アンタの未来をね」

「今度は俺の未来ですか」

 占い師ヨダの言葉に呆れた顔でタキは溜息をついた。以前にも、ヨダは侵入者が入る夢を見た、とか新しい島が現れるなどと言っていたがどれも当たる事はなかった。そのせいか、リバリー国では名だけと有名になっている。
 思っている間にヨダの占いが目の前ではじまった。ムシャーナの大きな体の上に乗ったヨダは、手を合わせてムシャーナの頭部から出ている煙を手で覆う。聞いた事もないような言葉を口にしながらタキに一喝すると、ふむと頷いた。

「やはりな…」

「……やはり…って?」

 噂には聞いた事のあるヨダの占いだが、自分を占ってもらった事がなかったので不安になった。ヨダは、ムシャーナの上で頭を欠きながら続ける。

「アンタは、暗い視界の中で必死にもがき苦しんでいる。だが、何かを離しはしまいと抱き抱え続けている」

「暗闇? 離さないように抱きかかえてる?」

「そう。そして、近い将来、アンタがそうならないために決めておかなけりゃならないことがある。それは、人間として暮らすか、人間と獣の共存を求めるか…」

「そんなの…」

 人間と獣の共存に決まってる。タキがそう言い掛けると、ヨダはムシャーナの上で前のめりになってタキの口を塞いだ。いきなり塞がれた口からは、何も言いだすことなど出来ずヨダの瞳はタキを捕らえた。

「よく考えてみるんだね。消える時は皆一緒さ」

「ちりり!」

 突然、タキの肩で眠そうにしていたベルがタキの口を塞ぐヨダの手をぽこぽこと叩きだした。痛い、と顔をしゃわくちゃにしながらヨダは手を引っ込める。ベルはその姿を見て、腰に手をあてると鼻で笑って見せた。なんだか、ビクみたいだ。
 ヨダが手に息を吹きかけていると、薄暗くなってきている視界に黒い鳥の影がちらちらと映る。空を見れば王様の鳥である、ウォーグルが飛んでいた。地面やヨダの顔に映る影を見て、タキも空を見上げると右腕を上げて、指で輪を作って口笛を吹いた。口笛を聴いたウォーグルは反転しながらタキのもとへ急降下し、右腕へと体を降ろした。止まったウォーグルの体は、人の顔くらいしかなかった。

「ほぉ…随分と体の小さいウォーグルだね」

「このウォーグルは、ワシボンの時も体が小さかったんだ。だから今は、王様の文通を届ける仕事をしてる」

 説明しながら、ウォーグルの足に着いている小筒状の手紙を広げて読む。その場で読んでいると、ヨダが気味の悪い声で笑ってみせた。

「その手紙はきっと地獄への扉さ」

「五月蠅いぞ!」

「はいはい…あぁー怖い人」

 低い声で唸るタキに油を注がぬようヨダは眼を瞑った。黙ったことを確認すると、また手紙を読み返す。王様にしては荒い文字で、なにか急がれているようにも思える。
 内容は、明日早朝にドリフト国へ行く。城でパーティが行われるらしく、その誘いが昼頃にディスコード王の護り人である七賢者の一人が申しに城に来たという。ドリフト国絡みの事件が昨夜あったばかりなのに、なんてタイミングの悪さだろう。そして、ディスコード王のことだ。何を考えているのかさっぱり解らない。
 手紙を読むタキを余所に、ヨダはムシャーナを連れて何処かへ行ってしまう。きっと、もうそろそろ大人の男共が集まって酒を飲みあう時間帯だからだ。子供だって容赦なく巻き込んで酒を飲ませてくるその時間帯は、タキの昔の嫌な思い出の一つでもあった。あの苦い飲み物を口一杯に容赦なく注ぎ込まれるのは、今いる子供達にもトラウマを与えていくのだろう。思い出しただけでも身震いする。
 タキは鞄の中に急いで手紙をしまった。ウォーグルには、少し家に寄ってもらうことにしよう。王様に手紙を送らないといけないし。

「ウォーグル。一度、家まできてくれないか? 手紙を書きたいんだ」

「ぐるぅ」

 ウォーグルはタキの耳元で鳴くと、体に見合ったその小さな翼で空へと羽ばたいた。空を飛ぶウォーグルの羽は、色の通り綺麗に七色に輝いていた。ベルは、流れ星でも見たかのようにその虹色の羽を見て眼を丸くして喜んでいた。さて… 俺とベルがこの街から家に向かうためのサバイバルがここからはじまる。
 まず、貰ったパンの入った紙袋は出来るだけ押し潰して音が鳴らないようにする。

