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ひっさびさでーーーーーす!!!!
ようやっと出来ましたww
読み直してないんで、また20の二の舞みたいになっちゃってるかもです…
その時は、どうぞ、よーさんに間違いを教えてください!
次は土日のどちらか、夜中に更新予定でーす。
ちなみに、今回タキ君の戦争の二倍の長さですw

震災の方々…一応、読んでいる方とかいたら凄く困るので書いておきます。
今回は、戦争テーマに書いているので不快な表現が含まれています。
なので、作った奴がそんなこと言っていいのか、ですが、読まないことをお勧めします。



では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から21お楽しみください。
 




======


 明朝にリバリー国を出発して、七日目になる。レインとタキ、西側と東側で兵を作ったリバリー国は、ハイヤードポンド中央の崖を境に別れた。タキ将軍を率いる東側軍隊とは、一日前に別れたきりだ。二日間作れる予定であった休息も一日しかとる事が出来なかった。

 右隣の崖を横目にレインは、240人のリバリー軍隊の先頭を立った。まだ、敵軍の姿は見えない。じっとただ敵軍隊を待つレインの頭から、突然ひょっこり姿を現したのは白くて丸い、ふわふわのベルだった。ちりーん、と静かに鳴きながらベルはレインの髪の毛を弄って遊んでいた。
 レインは、小さなため息をつくとベルに話しかける。

「どうして僕の所に来たんだ。タキには、君とジャローダしかいないんだよ?」

「じりりぃ…」

 ぷすっとベルは頬を膨らませてレインの黒髪を自分の両頬に引っ張る。ぴょこっと髪が少しだけ顔や外側に跳ねているのを見ていれば、なんだかタキの真似をしている様にも見えた。真剣な眼差しで喉を鳴らして話している。何を話しているのかは、さっぱりだが…。
 大体解ったよ。どうせ、タキが無理を言ってベルを僕に寄こしたんだ。彼女も不屈そうな雰囲気を出していたから、聞く前から本当は解っていたのかもしれない。
 僕がリバリーの兵になる前からタキとは街ではよく遊んいでた。彼は他国からリバリー国に来る途中、人間に恨みを持つポケモンに両親を殺された。
 新しい国民が来ると伝達を貰っていたリバティ王様は、日が経っても訪れないタキとその両親を心配して、自らウォーグルのリベットで探しに行った。そして、血塗れの男女が幼いタキを抱きながら息絶えているのを見つけたそうだ。
 タキは、涙を流しながら恐怖に震えていたそうだ。近くには、瀕死寸前のツタージャがいてそのポケモンとタキをリバティ王様は連れ帰ってきた。リバティ王様は、タキに一つの家と自分の側近の仕事を与えて、何時でも近くに人がいるようにした。
 絶対に独りではないと知ってもらう為だろう。
 それでも、僕がタキとこんなに話せるようになったのは、兵になって後のこと。だから、本当のことを聞かされた時は酷く悲しくなった。今まで見ていた彼の笑顔や優しさは、一体どこから来ていたんだろうって。僕は、タキが泣いている姿を見た事がない。凄く辛いはずなのに…両親が居る僕よりも彼はずっと強かった。
 スパイを殺した後も一人で死体を片付け、戦い前のリバリー国での最後の晩も、彼は姿を見せなかった。誰がどう関わろうと、結局、彼はずっと独りぼっちだったんだ。
 友人として何も出来なかったのが辛い。僕は、前までは確かに全てを助けようとしなくてもいいと思っていた。自分の大切な人達だけでいいって。だけど、それは違う。タキはそれを知っている。皆が大切だと思っているから。だから彼は、怯む事を知らずに理想を求めている。僕もそれくらい、タキの…皆の役に立つ事をする。

