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みなさんこんにちはw
⑭くらいまですいすいだったので、もう⑫載せようと思います。
今回こそ、今回こそは……
続きです!! ぎゃはははh((とは言いませんw


では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から12お楽しみください。
 




======


 暗い天井にクジャの悲鳴が響いた。それは、確かに獣の発した悲しそうで、苦しそうな悲鳴であった。リバティ王の周りを囲んで守備を整えていたクジャは、長い首をタキの横たわる体へと向けた。リバティ王もタキのもとへと駆け付ける。苦しそうに顔を歪ませ、傷ついた首元を押さえるタキ。

「タキ! 大丈夫か?! タキ!」

 必死に声をかけながらリバティ王は、タキの肩を抱えた。クジャも苦しそうに息を吐くタキの姿を見て、眼を潤ませながら自分の顔をタキの頬にぴたりとつけた。その姿を見ていたディスコード王は、不敵に笑みながら優越感に浸っていた。

「ふふふ…はっはっはっはっ!! いいですねぇ! その姿…とても似合っていますよ。そうやって、何も出来ずに苦しんでいる貴方の姿を見るだけで気分が晴れます」

 ディスコード王の言葉に歯向かうことの出来ないタキは、意識を手放しそうになりながらも痛みと戦っていた。そんなタキの肩を抱きながら、リバティ王は自分のマントで隠していたベルトから赤い球を取りだす。リバティ王の赤い球から出てきた獣は、紫色に輝くタブンネであった。

「タブンネよ。タキに癒しの波動じゃ」

「ブンネっ」

 応答すると、紫色に輝くタブンネはタキに向かって両手をかざしてみせた。両手からは桃色の粒子が渦を巻いて広がり、タキの体へと流れ込んでいく。タブンネの出した粒子は、タキの首に出来た傷へと集まって優しい光を放っていた。ディスコード王は、その行為自体に不満を感じたがそれ以上に、紫色に輝くタブンネを見て喉を鳴らした。

「タブンネの色は、桃色のはず…あ、ああ! そうですか! リバティ王様は、珍しい獣がお好きだったということですか。ならば、私も同じです。弱い獣は手に入れる価値などありませんが、強い獣は人間の手中にあるべきだと考えています」

 タブンネがタキの傷を癒している近くで、リバティ王は口を固く閉じていた。一方、クジャはタキを気遣いながらもディスコード王やゾロアークを睨む。ディスコード王は続ける。

「やはり…貴方も私と同じだったのですよ。そうです! 私と手を組み、ビクティニを使ってこの世界全てを手に入れましょう? 今なら、貴方の付人が口にした言葉を撤回して差し上げますよ? すぐに賢者達に休む部屋も案内させます。どうしますか?」

 タキを見守っていたリバティ王は、そのままディスコード王に視線を移して答える。

「お前は間違っておる」

「何を間違っているというのです。貴方も内心そう…」

「このタブンネは私が幼き頃に、人間に仕打ちをされているのを助けた。人間と言っても、大人が2人でな、結局、私はボロボロになりながらタブンネと一緒に現在のリバリー国へと逃げたのじゃ。まったく…私が助けようと思っていたのに、私はこのタブンネに痛んだ体を癒してもらい、逆に助けられてしまった…」

 話をしていれば、タブンネはタキにかかげていた両手を下げてこくりと頷いて見せた。しかし、タブンネはタキの塞がった傷を見て小さく鳴いた。リバティ王が眉に皺を寄せタブンネと首元を見れば、傷口は塞がったものの傷痕が残っているのがわかる。王は、悲しそうに手で傷痕に触れるとタブンネの頭を優しく撫でた。

「よくやってくれた。止血は出来たのじゃ。あとは安静にしていなければならんが…」

 そう言いながらリバティ王は、赤い球にタブンネをしまうとディスコード王を見つめて瞼を閉じた。ようやく、と胸を高ぶらせてディスコード王は指を鳴らし賢者に指示を出そうとしていた。