「ベル、俺の肩に掴まって」

 段々と小さくなっていくウォーグルから眼を離してベルは俺の肩に掴まった。で、ここからが本番! 見つからない様に店と店の間を通って、裏道を渡る。街の陽気なおじさん達の声が聞こえたら近くの箱に身を隠す。
 ベルを肩に乗せ、紙袋を抱えて店の周りを見渡す。店の中では、女の人達が片づけをしているのが多かった。男達は皆、広場に集まって酒の支度でもしているのだろう。タキは、急いで裏路地を周るが、その姿に気が付いた一人の女性が声をかける。

「タキちゃん? タキちゃんじゃないの?」

 珍しそうに言う女性の店には、お世話になったことがある。でも、今振り向いて挨拶をすれば、酒祭りウハウハにされるかもしれない。タキは足を止めて遠くから女性に深々と頭を下げた。

「ごめんなさい! また今度!」

 言うとまた急いで走りだす。女性は、首を傾げると店へと戻って行った。その肉屋の店に、中央広場から黒髭の筋肉質な男が走ってやってきた。荒い息で自分の店へと入ると悔しそうに拳を握りしめる。

「くそぉっ! ミリア! 今、タキ坊の声が聞こえたと思ったんだが…」

「あら? 貴方、聞こえてたの? 耳がいいのねぇ」

「やっぱいたのかぁ?!」

 男は、拳で壁を軽く殴る。女性、ミリアは、肉壁をトレイに敷いて白い大きな箱、冷蔵庫の中にしまい続ける。

「長旅から帰ってきたとは聞いてたけど、全然ここら辺を歩いていませんでしたもんね」

「そうだなぁ、よし! 今日はぁ、タキ坊も連れて晩餐会だぁ!」

「ちょっと… タキちゃんはお酒苦手でしょ」

 ミリアの注意も聞かずに、男は店を飛び出していった。この男の名は、ワグダ。酒が大好きなリバリー国の住民の一人である。ワグダは、中央へ駆けて戻ると集まっていた男達に声をかける。

「おい! 酒の準備は出来たか?」

「おうよ! アンタの好きな強いの用意しといたぜ」

「いや…今日はそれの気分じゃねぇんだ。タキ坊も連れてくるからなぁ」

 タキ…だと? と周りがざわつき出す。ワグダは、人差し指を舐めて手を空にかざした。この真夜中に風向きなどないだろうが、カッと眼を見開くと口の端を上げる。

「…モモンの実を潰した果汁で出来たワインだ」

「は?」

「来い! 持つの手伝え!」

 ワグダを含める3人の男達は、モモンワインを取りに街の通路に足を出した。



==



 街の男、ワグダの目論見も知らずにタキは街の裏道を走っていた。なんだか街が騒がし過ぎるのは、きっともう酒を飲み始めているからだろう。もうそろそろ、普通に商店街に出て帰ってもいいかな、と思った直後、聞き覚えのある声が裏路地へと響き渡るのが分かった。
 タキは、急いで木箱の後ろに隠れる。そして、何も入っていない木箱があったので、自分の入った場所の隙間を残すことなく埋め尽くした。

「確かここだったな… 俺の酒は」

 この声…肉屋の店主のワグダだ。足音が多い。ワグダ以外にもあ誰かいるな…

「しっかし…そんなワイン聞いたことねぇぞ」

「前にリバリー城の兵から沢山貰ったんだよ。ああ、あった。ここだ」

 ワグダの会話と共にタキを囲っていた木箱が三つ動かされた。三つも動かされれば、隠れるにも隠れられない状態でタキは眼の前の大男と顔を見合わせる。

「ひゅー…ホントにリバリー城の付人も出てきたぜ」

「よくわかったなぁ、ワグダ」

「ったりめぇーよ! テメェが小せぇ時からここいら中走り回ってるの見てきたんだ。わからねぇ訳がねぇだろ? なあ、タキ坊」

 コイツ…何処からそんな電波をっ。今日は占い師といい、この酒の香水を振りまく男といい…
 タキは、空の木箱を動かして外に出るが、逃げだす事も想定積みかワグダは太い腕にタキの腕を絡めて歩き出した。片手にはワインが何本も入った木箱。なんて人だ。

「おう! タキ坊! 久々だなぁ」

「あは…そうですね」

 ワグダの近くにいるせいか、本当にアルコールの匂いが酷くて頭がくらくらしてきた。肩の上に乗っていたベルも両手で鼻を押さえると、タキとワグダから少しだけ離れる。ベルの気持ちもわかる。自分も具合が悪くなってきてうっと手で口と鼻を押さえる。ワグダは、大笑いしながら他の男2人を連れて中央広場へ向かった。