「レイン君!」

 考えを募らせていたレインにダンが言葉を投げる。呼ばれたレインは、自分の髪を必死に弄るベルの頬を片手で摘まみ黙らせると答えた。

「どうしました?」

「コレ! 赤ハタ!」

 言いながらダンは自分の右手に持っていた赤ハタをレインに託した。受け取った赤旗をレインが地面に差し込んだのを見るとダンは続ける。

「レイン君…クライム、タキ君、皆頑張ってる。僕達も頑張る」

「はい! 頑張りましょう。絶対に勝って見せる」

 そう言い微笑んだレインに、ダンも微笑すると自分の胸に片手を当てて、もう片方の手でピースを作りレインの手を握りしめた。

「僕、レイン君、全力で護る! だから、君にコレあげる」

 何を受け取った訳でもない。だが、レインには解っていた。

「…解りました。でも、これは本当にやばくなったときに使います。僕は、やばくならないように全力で頑張ります」

 握っていた手を握り返されて、ダンは少し驚いた表情をとると満面の笑みで深く頷いた。それにしても、敵兵が遅い。一体何をやってるんだろうか。不思議そうに眉間に皺を寄せながら、蜃気楼の中敵軍の人影を探る。ダンは、そんなレインから手を離すと直ぐにリバリー軍の中に溶け込んでいった。
 中に入ったダンは、すぐに軍隊に指示を出す。

「まだ敵軍、来ない! イワパレス達出す。護り固める」

 従って、赤い球に休ませていた兵達のイワパレスが球から姿を現した。パートナーからの指示を受けて、リバリー軍隊の先頭に立ち、その場で黙って身を固め出す。かたくなるだ。その他の兵達も、ムーランドやミルホッグ、レパルダスを赤い球から出現させジッと敵が現れるのを待った。

「来たぞ!」

 一人の兵が声を上げた。声の通り、レインの見つめる先から体格の大きな影がゆらりと浮かんだ。その背後からは、沢山の兵達が付いてくる。上空には、鳥ポケモンはいない。まあ、まずは一つ、弱点が消えたと言う事だ。
 近づいてきた敵軍の将軍の姿が露わになって行く。水色の衣に鎧を身に着けており、体は大きく今でも鎧の金具がはち切れそうだ。眉は太く、伸びきった無精髭は首に巻きつけていた。色は黒い。外の人間か?
 歩みを止め、敵の将軍はレインの近くに刺されていた赤ハタを見てから、衣の長い袖を持ち両手を合わせた。

「我が名はアミラス。ドリフト国のディスコード王様に仕える兵なり。敵よ、名をなんと申す」

 尋ねられ、レインは地面に差していた赤ハタをアミラスに投げ渡すと続ける。

「赤ハタ! 僕の名はレイン。リバリー国のリバティ王様に仕える兵士です」

「ふっふっふっ…赤ハタか」

 不気味に笑うアミラスをレインとその頭にのるベルは睨んだ。アミラスは、腰に纏わりつく青の衣を託し上げ、赤い球を出しながら続ける。

「赤ハタは予想済みだ。レインよ。今日、お前には草の獣使いを揺さぶる糧となってもらう」

 赤ハタは予想済み。草の獣使いを揺さぶる? 
 一体なんのことだ?
 もしかして、タキの事を言ってるのか?
 首を傾げるレインを見つめながら、アミラスは赤い球を宙に放り投げた。綺麗に回る赤い球からは、光と共にダイケンキが出現する。青い毛並みに、堅い頭。その両手には、剣が仕舞い込まれていると言う。その凛とした姿を見て、レインは眼を見開いた。

「水タイプ…!」

「そう、水の力だ。お前達は、草使いを仕留めに我々が作戦を練ると思ってはいないか?」

「なに…?!」

 完璧に敵に自分達の考えを読まれていたとでも言うのか。レインが唖然とする中、背後にいたダンもぎゅっと上唇を噛んでいた。緊迫した中、アミラスが片手を掲げる。すると、背後にいたドリフト国軍達も赤い球からガマゲロゲを100以上の数を出して来た。
 数にも圧倒していたが、まさか全員水タイプとは…こちらの負けも認めざるをえない。だけど、そうはさせない。アミラスは、赤ハタを地に差し続ける。