「っ…まてっ」

 突然、震える手を絨毯の上につけタキはゆっくり瞼を開いた。顔色は真っ青で、少し体が小刻みに震えているのが分かる。リバティ王は、タキの肩を抱きながら嬉しそうに微笑んだ。クジャも涙を堪えながらタキの胸に顔を擦り寄せた。ごめん、と謝りながら震える手でクジャの頭を撫でると、タキはディスコード王を睨んだ。

「まだ…王はっ、何も答えていませんよ」

「タキよ…無理をするでない」

「何…言ってるんですかっ」

 タキは、リバティ王の手から離れると自力でふらつく体を立たせた。クジャは、自身をタキの隣に寄せて倒れそうな体を支える。リバティ王も立ち上がるとタキを見つめた。

「止めるのじゃ、タキ」

「王様…何を弱気になってるんですか。さっきの言葉はどうしたのです?! 俺が死にかけたからですか?!」

「そうじゃ。お主も、獣も国民も…皆、私の大事な家族だからじゃ」

「そうやって逃げるおつもりですか? 貴方は獣も人間も明るく暮らせる未来を夢見ていたのでしょう? 俺は絶対に貴方の夢の力になります。だから自分の夢をそうやって簡単に諦めるなっ!!」

 タキの力強い怒鳴り声を聞いて、リバティ王は自分の胸が不思議と熱くなるのを感じていた。彼は、あんなにも弱りはて血色の悪い顔で地面に力強く立っている。タキは、クジャに体を支えられながらリバティ王のほうを向き微笑んだ。





 行きますよ?





 クジャの体から離れて、タキは一呼吸すると床に落ちた自分の短剣を持って構えた。

「それは…どういう意味ですかな?」

 指示を出そうとしていた右手を下げ、ディスコード王は苦笑いをしながらリバティ王を見つめる。リバティ王は、優しく微笑みながら言った。

「こういうことじゃ」

 言った瞬間、タキはディスコード王やゾロアークのいる方向へ指を指した。

「クジャ! リーフストームだ!」

 指示の通り、クジャはディスコード王やゾロアークへと大きな体をしならせ大きく尻尾を振りあげた。そこから緑色の風が舞い、台風の如くその場にあった食卓テーブルや椅子さへも巻き込んでいく。ディスコード王達が身動きの取れていない間に、タキは大きな窓を短剣の柄で割ると口笛を吹いた。
 空にはタキの口笛が響き、それを聞いたウォーグルのリベットは急いでドリフト城へと急降下してタキとのいる窓縁へと停まった。タキは、王様をリベットの背に押し上げると、小さな声でそっとリベットに呟く。

「王様を連れてサザン国へ逃げるんだ」

「グワォォ!!」

 周りの状況を見てリベットも理解が早かったのか、タキの言葉を聞くとリバティ王を背に颯爽と空へと羽ばたいていった。クジャの起こしたリーフストームの威力が弱まり、ディスコード王とゾロアーク、賢者6人は床に体を丸めて縮み込みながらタキをギッと睨む。そこには、勿論すでにリバティ王の姿はなく、ディスコード王は頭を抱えながら悔しそうに立ち上がった。
 そして、タキとクジャを指差すと大きく口を開く。

「そこの人間と獣を捕まえなさい!! 殺さず牢獄に閉じ込めるのです! じわじわと道具で懲らしめてさしあげます!!」

 怒り狂ったディスコード王の命令で、賢者達は赤い球を取り出した。そこからは、ギギギアルやバッフロン、アバゴーラ、シュバルゴ、クリムガン、サザンドラが姿を現した。この6体にゾロアークを合わせて、強い獣が7体。これは、こちら側のほうが明らかに不利だ。

