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こんばんはww
風邪引きました! お腹痛い! 関節痛い! 頭痛い!!
⑭と⑮、頑張って作ったよな…
なんだか頭が痛くて覚えてないんです。だけど、まあ頑張りましたよ! うん!


では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から14お楽しみください。




======


 サザン国の三階廊下側フィーリング室。そこは、庭の様に草や花が育てらてれおり、室内には全く見えない。しかし、窓辺に作られたガラスの棚やテーブル、椅子、天井を見ればそれも人間があしらった物だと理解出来た。そして、その硝子の椅子に茶紀は腰かけると、目の前に立っているジャローダを見上げた。

「この部屋の植物はね、日差しを浴びると心地の良い香りを出すんだ」

「グぅ…」

 茶紀の言葉を聞きながら安心した表情をとるジャローダ。茶紀は、笑顔で続ける。

「怪我はこの国で使われている薬草を少し使ったけど…まだ足りないみたいだ。痛くないかい?」

 少しむっとした顔で首を傾けるが、痛くないとわかれば優しくジャローダは微笑む。茶紀はそれを確認して心が温かくなるのが分かった。さっきまで馴れていない様子だったけど、ちゃんと人間を慕ってくれてる。

「聞きたい事があるんだけど…いいかな?」

 茶紀の言葉にジャローダは頷く。

「君は…とても苦しそうに見えるね。なにかあったの…?」

「……」

 ジャローダは、黙ったまま俯いて見せた。言いたくない、思い出したくない、そう言っているようにも見える。少し、様子を見るしかなさそうだ。茶紀は、椅子から立ち上がるとジャローダの頬に触った。

「分かった。何も言わなくていいよ」

 優しく茶紀が言ったその言葉に少し鳴いて答えてくれた。笑顔に戻っている。このまま、君の持ってる辛い事が消えてくれればいいけど…

 思っていると、急に長い草で隠れていたドアが開いた。その音に敏感に反応したのはジャローダだった。さっきまでの安らいでいた表情が一変し怪物でも睨むように扉を睨んでいる。茶紀は、頭を撫でながら大丈夫と言い聞かせて扉に向かって声をかけた。

「どうぞ」

「ああ、すまないが失礼するよ」

「ブンネぇ」

 タブンネの鳴き声と共に草陰から現れたのは、ベラとタブンネ、そしてイリスだった。イリスはジャローダを見るなり、嬉しそうにこちらへ駆けてくる。

「ジャローダ。もう安心よ! このベラさんが貴方の主人の怪我を治してくれたわ」

「もう心配ないよ。さあ、アンタの怪我も見せとくれ」

 二人の声を聞きながらタブンネは硝子のテーブル上に救急箱を載せていた。イリスの言葉に、ジャローダはほっとした顔をして喜んでいる。
 だけど、どうしてかな。僕には、君がまだ何かに恐れて見えるよ。さっきのパートナーの話を聞いて、少しは楽になった様に見えるけど…ジャローダは、その主人に恐れてる…そんな気がする。今だってそう。顔が凄く強張ってる。

「茶紀」

「え? あ、ああ、どうしたのイリス」

「なになに? 考え事ぉ?」

「うん、少しね」

 とびきりの笑顔で言う茶紀にイリスは何も気にせずに、棚に入っていた数本の草花の入った小瓶を取り出した。

「これ。前に無くなってきてる、とか言ってたからヒメちゃんに頼んでおいたよ」

「ありがとう、イリス」

 二人が話している傍でベラはジャローダの手当てをしていた。茶紀が直ぐに手当てをしていたので、少量の薬剤を使うだけでいいようだ。問題ないね。ベラは、クジャの体を撫でると口元に笑みを零した。

「アンタ達そろって大丈夫のようだ。よかったねぇ」

「くじゃぁー」

 明るい声で返事をするジャローダ。ベラは、そんなジャローダの姿を見て救急箱を手に取るとタブンネを手招きした。

「私はこれで失礼するよ。あとは茶紀に任せる」

「はい、ありがとうございます」

 ベラは直ぐに扉を開けてタブンネと出ていってしまった。本当にジャローダは問題なかったみたいだ。ジャローダは、眠そうに欠伸をすると長い体を丸めて瞼を閉じた。茶紀とイリスはそれを見て頷く。