「レイン。貴様は炎の獣使いだ。そして、草の獣使いの大切な友人。ディスコード王様も我より上の者も、皆彼の絶望に満ちた死を望んでおられる」

「だから僕を殺して、タキに見せしめにでもしようとしてるのか?」

 深くうなずいてからアミラスは続ける。

「少し違うがな。弱き者は、仲間が散れば散るほど嘆き悲しむ。自分が傷つくよりも苦しく、絶望を感じる。そうだな…レインよ。貴様の死は草の獣使いを奈落へ落とし、そして、草の獣使いの死はお前を奈落へ落とす。これは、我々にとって最高の美酒だ」

「サイッテー」

 リバリー軍の列にいたダンがいーっと歯を剥き出しながら小声で言う。勿論リバリー軍に混ざっている、そんなダンの姿などアミラスには見えていない。アミラスは、ダイケンキに眼をやると左腕をレインに向けた。長いアミラスの衣の袖が風を切る。

「地獄沼を放て!!」

 アミラスの低い声がハイヤードポンドの崖まで響く。指示されて颯爽とガマゲロゲ達は、レイン目掛けて大きく風を巻き上げる様に両腕を振るった。そこからは、たちまち泥水が湧きあがり、津波の様に辺りを支配していく。濁流だ。
 相手がガマゲロゲを出した瞬時に理解していたダンは、拳を握りしめて大声を出した。

「イワパレス! 皆、まもる!!」

 指示されたイワパレス達は、堅くなるのを止め直ぐに自分の身を固めた。隙間なく身を寄せ合い護るイワパレスの御蔭で、濁流はリバリー軍には入って来なかった。
 その頃、濁流は波に乗ってレインとベルを襲う。彼らを巻き込み体力を消耗させるのには全く時間が掛からなかった。剣と鎧を装備しながらもレインの細身の体は、濁流の中で何度も回転する。眼を開ける事すらできない。濁流は、勢いが増すばかりで息をすることさえ出来なかった。無我のまま、身を持って行かれる事しか出来ない状態のレインの頭にはベルが必死にしがみ付いていた。
 このままでは駄目だ。ベルは、泥水の中ゆっくり瞳を開けた。苦しんでいる場合ではない。開いた瞳をぎらりと光らせながらベルは水中の中、もごもごと鳴いた。すると、レインの体がふわりと浮く。自分の体が浮いている事に驚く暇もないレインをベルは急いで濁流の中から引き揚げた。
 げほげほと咳き込みながらレインは息を吸い込む。泥だらけになった顔を腕袖で拭うとベルに微笑む。

「っが! 念力か…やるな、ベル」

「ちりりん!」

 レインの頭の上でベルは、腰に手を当てながら鼻を鳴らしていた。確かに、今は凄くベルが誇らしく見える。
 浮いている状態で見える範囲内では、敵が側からのガマゲロゲの攻撃が止む事無く行われているのが見える。アミラスには、当然、濁流に飲まれていたレインとベルが上流に上がったのを知っている様だった。お互いの眼が重なり合う。余裕のあるその姿と表情は、これでもう終わりか、と問いかけているように見えた。
 そうはさせない。何か…何か手があるはずだ。
 濁流に飲まれたレインが浮かび上がったのを見て、リバリー軍の中にいたダンはほっと肩を落とした。だが、こちら側も危ない。イワパレス達の中で、何匹かのイワパレス達が後ろ脚をガクリと落してしまっている。濁流の技は、水タイプのガマゲロゲが放つ。勿論、水タイプの技だ。
 このまま護るで耐えていても、護るが必ずしも成功しているとは限らない。