「クジャ! 逃げるぞ!」

 タキはふらつく体に力を入れて、扉へと走り出した。クジャもタキを追い越し扉へと蛇の様に体をしならせながら向かい、尻尾を振りあげリーフブレードを放った。リーフブレードの力で叩き砕かれた扉の破片が外側にいたドリフト兵にぶつかる。
 砕けた扉の破片を踏みながらタキはクジャに続いて部屋を出た。休むことなく長い階段を駆け下りていく。そのタキとクジャの後から、先程の獣達が一斉に追ってきた。その中でも、一番足の速いバッフロンとゾロアークがタキとクジャの外側を挟んだ。
 バッフロンは、大きな頭でクジャに突進する。階段を降りながらも隣から受けたその攻撃は確実にクジャに当たった。揺れたクジャの体が隣を走るタキにもあたり、ふらりと隣にいたゾロアークへと体が傾く。しかし、タキも負けじと力を振り絞って階段を駆け降りる。

「バッフロンにどくどく!」

 クジャはバッファロンに毒々しい液を吹きかける。攻撃を喰らったバッフロンは床に頭をぶつけ宙返りした。その場で眼を回しながらバッフロンは弱々しく立ち上がるが、毒を受けた体が言う事を効かずその場で座り込んでしまった。それでも、意志の強い獣であるバッフロンがいつ頭を切らして追いかけてくるか解らない。バッフロンの特殊能力、草食は草タイプの技を受けると力が増してしまう。
 なるべく避けたいポケモンだ。
 7匹いる獣のうち1匹が倒れて安心して階段を駆け降りている。が頭上からサザンドラが飛んできた。クジャは、蔓をサザンドラの真後ろから伸ばして尻尾を縛るとぐるぐると蔓を回しながら横の壁に叩きつけた。それでも弱るまいと、クジャは壁に叩きつけられて唸るサザンドラを蔓で再び縛り叩きつける。
 クジャを横目に見ていれば、タキの隣にいたゾロアークもにやりと笑み姿を眩ました。

「くそっ! どこに隠れた…」

 きょろきょろ辺りを見回していれば、自分の背に重みを感じてタキは身震いする。くすり、と耳元で自分の声が聞こえると、首元の傷痕をなぞられてゾクりと体を震わせた。

「痛かったぁ?」

 ぼそりとそう言われて気味が悪くなったタキは、体を大きく揺らした。タキの背に乗っていた、タキに化けたゾロアークは隣へと移動する。一方、クジャはサザンドラに毒を吐くとそのまま壁に力強く打ち付けた。これ以上、弱る事の無いサザンドラは壁に埋まりながら気絶していた。
 サザンドラを討ったクジャは、タキに手を出すゾロアークの背後に周り、リーフブレードでゾロアークの背に打撃を与えた。クジャの攻撃が見事に当たったゾロアークは、タキに化けながらも前へと叩き出される。体制を崩してしまい階段から転がり落ちてしまうが、ゾロアークは右手を支えに宙を周ると地に着き、その場で体制を立て直した。クジャは、片眼を細めゾロアークを冷やかな瞳で見つめる。
 そして、ぷくっと頬を膨らませて体を撓らせるとリーフブレードをゾロアークへと放った。ゾロアークは両手に黒い泡の珠をクジャに放つ。喰らったクジャはゾロアークの攻撃を気にせず攻撃したが、その場にはもうゾロアークの姿は無くなっていた。さっきのゾロアークの攻撃は、ナイトバーストだったのか。タキは先に前へと走っていたクジャの隣に着きながら思った。
 ナイトバーストは、相手の命中率を下げる技だ。それでも当たったのは今ので一回。このゾロアークは相当パートナーに訓練されてる。
 攻撃を避けたゾロアークはクジャにぽつりと吠えた。すると、たちまちクジャの顔は赤くなり歯を食いしばりながらゾロアークへと突進しながら蔓を出す。なんだか、とても怒っているように見える。いちゃもんを付けられたのだ。クジャは、ゾロアークに蔓の鞭で攻撃するが、その攻撃は階段を叩き砕くだけで当たらなかった。ゾロアークは、クジャの攻撃を交わすとタキの真後ろへと高く跳躍した。
 するとその真後ろからは、弱ったバッフロンが最後の力を振り絞って階段を勢いよく駆け降りてきていた。スピードはかなり速い。タキが不味いと心の中で思っていると、ちょうどいいところで階段の終着が見えてきた。