==


 中央広場に着くと、男達が一斉にタキへと集まってきた。中には女性もいて、皆仕事の後片付けが終わったのだとそこで知った。ワグダは、タキを沢山出されていたテーブルの中の一つに連れて来ると、木箱からワインを丸ごと一本取り出した。持ってきた木箱からは、幾つもワインが出され集まった人達のグラスへと注がれていく。

「タキ坊はこれだ」

 ワグダがテーブルに置いたグラスは、皆のものと違う。ビールジョッキ並の大きさだ。タキはそれを見て、作り笑顔で笑いながら手を叩いた。

「うわー、凄いですね。大きいグラスだ」

 本当、大きいこと。タキの言葉にベルも大きなジョッキを見て拍手をした。今のはあまり合わせてほしくなかったな… 思った通り、ベルの拍手でワグダも気分を良くしたらしい。目の前でワインのボトルを開けると、大きなジョッキへと桃色のワインを注いだ。

「じっ?! じりりっ」

 ジョッキへ注がれてアルコールの匂いが広がり、ベルはまた両手で鼻を押さえて遠くの、木の実の置いてあるテーブルへと逃げた。ジョッキがモモンワインで溢れるとワグダは腕を組む。

「さっ! じゃんじゃん飲みまくれぇ」

「いえ、いいですよ。俺、家で待ってる人いるんで…」

「ジャローダか? んなこと気にすんなぁ!」

 うん、逃げ出せなかったか。タキは、心の中でそう呟いてジョッキをじっと見つめた。どう言えばこの酒を飲まずしてこの場を抜け出せるんだろうか。考えていれば、さっきの肉屋のミリアが小さなグラスを持ってやってきた。

「タキちゃん。久々ね! 旅はどうだったの?」

「ミリアさん…」

 よかった、まだ飲まなくて済みそうだ。

「ミリアさん、さっきはちゃんと返事できなくてすみません」

「いいのよ! 気にしないで! 大方、この人から逃げようとしてたんでしょ?」

 優しくそう言ったミリアの平手がワグダの背中に当たった。ハリセンで叩かれたような良い音が辺りに響く。ワグダが痛そうに背中をさする動作を見ていて、不覚にもざまあみろと思ったのは自分だけの秘密だ。

「それで? 旅の途中、食事に困ったりはしたの?」

「はぁ…なんとか木の実やパンで生活できましたけど…」

「そうね! タキちゃんは昔から料理出来ないものね」

 きっぱりそう言われて、タキは少し落ち込むがミリアは笑顔で続けた。

「だから、いつでも私たちを頼っていいのよ」

「え…?」

「食事なら、私も毎日作ってあげられるわ。この人の分の食事を作るのにも多目に作るんだから」

 ワグダは頬を赤らめると照れた顔をしながら続けた。

「おうよ、タキ坊! いつでも飯取りに来い! 酒も分けてやる!」

「お酒はちょっと…」

 さっきまで嫌だな、と思っていたけど皆本当に優しい人達だ。ミリアさんに言われた言葉が嬉しくて…ワグダの最後の言葉につい笑みを溢してしまった。ああ…これはこのお酒、飲まないと駄目だな。タキがジョッキを掴むとワグダは声を濡らした。

「おぉ? 飲むのけぇ? いけいけ! ばんばん飲め!」

「ちょっと! タキちゃんはお酒嫌いなのに…。無理しなくていいの……うっ」

 少しワインを口にしていると、突然ミリアが胸を押さえてその場に崩れ落ちた。

「ミリア!」

 倒れたミリアを抱きかかえて、ワグダは使っていないテーブルへと横にさせた。タキも、ジョッキを置いてミリアに駆け寄る。ワグダは、ミリアの手を握って声を震わせた。

「ミリア! どうした?! どこか悪いのか?」

「か、から…だ」

 急にがたがたと体が震えだし、顔の色が白くなっていく。

「ミリア! おい! ミリアぁっ!」

 ワグダが涙を流すと、周りからも苦しそうに呻いて膝から崩れ落ちる人が現れた。体が震え、顔が真っ青になっていく。ミリアさんと同じ症状だ。
 なんだ?
 食事かお酒に何か入っていたんじゃ…
 テーブルに置かれたおいしそうな食事とお酒を見てもどれも害はなさそうだ。だが、突然タキがテーブルの上を見ていれば視界がぐにゃりと歪みだした。