「おい! 大変だ! イワパレスが!」

 一人の兵が焦った声を上げる。兵が見つめるその方向には、ふらふらの一匹のイワパレスの姿が合った。もう、限界だ。思った直後、そのイワパレスはその場に倒れた。そこからは、塞き止めていた濁流が一気に侵入してくる。濁流はリバリー軍を飲み込んだ。一匹倒れたイワパレスも濁流の中に流されていく。
 護っていたイワパレス達も、足を掬われて濁流に巻き込まれていった。備えていた剣も弓矢も、銃も全て濁流に巻き込まれていく。濁流に体を引っ張られたりと遊ばれながらも、ダンは濁流面まで泳いでなんとか顔だけを出した。息を吸い、また波に引き戻されそうになりながらも大きく口を開く。

「皆! 赤っ…球! イわ…っパレス仕舞う!!」

 掻き消されそうなダンの声を聞いた少ない兵達は、濁流面まで顔と右手に持った赤い球を出す。赤い球からは濁流に一直線にばらばらと光が解き放たれ、弾に戻るようにして光は徐々に消えていった。
 イワパレスの壁が崩され、ダン達が濁流に飲みこまれているのをレインは知ると、自身の頭の上にのるベルに声をかける。

「念力は?! これ以上多くは持ち上げられないのか?」

「ちりり…」

 ふるるとベルの瞳が揺らぐ。黙って何も言えずにいるのを見るところ、無理だと言う事なんだろう。何も出来ずに宙に浮かぶレインをアミラスは見つめ口端を上げた。リバリー軍の姿が濁流で見えなくなったのを確認すると、アミラスの左手が上げられる。アミラスの姿を見たガマゲロゲ達は、動きを止めじっとレインを見上げていた。
 濁流の技が止まり、辺りから泥水が引いていく。その中から、体を泥塗れにしたリバリー兵とポケモン達がぐったりした様子で現れる。ダンも荒い息を上げながらその場に立ちあがった。自慢の白い海賊帽も台無しだ。
 びちゃびちゃと濡れた地面を歩きギロッとアミラスを睨みつけた。
 干上がっていく地面を見てベルもレインにかけていた念力を解く。浮いていたレインの体は、地面にゆっくり落ちていった。少々疲れたようにベルは鳴くと、すぐにダン達の方に飛んで行く。
 降りてきたレインにアミラスは満足気に不敵に笑みながら続ける。

「泥は肌に良いと聞く。どうかな? 少しは調子が良くなったのでは?」

「…これは……僕も笑えないので、その手のジョークは聞きいれません」

 言うレインの瞳はぎらぎらと光を灯していた。アミラスは、そんな瞳を見ながら思う。流石、炎使い。二人が話す中、ベルは急いでダンの元へと駆け寄った。先程まで元気の良かったリバリー兵達も、ポケモンも全員虫の息だ。
 ベルは、高く浮かぶと大きくその小さな手を広げた。


 ちりりーん

 ちりりーん

 ちりりーん


 何度もベルは自分の風鈴の様な喉音を鳴らす。その音に合わせて、ベルの両手からぶぁっと薄桃色の波紋が浮かび上がる。波紋は、リバリー軍全員を包みこんでいく。傷ついた体は、少しずつ癒えていき、ダンも呼吸を整え普通に立っていられるようになった。
 その様子を見ていたアミラスは、口をあんぐり開けながらその口を手で覆う。

「馬鹿なっ?! なんだあの獣は?! あれは獣ではなく…神だったとでも言うのか?!」

 驚くアミラスの目の前で、レインは腰から赤い球を手に取ると宙に放り投げる。そこからは、炎に包まれたエンブオーの姿が現れた。大きなその体と勇ましい様は、自分の弱点が目の前に在ろうと怯む事はない。レインは続ける。