「クジャ! 右!」

「クジャっ!」

 ヒュっと階段を降りてすぐに右の廊下へと曲がる。バッフロンは、タキ達の姿が消えて驚いて足を止めるが段差に足を掬われると転がりながら眼の前の壁に突進した。遠目から、バッフロンが倒れたのを見ていれば、階段を下がってきたギギギアルやクリムガンがこちらに気が付き追ってくる。
 逃げる様にして一緒にクジャと廊下を走っているとクジャは突然、眼の前を突っ走って行ってしまった。そして、またさっきのように小さな人形に蔓の鞭で攻撃をしている。気が狂ったかのように何度も同じ攻撃をその人形に仕掛けては唸っていた。
 もしかして、これは身代わり?
 このゾロアーク…強いうえに手癖ものだ。タキは、先へと進んでいくクジャに追いつく様に走る足を速めた。それでも、素早さの高いクジャには追いつく事は出来ない。体が重くて、寒くて、ヤバい。これじゃあ、クジャに気付いてもらうのも不可能だ。
 タキは、苦しそうに顔を歪めると大きく口を開いた。

「おい、クジャ!」

 声は虚しく空に散る。届かなかった。クジャは、タキの声に振り向く事もなくそのままぬいぐるみに攻撃を繰り返している。ゾロアークの手の中で遊ばされてる。

「ねぇねぇ! 痛かった? 苦しかった?」

 走っているタキの隣に合わせてゾロアークがタキの声でそう言う。その眼は、やはり自分とは違う。だが、もし自分がディスコード王についていたらこうなっていたのかもしれない。自分に化けたゾロアークを見ているとそんな恐ろしい事を考えてしまう。
 走っていたタキにゾロアークは拳を振り上げた。気が付いたタキは、受け止めて攻撃を流す。避けられた事で空振りしたその拳をまた胸の位置へと構えると、ゾロアークはタキにまた拳を振り上げた。だが、タキは見切ってその拳をまた受け流す。自分の攻撃の当たらないゾロアークはタキの姿でタキを睨み続けた。

「怖かったんだ? そうだぁ! 怖いんでしょぉ?」

「うるさいっ!」

 自分の心を掴み挙げた幻を振り払う様に、タキは持っていた短剣でゾロアークを切りつけた。ビッとゾロアークの血がタキの頬に飛び散る。それと同時に、ゾロアークはすすり泣きながら自分の首元を押さえた。

「痛い! 痛いぃ!」

 ゾロアークはタキの姿でそう叫び声を上げた。苦しそうに喉をヒューと言わせながらタキを見て助けを求めていた。さっきの自分と同じ。首から大量の血が流れている。移し鏡で見ているようなその姿に、タキは怖くなって走っていた足をぴたりと止めた。
 怖い。頭の中でそればかりが繰り返される。立ち止まったタキを見て、ゾロアークは心の中で厭らしく笑むとタキの肩を血の付いた手で掴んだ。

「苦しいよぉ! 助けて! 助けて! 助けてえぇぇぇぇッ!」

 タキに迫って必死に声を上げる。ゾロアークがタキの姿でそう演じれば、本人であるタキは青ざめた顔をさらに青くさせながら頭を抱えて俯く。その姿が楽しくて仕方なくなったゾロアークはもう片方の血に染まった手でタキの首元に触れた。

「っ!! さっ、触るなっ!!」

 みがわりの技のせいでぬいぐるみに気を取られて、先を走っていたクジャがタキの叫ぶ声に気が付いた。タキが我を忘れて、短剣でゾロアークに斬りかかろうとしたところに、クジャは尻尾を振り上げリーフストームを放った。後ろから近づいていたギギギアル達にもリーフストームが降りかかる。見事に攻撃が命中したゾロアークは、ギギギアルと一緒に吹っ飛んで行った。
 急いでタキの元にクジャはやってくると、震えながら短剣を構えるタキの頭にそっと自分の頭をのせた。荒い息を吐くタキの背中を蔓で撫でる。
 ああ…小さい時、父さんと母さんを殺された時もクジャはこうやって傍にいてくれたっけ……
 構えていた短剣をそっと下に降ろしてタキは呼吸を整える。クジャも背中を擦りながら、大丈夫、大丈夫だよ、とタキの顔を見ていた。正しい呼吸が出来る様になると、タキは一つ息を吐いてクジャに微笑んだ。