「ねえ、アタシちょっと行ってくるね」

「キバぁ!」

 顔をしかめてイリスの肩からひょっこり姿を現したのはキバゴだった。なんだかとてつもなく不服そうだ。ああ、この二人がどこへ向かおうとしてるのかすぐにわかる。

「あんまりそうしてると、また業に叱られるよ?」

「気にしない気にしない♪ 大体、デザインがどーのってこだわり過ぎて時間が掛かってるの…待ってられないわよ」

 不満気に言った矢先に、イリスのお腹の住人が怒鳴った。笑っては駄目だと解っているが、これは笑わずにはいられない。恥ずかしそうに頬を赤らめるイリスの手前、茶紀は喉でクスりと笑っていた。



===



「よし!! めっちゃ美味い飯つくるぞぉー!!」

 フライパン片手に拳を握りしめて胸に語るのは、三兄弟の一人、赤毛の業だった。ここは、調理場。先程まで、三人で作っていた食事は冷の手によって仕上げられて、綺麗な配膳台の上に並べられていた。業は、早速フライパンに油を引いて焜炉に火を付けた。冷はその横で首を傾げる。

「なにを作るんですか? もう、皆さんの食事は僕が最後まで作っておきましたよ」

「ノンっノンっ! 違うんだなぁーこれが」

 首を横に振りながらフライパンに大きな肉片を載せる。油のたぎる音がしていた。

「どなたの食事かは知りませんが…ちゃんと最後まで作るんですよ」

 そう冷は、呆れ顔で言うと一つ手を叩いて見せた。その音を聞きつけたエプロンを身に纏ったヒヤッキーが隣の部屋から出てくる。まあ、そうだよな。俺達が勝手に空けたせいで、冷は一人で大量の食事を作ってたんだ。
 冷はヒヤッキーの顔の位置までしゃがむと片目を瞑った。

「ヒヤッキー。ホールまで一緒に食事を運びましょう」

「ひゃきっ!」

 にこやかな笑顔で冷にそう答えると、ヒヤッキーは配膳台をひとつ押して廊下を出た。冷もまた配膳台を押しながら開いた扉を進む。しかし、少し俯くと業を見て心配そうに口を開いた。

「業…僕もやはり手伝った方がいいでしょうか…?」

「んいや! 一人分の食事くらい大丈夫だぜ! 本当は、冷にも力貸してほしかったけど…なんかよく時間見たらそろそろ食事の時間だもんな。早くヒヤッキーと食事運んでこいよ」

「…わかりました。無理は…しないでくださいね」

 業を一人放っておくのが心苦しいがとにかく食事を運んでこよう。冷は心の中でそう思いながら、配膳台を押してヒヤッキーとパーティーホールへと向かった。今日は、リバリー国の王様が来ていらっしゃるから早く運ばないと。
 調理場には、冷がいなくなって業一人になった。さて、まずは肉を焼いている訳だが…

「こっから……どうすりゃいいのか…」

 冷汗を頬にひとつ流しながら業は、フライパンで踊る肉片を睨んだ。掃除は完璧だけど、食事は三人で手分けして行っている。デコレーションと盛り付け…焼き加減なんて完璧だ。だけど、俺には味付けが出来ない。出来るとすれば、俺の隣に並べられた調味料を全てこのフライパンに叩きこむことだ。
 採りあえず、これを入れよう。そうだ、これも…肉、肉、肉……肉ばっかだな。そうだ、サラダとかもあった方がいいよな?
 よし、肉は焼け上がったし、野菜切るか…いや、切らないで豪快に盛り付けた方が食べ応えがあるんじゃないか?
 よし、よし、完璧だ!
 一人で満足気に頷き、業は大皿二枚に飾られたよく解らない匂いのする肉と、素材の味や形をそのまま生かし過ぎたサラダを見ていた。

「凄いぞ…俺、凄すぎ! よし! バオッキー! 食事持ってくの手伝ってくれ!」

 業の声でさっきヒヤッキーのやってきた隣の部屋から、腰にエプロンを巻いたバオッキーが出てきた。どうやら、控室らしい。バオッキーは業の作った食事を配膳台に置いて、業と調理場を出た。
 アイツ…起きてるかな?



===



 自分の寝ているベッド。隣に部屋がありそうだ。タキは、ゆっくりベッドから体を起こす。頭が酷く痛い。それにしても、不思議な夢を見た気がする。水の中を自分は浮いてた、呼吸もできた。夢は、なんでも自由可能なんだな。
 一人納得し、タキはぼーっとする頭のまま周りを見渡した。本当に何もない。俺は、何をしてたんだっけ。考えれば一瞬にして蘇ってくる記憶。頭の中を光のように駆けて、焦った顔でベッドから飛び出した。

「っ! クジャっ!」

 クジャがいない。そうだ、思い出した。俺は、ドリフト国に王様と行って、逃げてたんだ。ギアルの姿を最後、何も思い出せないけど…クジャも酷い怪我を負っていた。ここはまだ、ドリフト国なのか?
 だったら、早くクジャを見つけてここから出ないと。タキは、隣の部屋に静かに足を運ぶ。隣の部屋は、沢山の薬品が置いてあり、自分の持っていた短剣も机の上に置いてあった。ここの部屋は、ハルモニアの言ってた研究と関係があるのか? だとしたら…クジャは?