「あ…れ?」

 周りが歪んでいるのか、自分だけの視界が歪んでいるのか解らない。だが、少しずつくる指先の痺れで今ようやく理解した。毒だ。歪んだ視界の中でも、まだ事実に気づいていない人達がワインを飲もうとしている。
 タキは、飲もうとしていたワインの入ったグラスをその人の手から奪い取った。この人が今どんな顔で自分を見ているのかも解らない。

「このワインには毒が入ってる! 皆飲むのをやめろ!」

 タキの声が中央広場に響く。その中でも、既に飲んでしまった人であろう歪んだ視界から何かが落ちていくのが分かる。タキの大声を初めて聞いたベルは、なんだと慌ててタキの元へと帰ってきた。

「ちりーん…ちりーん…」

 心配そうなベルの声が聞こえる。タキの目の前にくると、ベルは小さな手を額にあてた。歪んだ視界に映る小さな白い物体にタキは微笑んだ。

「ベルか?」

「ちりりーん」

 心配している時のベルの声だ。タキは笑顔のまま、鞄に手を入れて紙とペンを取りだすと走り書きをしてベルに渡した。

「ベル…いいか? この紙を大きな建物に住んでる冠を被った人に渡すんだ。このままじゃ、皆毒で死んでし
まう」

「ちりん…!」

 なにか、ベルの鈴の音が大きく鳴った。渡そうとした紙をびりびり破く音が聞こえる。目の前が歪み過ぎて、何が起こっているのか理解できない。

「ベル…? な…にやってるんだ?」

「ちりりりりー!」

 鈴の音と共にベルはタキの元から少し離れた。そして、大きく息を吸い込むと喉から涼しげな音を出す。風鈴の様な音色は、聴けば歌を唄っている様に思える。ベルが唄った周囲から見えない音のベールがミリアやタキ、毒に倒れた人々の体を包み込んだ。
 少しずつ呼吸が楽になり、体の震えも消えていく。ベルの最後の音色が響き渡ると、ミリアはゆっくり眼を開けた。

「ミリア…!」

 意識を取り戻したミリアをワグダは強く抱きしめた。他に毒で倒れた人々もゆっくりと立ち上がる。ベルは、歌い終わるとすぐにタキの元へと戻った。俯いて痛みをやり過ごしていたタキも、数回瞬きをするとベルを見てにっこり笑った。

「凄いよ、ベル! 治ってる!」

 褒められたベルは頬を染めて照れていた。それにしても…一体ワインに毒を盛った犯人は誰だろうか。タキは、ゆっくり起き上がると辺りを見て、そわそわしているリバリー兵の鎧を着た男を見つけた。
 そういえば、ワグダに捕まる前の話で、モモンワインをリバリー兵から貰ったと言っていた。あいつが犯人だ。そして、きっとドリフト国のスパイ。タキが男を見ていれば、その視線に気づいたのかすぐに裏路地へと逃げだした。

「待てっ!」

「ちりーっ!」

 タキとベルは、走って裏路地へと滑りこむ。目の前には鎧を着た男が走っていた。タキは走りながら隣に着いてくるベルに話しかける。

「ベル、戦えるか?」

「ちりん!」

 ぎゅっと小さく握られたその拳からやる気を感じると、タキは男に向かって指を指した。

「ベル! 念力!」

 指示されたベルは紫の光に包まれ、相手に感覚を集中させた。すると、男はふわりと浮かびじたばたと暴れる。それに負けじと、ベルは男に念力を集中させた。

「畜生、なんだってんだ!」

「そこまでだ! お前…ドリフト国の人間だろう?」

 問えば帰ってきたのは男の舌打ちだ。絶対にドリフト国のスパイに違いない。男は、ベルを睨むと大きな口を開いた。

「行け、ガマゲロゲ!」

 男の腰に着いていた赤い球から獣が出てきた。やはり、獣を休める為の技術も知っているのか。ガマゲロゲは、水と地面タイプだ。ベルには特性の浮遊があるから地面タイプの技は効かないが…問題なのは、戦い慣れていないベルにはこのガマゲロゲ、結構厳しい相手だ。

「ガマゲロゲ、ハイドロポンプ!」

「ちりっ」

 相手のガマゲロゲは湿った手の平からハイドロポンプを放ってきたが、それに恐れもせず、ベルはハイドロポンプの前でシャボン玉の様に色を変える壁を作った。その壁はハイドロポンプを見事に吸収して見せると、勢い良くガマゲロゲへと戻って行く。ミラーコートだ。
 自分の放った技を受けたガマゲロゲだが、全く効いていなかったようでふるりと水を払うとベルを睨んできた。流石にベルも冷汗を一滴流す。自分とガマゲロゲの力の差を知ったのだろう。しかし、次の瞬間、けらけらと笑う声と共に屋根の上からそいつは姿を現した。