「ありがと…クジャ」

「クぅジゃ…」

 お礼を言うと、タキはクジャとまた廊下を走りだした。さっきのリーフストームでなんて、あの獣達は絶対に倒せない。少しの時間稼ぎにしかならないんだ。それにしても、これからどうやってこの国を脱出してリバティ王様が向かったサザン国へと行けばいいのだろうか?
 タキとクジャが廊下を走っていると少し前から一匹のチョロネコが柱から出てきた。ハルモニアの部屋にいたチョロネコだ。チョロネコが一声鳴くと、クジャはそれに答える様に鳴いてタキの顔を見ながら頭をくいっとチョロネコへと向けた。

「もしかして…チョロネコが付いて来いって言ってるのか?」

 クジャは頷きながらチョロネコの後を追う。タキもとにかくゾロアーク達が追ってくる前に、とチョロネコの後を追った。チョロネコは、優雅に廊下を走って行く。その姿には、一切の無駄もない。

「いた! ほら! あそこにいる! 早く捕えるのです!!」

 背後からディスコード王の声が響いた。ゾロアークの声やギギギアルの軋む機械質な音も聞こえてくる。チョロネコも気が着き、可愛い耳をぴくりと揺らすとタキ達に尻尾で早く、と合図を送る。それに応えるためにタキとクジャは全速力で走った。
 少しすると、廊下から広間への通路にずらりと一列にバニプッチが並んでいた。チョロネコは、バニプッチを通り越してくるりとこちらを向く。どうやら、何か考えがあるようだ。タキとクジャもバニプッチ達をゴールラインにして通り越すと、チョロネコと同じように後ろを振り返った。
 後ろからは、ディスコード王と6人の賢者が走ってきていた。その近くに手強い獣達も引きつれている。バニプッチ一列は、真下を見た。

「ぷっち!」

「ぷちぷっちゃ!」

 掛け声と一緒に、バニプッチ一列は床に冷凍ビームを放つ。床から段々と真上へ、バニプッチ達は阿吽の呼吸で氷の壁を作りあげた。少しひんやりするが、とても助かった。追いついたディスコード王達は、氷の壁を見て口をあんぐり開けていた。なんて間抜けな顔なんだろう。

「くっ…! 絶対に逃がしません。賢者達よ! この壁を壊すのです!」

 ディスコード王の命令で、賢者達は残りの獣で壁に攻撃する。だが、バニプッチ達の作った氷の壁は、それは頑丈のようで全くびくともしなかった。それでも悔しそうに攻撃を続けるディスコード王。それを余所に、チョロネコはその場を駆けだした。タキとクジャ、バニプッチ達もチョロネコの後を追う。
 広間への廊下を後にし、ハルモニアの部屋を横切って、チョロネコは屋上へ上がる階段を駆けだした。そこで、ゾロアやダルマッカ、ギアル、オタマロが階段から降りてきた。チョロネコは、一旦止まってゾロアと何か話しだした。人間のタキには、何も理解できないがクジャは解っているようでタキの隣で静かに頷いている。

「いたぞ!! 屋上への階段を使おうとしている!」

 一人の男の声が聞こえてきた気が付けば、広間にドリフト兵が集まってきている。中央に立っているドリフト兵は、背中に機械を背負っている。その機械からは、大きな機械音が鳴り響き、ディスコード王の声が聞こえてきた。通信機だ。

「よく見つけました! その茶髪の人間と緑の獣を捕らえるのですよ! ふふ…」

 笑い声が聞こえる。それにしても、通信機をあんな風に使うとは…。広間に集まる兵を見降ろすようにゾロアとチョロネコは真ん中の階段上から覗いていた。ディスコード王は少し笑うと、低く今までに聞いた事の無い冷めた声で語り始めた。