 ケンキュウザイリョウニサレテル?


 どくりと胸が高鳴る。自分が気絶してたばかりに、今、クジャは凄く大変な目にあってるかもしれない。

「くそっ!」

 抑えきれない感情を拳に溜めて机を叩いた。絶対にそうはさせるものか。クジャと絶対に、この王国を出てやる。タキは、机に置いてあった短剣を右手に鞘を腰に付けると大きく息を吸い込んだ。外側から引きずるような音がする。誰かこっちにくる。感じ取るとタキは、扉の横に身を潜めた。開ければこちら側が死角になって見えない。

「おーい! 起きたか?」

 自分と同じくらいの男の声がする。このまま行けるな。タキは、瞬時に業の目の前に入ってくると短剣の柄で鳩尾を打った。業は、腹部を支えて咳き込みながらタキを見つめる。

「おまっ…なにすっ」

「クジャはどこだ」

「は?」

「ジャローダだ! どこにいるのか言うんだ! 言わなければ…お前を……放って逃げる!」

「…放って逃げるだけかよ」

 やはり、起きていたみたいだ。でも、なんだこの挨拶は…しかも、コイツ、ヒメと同じ部類の人間だ。天然というか、鈍感というか…。業が腹部を抱えながらじっとタキを見ていると、タキは痺れを切らして言葉通り業を置いて部屋から逃げていった。部屋から出れば、そこは廊下で近くにはバオッキーがいた。
 逃げるのには、まだ時間がかかりそうだ。タキはバオッキーを横目に廊下を駆け抜けていった。しかし、急に目眩がして体がふらつき、その場で頭を抱えていた。業は、救護室から痛みに顔を歪ませ出てくるとタキを指差す。

「ごめっ…バオッキー。アイツを病室に戻すの手伝ってくれ」

「バォキっ」

 業の言葉に頷くと、バオッキーはタキに駆けこんでいって大きく両腕を開いた。だが、タキはそれに気がつくとキッと眼の端を吊り上げて、見定めた様にバオッキーの腕を避けてまた走り出した。それを見て、次は業が頭を抱える。

「何やってんのよ…」

 背後から聞き覚えのある声を聞いて、業は更に喉を詰まらせるが何を話さなくてもイリスには解ったようだ。イリスの肩に乗っているキバゴは、木の実を美味しそうに食べている。調理場からの食材盗みが大成功した様子。イリスも木の実を齧ると小さくなっていくバオッキーとタキを見つめた。

「大丈夫よ。あっちにはダリアンさんが居たはずだから」

 イリスの言葉は予言のようにあたっていた。言った傍から、タキの目の前の床からドリュウズが穴を掘って出てきたのだ。土埃に眼を細めて片手で顔を隠したタキの真後ろから、人間の重みと力で頭と背中を床に抑えつけられた。

「いつだってアタシ達、繋がってるでしょ」

 木の実の最後の一口をイリスが頬張ると、業と二人でタキを抑えつけたダリアンの元へ歩き出した。タキの方はなんとか体を動かし逃げようとするがダリアンの力が圧倒的に有利な為びくともしない。タキは床下から睨み挙げる様にダリアンを見つめた。