「アミラス! お前が言う獣は、恐ろしい者や神なんかじゃない。僕達と同じ心と命を持った獣達だ」

「我らと同じだと?」

 反感したアミラスなど気にせず、レインはエンブオーに瞳を合わせ、次はアミラスに指を指した。

「エンブオー! 敵軍に向かって吠える!」

 仲間であるレインの声を聞いて、大きなエンブオーの体が動く。その場で大きく息を吸い上げると敵軍に向かって吠え始めた。レインの背後にいるリバリー兵の耳にもじりじりと響く雄叫び。
 圧倒的なその威圧に、敵軍のガマゲロゲ達は恐れをなして自分の赤い球の中へと戻っていった。様子を見ていたアミラスはそれでも表情一つ変えずにレインを見つめる。

「百はいた水の獣を一声で帰すとは…どうやら、思っていたほど子供ではないらしい」

「ええ、経験なんてまだまだですけど、貴方には絶対に負けない」

「ゴォォォォ」

 言ったレインの隣で、エンブオーも唸る。アミラスの隣には、同じく勇ましいダイケンキの姿があった。

「ダイケンキよ! 早々に水を纏え!」

 命令されて、ダイケンキはその場から素早く駈け出してきた。あの大きな体のどこからあんなスピードが出るのだろうか。水を纏い、素早くエンブオーの脇に入ってくる。アクアジェットだ。
 直ぐに気が付いたレインは、剣を引き抜きエンブオーの前に立った。構えた剣にダイケンキは突進してくる。構えた剣とダイケンキの頭がぶつかり合い、相手の重みを感じる。獣の攻撃を人間が防げるわけでもない。レインはダイケンキを睨み上げた。

「毒突きだ!」

 打ち合いになっていたレインとダイケンキの隣にエンブオーが両手を構えやってくる。紫帯びた手を脇で構え力強くダイケンキへと放つが、相手の方が素早さが高くすぐに交わされてしまった。
 ふっと息を吐くと、レインは改めえて剣を構えた。エンブオーの攻撃を避けるとともにアミラスの所まで戻ったダイケンキは、にやりと微笑む。何か、とても嬉しそうに見えた。レインが不思議そうにしていると、アミラスがダイケンキの首元を撫でた。
 頬を赤らめながらダイケンキは身震いすると、その左手の貝の甲から大剣を引き抜いた。引き抜き構えられてた先には、レインが映る。ああ、分かった。このダイケンキは、剣を抜いた僕をその大きな刃で倒そうとしてるのか。

 レインの背後から見守るダンやリバリー兵は、泥塗れのまま息を呑んでレインとエンブオーを見つめていた。いくら強い人でも、炎と水じゃあ勝ちは見えてる。思うダンの隣で、ちりりんと悲しそうに鳴くベルがやってきた。

「君…心配、してる」

「ちりん」

「そう。僕も、心配。レイン君、エンブオー。水と炎、炎勝てることまずない」

 炎と炎なら五分五分だった。だが、水と炎の差は歴然としている。水がせめて油なら、この戦いの勝者は決まっていた。どうする。これから、僕はどうすれば勝てるだろうか。自分の仲間に、水に強い獣はいない。

「うああああああああああああああっ!!」

 急にリバリー兵の一人が膝を崩し倒れた。頭を抱えながらがくがくと震えている。男の隣にいた兵が驚いて近寄る。

「どうした?!」

「あ…あ、ああアイツがっ」

「アイツ?」

 震えながら小声で言う男に、兵達は冷汗を滲ませた。気になったダンも、ベルを連れて男の近くにやってくる。ダンは、男の背中を擦りながら聞く。

「アイツっ。アイツっ! アイツアイツ!」

「アイツ、誰?! どこか痛い?」

「うああっ!! 嫌だ! 違うんだ! 怖い!」

 言いながら頭を左右に振る。目も合わせてくれない。ダン達の会話を聞いていたベルは、どこか痛いのかと自分の喉を鳴らす。桃色の波紋が広がり、男の体に溶けていくが何も変わらず、男は気が狂ったように唸るだけだ。