「いいですか? その子供と獣を捕まえられなければ…貴方達には明日がないと思ってください。研究材料の獣達もそうですよ? 何を考えているか知りませんが大人しく化け物と部屋に引っ込んでいる事です。まあ…それでもそのまま、その子供を護るというのなら永遠に苦しく、痛い思いを味あわせますが…」

 冷やかな声でディスコード王は獣達にそう告げると、ゾロアはしょんぼり耳を垂らしながら震えた。しかし、近くにいたチョロネコが首を振ってゾロアに寄り添うとギっと広間にいる何十もの兵を見下げた。戦う気だ。

「待って! 君達だけじゃ無理だ。戦うなら俺もクジャも戦う」

「うにゃーおん…」

 チョロネコは冷静な眼差しでタキを見るとクジャに鳴いた。まかせておけ、とでも言っているのだろう。チョロネコとゾロアの真上にバニプッチ達が一列に並ぶ。ダルマッカとオタマロも階段の手すりに上がり兵達を見降ろした。しかし、ギアルはみんなと兵に向かう事はせずにじっと黙っていた。こんなに人間が集まっていて怖いのだろうか?
 クジャも心配になってギアルに鳴いて見せるが、ギアルは何も反応せずただ俯いていた。

「大丈夫か?」

 そう言って手を差し伸べたタキをギアルは睨むと背後に回ってタキの頭に思いっきりたいあたりした。タキはそのままどさりと倒れてしまう。攻撃したギアルをチョロネコ達も信じられないと眼を見開きながら見ていた。そして、広間にいたドリフト兵は声高く一斉に階段へと登ってきた。
 バニプッチ達はそれを許すまいと兵達の足に向けて冷凍ビームを放つ。オタマロは手すりの上から濁流を兵に向けて放った。兵達は濁流に飲まれながら壁に打ち付けられる。ダルマッカもその場で足を慣らすと炎を纏い兵達に飛び込んでいった。ニトロチャージだ。
 クジャは、倒れてしまったタキに近寄って顔でつんつんと体を突いた。しかし、タキは額に汗を流し静かに瞼を閉じたまま目覚めない。止血はしてあるが、さっき大量に血を流してしまったのだ。このままでは死んでしまうかもしれない。目尻に涙を溜めながらクジャはタキを起こそうと体を突く。
 そんなタキとクジャの姿を震えながらギアルは見つめていた。

(おい! ギアル!)

 ギアルは、ゾロアの声に体を震わせた。ゾロアは歯を食いしばりながら続ける。

(どうして攻撃したんだ! アイツの言うことを聞かなくても、後でハルがなんとかするってさっき言ってただろう?!)

(そうよ…しかもその人間。凄く顔色が悪い。人間の命なんてよくわからないけど、もしかしたらこのままじゃ死んでしまうかもしれないわ)

 ゾロアの後に続きチョロネコが真剣に答える。ギアルは震えた声で口を開いた。

(皆だって! どうなるか解らないんだよ?! 死ぬより酷いことされるかもしれない…そんなの嫌だ! もう僕は耐え切れないんだ!)

(オレだって怖いよ! だけど…この人間はオレ達を撫でてくれた。殴ったり、変な針で刺したりしてこなかった。だから、この人間が助かるなら…オレはもうどうなったって構わない! こいつは、少しでもオレ達に愛をくれた、叶わないはずの夢を与えてくれたんだ!)

 ゾロアの言葉にギアルは更に落ち込んでいる様に見えた。一方、ゾロアはタキの顔をよく見てからタキへと変身する。まだ幼いせいで耳や尻尾が出てしまっているが気にせずにゾロアは、気絶しているタキを持ち上げてクジャの背中に乗せた。
 化けたゾロアの肩にチョロネコは身軽に跳ねて乗ると、クジャを見てニッと笑って見せた。

(その子のこと…頼んだよ!)