「放せっ! こんのっ」

 悪いものでも見るタキの瞳を見てダリアンは小さく溜息をつくと、押さえていたタキの頭を握って更に床に押し付けた。タキは、顔を歪ませて何も言わなくなる。

「痛い…か? 病人がなに頭に血ぃ上らせてんだ。冷静になれよ、坊や」

「病に…ん?」

 ダリアンの言葉に眼を丸くするタキ。話が分かったと感じると、ダリアンはタキから手を放した。その後ろからやってきた、イリスは笑顔で自分に親指を立てた。

「私はこのサザン城で獣のカウンセラーをしてるイリスよ。この子は、キバゴ」

「キバッ! キバッキバッ!」

 サザン城? じゃあ、ここはサザン国なのか。タキは、嬉しさに頬を赤くするとイリスに焦った声で話す。

「じゃ、じゃあ、ジャローダは?! ジャローダも俺と一緒だった?!」

「ええ、べったりだったわよ。今は、疲れて違う部屋で寝てるわ。それより君、名前は?」

「え? あ、名前…名前は、タキです」

「へぇー…タキ……微妙な名前ね」

 馬鹿にしたような眼で手を仰ぐイリスを見て、業は苛立ちを覚えるが我慢してタキに声をかけた。

「俺は、業。こいつは相棒のバオッキーだ。この城で兄弟三人、執事をやってる」

 そう言う業を見てタキは、眼を泳がせるとその場で深くお辞儀をした。

「あの、さっきはすみません! 俺…まだここがドリフト国だと思って、焦ってた…」

「あぁ~気にしなくても大丈夫!」

「そうだ、気にする事はないさ。もう、ここはサザン国内だ。フレイム王様と獣王様が居る限り、ドリフト国の奴等は入ってこれない」

 優しい丁寧な声でダリアンはタキにそう言うと、ドリュウズに指を指して手招きしていた。そのまま、ダリアンは廊下側の窓から外へと出る。ドリュウズは、自分の掘ってきた穴に身を潜めると、埋め直すように土を蹴散らして潜って行ってしまった。
 その様子を見ていたタキはぽかんと口を開けていた。改めて、平和な場所に来た事を理解したのだ。本当に、サザン国まで逃げ切れたんだ。だけど、被害を与えてしまった獣達が気になる。彼らは、大丈夫なんだろうか?
 一人考えていたタキの目の前に、業はしゃがむと背を向けてタキの手を引っ張った。

「ほら、乗れよ。まだ体がふらつくんだろ?」

「あ…いいえ! いいです! 俺、もう動けますから」

「無理しないほうがいいわ。タキ、貴方まだ顔が真っ青だもの」

 イリスは、タキの背中を叩いた。業も無理やり背中にタキを背負うと救護室へと歩き出す。その後をイリスとバオッキーが着いてきた。業が救護室の中に入り、タキをベッドに戻すとその横からバオッキーが配膳台を押して救護室内にやってきた。イリスとキバゴは、眉間に皺を寄せると鼻を摘まんだ。

「なに? 変な匂いするんだけど」

 嫌そうな顔をするイリスに業はまた苛立つが、とにかく抑えて料理をタキの目の前に置いた。よく解らない匂いを発する肉片は、ピラミッドの様に積まれてサラダは豪快にそのままキュウリやトマト、キャベツなどが載せられていた。イリスは、ありえないといった表情でその料理を見ている。絶対に、彼に食べさせるべきではないわ。
 イリスはそう思いながら業の胸倉を掴み挙げた。

「凄い…」

 業を掴んで怒鳴ろうと思った直後、料理を見て瞳を輝かせるタキの声がボソリと聞こえた。タキは、料理をジッと直視したまま口を開いた。

「この、焼かれて焦げ目の付いたジューシーな肉。素材の味を生かし、尚且つその形までこだわったサラダ。自然そのままを生かしたこれは、正しく『男の料理』ですね!」

「おぉ?! なになに? 食う前から料理の背景が分かっちゃう奴なのかおまえ! その通りだ! これは、俺が作った『男の料理』!!」

「貴方が作ったんですか?!」

 二人とも嬉しそうに料理から会話を盛り上げている。イリスは、心底溜息をつきながら近くにあったパイプ椅子に座った。業は、続ける。

「これは大分時間経ったから、昼食な! ちゃんと食べるんだぞ? 元気になってジャローダに会いに行ってやれよ!」

「はい! ありがとうございます、業さん」

「業さん?! やめろよ…敬語無し! さん付け無し! 俺とタキは今日から親友だ!」

「親友? うん、ありがと!」

 急な話の流れから親友だと決めつけられて、謎めいた顔をするところタキは変人ではないみたいね。イリスは、パイプ椅子の腰掛に体を寄せると二人の間を割って話に入った。

「そういえば、夕食は毎日皆がパーティホールに集まってとってるの。まだしばらくは、リバリー国に戻らないでしょう?」

「いいえ…俺は、出来る事なら今からでもリバリー国に帰りたい。ディスコード王に無理やり宣誓布告させられた今、リバリー国にいつドリフト国の人々が襲撃してくるか解らないから…」

 真剣にそう言うタキの顔は、先程逃げようとしていた時のものに似てどこか無理をしているように感じた。業はタキの表情を見て悲しそうな顔をするが、配膳台から銀のフォークをハンカチで取ってタキに渡した。