「(タキぃ! オイラを置いてどこへ行ったかと思えば…)」

「ビク!」

 屋根の上で仁王立ちをしてビクはガマゲロゲ達を見降ろした。その大きなオレンジ色の耳は左右に揺れる。屋根の上から飛び降り、くるりと回転してタキ達の目の前に着地を決めればニヤリと微笑んだ。

「(ガマゲロゲ。お前の相手はオイラが受けよう)」

 ビクが現れると、鎧の男は身震いして見せた。

「ハッ…お前がビクティニか。よし、ガマゲロゲ! マッドショット!」

 男の指示で、ガマゲロゲはマッドショットをビクに放つ。地面タイプの技は、ビクにとっては不利な技だ。しかし、ビクは技を軽く避けて見せた。

「(甘いな。そんな攻撃だとオイラには当たらないぞ!)」

 そのまま男の懐まで一瞬で移動して見せると頭に足蹴りした。可笑しそうにけらけら笑うと、ビクは両手に緑色の光を溜めてエナジーボールをガマゲロゲに放った。しかし、その攻撃はとても遅くガマゲロゲは数歩歩いただけでもかわす事が出来た。
 攻撃が当たっていない事に気が付いていないのか、ビクは満面の笑みで腰に手を当てて鼻を鳴らしている。鎧の男は、その姿を忌々しそうに睨んだ。

「なんだ! 当たってないじゃないか! 偉そうにしやがって」

「(当たってない?)」

 ビクがそう言いながら不敵に笑むと、ガマゲロゲの避けたエナジーボールが壁にでも反射したかのように曲がってガマゲロゲに当たった。それを見るとビクは続ける。

「(まだ当たっていないの間違いだろう?)」

 ビクは幾つものエナジーボールを自らの宙に浮かせた。そして、ガマゲロゲに指を指すと緑色のボールが一斉に飛びかかる。爆発でも起こったのか、何発もエナジーボールがガマゲロゲにぶつかると煙を出しながら目を回した。
 男は瀕死になったガマゲロゲを赤い球へ戻すとビクやタキを見て、躓きながらもその場を逃げ出した。その姿を見えなくなるまで眼で追うとタキの目の前でビクは胸を張って見せる。

「(どうだ? タキ。オイラも少し役に立ったか?)」

「うん、凄く助かった。ベルもね」

 タキはビクの目の前でしゃがむと、ベルとビクの頭を撫でた。

「それにしても…ベルも毒を治しちゃうし、ビクも草タイプの技が使えるようになってるし…」

 一体なにかしたのか? というタキの目の前で、ビクとチリーンは顔を見合わせてお互いの手を叩くと『秘密の修行』と言って笑って見せた。

「(そういえばタキ…)」

 ビクは、小さく折りたたんだ紙をタキに差し出した。不思議そうに紙を開いてみると、小さい頃の自分とツタージャ、そして隣に男の人と女の人が立っている写真だった。懐かしい。

「ビク、これどこで見つけたんだ?」

「(お前から借りた本の中に挟まっていたんだ)」

 ビクは頭をわしゃわしゃ欠くと、気まずそうに続ける。

「(その小さいタキの隣にいるのは、お前の両親だろう? 家にはいないが…)」

「ああ、遠くに旅に出てるんだ」

 優しい表情のまま言うタキに、なんの疑いも持たずビクは写真を見つめた。

「(そうか…そういえば、お前もオイラを探している時、旅をしていたな。家族そろって旅好きか)」

「そうだね。昔は、よく父さんと一緒に旅に出てたよ」

 ずっと笑顔で家族の話をするタキだが、なんだかオイラには不自然に見えて仕方がなかった。やはり、家族が旅に出ていて家に一人でいるのは寂しい事か。ビクは、タキによじ登って肩の上までやってくる。

「(タキは…両親が戻らないのが悲しいのか?)」

「悲しいけど、今はクジャもベルもビクだって…家族だろ?」

 家族。ビクは一人で何度も頭の中にその単語を響かせた。タキは、黙り込んだビクを肩にベルに話しかけた。

「さっ! ミリアさんのところに戻って、パン取って早く家に帰ろう」

「ちりーん」

 真っ暗になった空に散らばる星々の下。一人と二匹の獣は、蝋燭で灯された中央広場へと戻って行った。




『リバティ王様。明日、早朝にお迎えに上がります。ディスコード王が何を考えているのか全く予測できませんが、俺は王様の考えが正しいと思います。“人間と獣は共存して生きていける”と。』


 9話に続く…

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▼代珠(よず)
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出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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