 言いながらタキに化けたゾロアとチョロネコは、階段を降りていった。ゾロアの姿を見たドリフト兵達は馬鹿みたいに歓声を上げている。ギアルはその人間の声を聞いてまたガクガクと震えていた。クジャは、ギアルを悲しそうに見つめるとタキを落とさない様に屋上への階段を上がり始めた。




===




 ゾロア達に任せて屋上への階段を上るクジャ。タキはクジャの背中に静かに眠っている。みんなは大丈夫なのだろうか。どうか無事であってほしい。クジャが階段を上がって行くと、鉄で出来た小さな扉が眼の前に現れた。蔓を伸ばして扉のドアノブを開ける。肌寒い風が開けた隙間から入るが、クジャは自分がここを通れるかが心配で寒さなどにはまったく興味を示さなかった。
 そろりとタキを背に首を屈めて外へと出る。外には、鳥のバルジーナがいた。これに乗ればサザン国へ行ける。バルジーナの背中には可愛いリボンのついた袋が着いていた。これは、さっきハルさんが持っていたものと同じものだ。

「やっと来たんだね」

 バルジーナの影から出てきたのは、緑の髪と瞳を持つ青年、ハルモニアであった。

(ハルさん…!)

 ハルモニアは、バルジーナから離れてクジャへと駆け寄った。クジャの首に出来た傷を痛々そうに見つめながら口を開く。

「ディスコード王様にやられたの?」

(…そう。タキもなの…タキの方が凄く傷ついてる! 早く助けないと!!)

 今にも泣き出しそうに声を震わせながらクジャはハルモニアに助けを求めた。ハルモニアは、クジャの背で横たわるタキを見つめる。赤く染まった肩や首元を触り傷の深さを確かめる。

「うん、大丈夫。傷口は獣の技で塞がっているみたいだし…問題ないよ。だけど、このまま放っておいたら確実に死んでしまう。僕は、タキの命は助けられないけど、この国から君達が脱出する力にはなれる」

 クジャの背からタキを抱きかかえると、ハルモニアはバルジーナの背中に乗せた。バルジーナは、タキが落ちないようにお尻を上げて体を平らにした。ハルモニアは腰から赤い球を取り出す。

(それ…!)

「うん。タキから奪って君をここから出した後、返すのを忘れていたんだ。君は窮屈だろうけどコレに入っていて」

(うん…)

 元気の無いクジャにハルモニアは気づいてそっと手を頬に合わせた。

「傷つく事ないよ」

(ううん…傷ついたのはタキなの。私は……タキを護る事が出来なかった)

 今にも泣きそうなクジャの気持ちは、今一ハルモニアには理解できなかったが一度クジャを抱きしめると、
ハルモニアはクジャに赤い球をかざした。すると、赤い球から光が溢れてクジャは赤い球の中へと姿を消す。クジャの入ったその球をハルモニアはタキの腰に付けると彼の顔を見つめて微笑んだ。

「まだ、僕の夢が何かは解らないけど…僕はその夢がなんなのかが知りたい。だから、タキの言うとおり、ディ
スコード王様に従うのは止めようと思うんだ。頼んでみれば、なんとかなるかもしれないしね…」

 少し笑うとハルモニアは、タキの耳元でそっと呟く。

「『タキやみんなの夢が叶いますように』」

 そう囁いたあと、タキの顔を見たら眠っているのに少し微笑んでいるようにも見えた。ハルモニアはバルジーナの頭を撫でる。

「バルジーナ! タキとジャローダをサザン国まで頼むよ」

 ハルモニアの声に従い、バルジーナはタキを背負って光が登って行く空へと羽ばたいた。黒いバルジーナの影は朝焼けの眩さに溶けて遠くへ消えていく。そんな空を見ながらハルモニアは、唄を口ずさんだ。

 また何処かで会えるといいね、タキ。今度は…夢を追いかける旅に出ている時に……


 13話に続く…

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代珠
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非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
  学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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感想・連絡・用事のある方は
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