「そんなに早く帰りたいなら、さっさと食って元気になってくれ」

 フォークを受け取る際に気が付いた業の顔を見て、タキは申し訳ない気持ちになりながらありがとう、と呟いた。イリスは、パイプ椅子に座ってキバゴを腕に抱きしめながら食事をとるタキを見た。

「ねぇ…本当に戦うつもりなの?」

 質問されてタキは口へ運ぶフォークを止めた。イリスは、続ける。

「アタシ達もディスコード王のことは知っているわ。アイツの身勝手すぎる言動と行動にはムカついたもの。けど、それでも一番やっちゃいけないことがあると思うの」

「戦争…のことですか」

 食べる手を完全に止めてタキは、静かにそう言うとイリスに眼を合わせた。イリスは続ける。

「戦争は、今も昔も…人間と獣を苦しめてきた。関係ない人と獣は戦争のせいで自分の住処や両親を殺されてるのよ?」

「それでも…大切な人を護らないといけない」

 唇を噛み締めてウォークを固く握るタキ。イリスは、それを見て俯くと再び口を開く。

「タキは、この地方の昔話知ってる? 『世界にまだ人間が慣れ切っていない頃。一度荒れ果ててしまった大地を、アルセウスが救いだして間もない頃。人々と獣に、巨大な二匹のドラゴンが襲いかかってきた。豊かになった自然を次々と自分の手にした人々は、ついにはそのドラゴンの住処であった土地までも奪ってしまったからだ』」

「知ってるよ。そして、その怒りを鎮めたのが…ビクティニ」

「そう、知ってたの。でも、あのお話には一つだけ欠けた言葉があるの。『戦争』よ」

「『戦争』…?!」

 本の中で何度も読み返しても気が付かなかった。いや、その戦争自体に両親を奪われたせいで、怖くて触
れる事も考える事も出来なかったのかもしれない。黙り込むタキに、イリスは続ける。

「アタシと祖父はその二匹のドラゴンを囲むリュウラセンの塔を代々護っているの。彼らは、戦争を好まない獣なのよ。だから、本当はお話の中で自然を奪い合うため戦争を繰り返す人間をなんとか鎮めようと出向いた。だけど、お話の中のビクティニがそれを相殺してしまったわけ。いつでも戦争は、勝者が歴史を塗り替えているってことよ」

 一旦話を区切るとイリスはパイプ椅子から立ち上がり、タキの目の前に立った。

「アタシは、リバリー国が戦争を起こすと言うのなら賛成できない。協力できないわ」

 きっぱり言われたその言葉にタキは更に黙り込んだ。サザン国とは、同じ考えを持っていた。だからこそ、今まで戦争を避けてきたんだ。それなのに、今更になって戦争をするので手伝ってくださいなんて言えたものじゃない。きっと、リバティ王様もフレイム王に今、同じことを言われているのだろう。
 助けてもらうつもりはなかったけど、実際に面と向かって言われると心細さが倍増されるな。タキが黙っていると、業が腕を組んで重々しく口を開く。

「俺はタキの意見も解るな」

 言った業を見てイリスは、腰に手をあて耳を傾ける。

「協力までは出来ないけど…共感は出来る。確かに世界中の人や獣達と共存して仲良くなって、戦争なんて消えちまえば良いって思う。けど、やっぱディスコード王みたいな奴もいる。皆が皆、同じ考えじゃいられない。ならやっぱり、自分の大切な人を護りたいって、そう思う」

 業がそう言うと、イリスは頬を膨らませて救護室から出ていってしまった。タキは、悲しそうに出されていた料理を見つめる。どうやら、とても迷惑をかけているみたいだ。俯いたままのタキの頭に業は手を置くと笑顔で料理の皿を持った。

「ほら! いいからさっさと食えって言ってんだろ?」

「…怒らせちゃったみたいだ」

「気にすんな! アイツは、昔っから短気なんだよ。それより、元気出して、な?」

 自分を気にかける業にタキは無理やりにでも笑ってみせた。まだ会った事もない人なのにここまで親切にしてもらって、本当に申し訳ない。

「それじゃ…いただきます」

「ん、お食べなさいっ」
 タキは用意された、少し温くなった料理を口に頬張った。それを見ながら、業は配膳台下の棚から紅茶セッ
トを取り出して紅茶を作り始めた。明るい陽差しが射すこの時間帯は、徐々に赤らみを増して、また長い夜を連れ戻す。


 15話に続く…

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代珠
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性別:
非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
  学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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