「コワイコワイコワイコワイコワイ! 嫌だぁっ! 俺はっ! 俺はぁあああああああ!」

 男の様子を見ていると、遠くの方でも男と同じように膝から倒れ込み、同じように叫ぶ兵が出てきた。おかしく思ったダンの近くにいた兵が、顔を真っ青にしながら続ける。

「もしかして…伝染病なんじゃ」

「それ、違う。」

 きっぱり兵にそうダンは言うと続ける。

「ハイヤードポンド。誰もいない場所。何もない場所。伝染病、ありえない」

「それじゃ…っ!!? うガあアァっ?!!」

 一緒に話していた男も膝からがくりと力を落し倒れた。今まで普通に話していたのに、おかしい。少なからず、一人ひとり兵達が倒れていく。これは一体、どういうことなんだろうか。ダンとベルは共に上唇を噛んだ。


 その頃、レインはダイケンキと互いの剣を交え勝負をしていた。強いな、なんて言える余裕すらない。相手の大剣は、受ける度に重くレインから体力を奪っていった。レインは、ダイケンキより小さな体で背後に回り込み、剣を振るう。
 間合いを取ることの出来なかったダイケンキは、レインの刃を受けた。獣の血飛沫が大量に上がる。叫ぶダイケンキの様子を伺いながら、レインはエンブオーの元へと戻り耳打ちをした。何かを企んでいる。アミラスも背後から見守るダンも、横目でそれを理解した。
 耳打ちしたレインは、直ぐにエンブオーから離れて再びダイケンキへと剣を振るった。歯軋りを立てながらその剣をダイケンキは受け流す。何度か剣を交えると、レインは泥水を駆けながらダイケンキに指を指した。

「エンブオー! ソーラービーム!!」

 言った瞬間、エンブオーの体が緑色に変化していく。ダンも倒れていく仲間たちの肩を持ち上げながら見つめた。勝てる兆しがこちら側に傾いてきたかもしれない。相手将軍である、アミラスもさぞ驚いているだろう。炎の獣でも、熱の力を使った草タイプの技を放つことができるんだ。
 思っていた通り焦りだしたアミラスは、苦しそうに息を吐くダイケンキに向かって威勢のいい声を張り上げた。

「奴は草の力を使おうとしているぞ! 奴が攻撃をする前に倒す!」

「ギィイィ、グオォォ!!」

 聞いていたダイケンキは従って口から大きなハイドロポンプをエンブオー向けて噛ました。素早くエンブオーへと向かってくる水圧をレインは剣で受けて見せる。勿論、弾き返せるわけも無くレインは剣ごとハイドロポンプに飲み込まれ、エンブオーの体に打ち付けられてしまった。

「レイン君!」

 後ろ側で見ていたダンが叫ぶ。あんなに吹き飛ばされる程の威力があるなんて、相手のダイケンキは相当強い。援護しなければ。ダンは、肩を貸していたリバリー兵を地に下ろした。近辺にいた兵から弓矢を借りると、すぐに弓の弦をひく。
 しかし、その手は狂ったリバリー兵に止められてしまった。両肩を握りしめられたダンは驚きながら一人の兵を見つめた。その顔は既に涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。

「アンタにはまだ見えてないんだろう?! 頼む…アイツが殺せって言ってるんだ」

「アイツ? 一体、誰?! みんな…」

「嫌だ! 嫌だ嫌だ! 嫌だぁぁっ!! 俺はリバリーのために戦う!! 意味のない人生に道を指してくれたこの国を滅ぼしたくない!!」

 どうしたんだろうか。彼は、みんなは一体何に侵されているというんだろう。兵は泣きながら続ける。

「頼む! 俺を殺せっ!! お前たちを殺すのは嫌だぁぁぁっ!!! 俺が俺で無くなって死んでいくのも嫌だぁああああ!!」

「お、落ち着く! 思い出して!」

「うあああああああああああああああああああああああ!!!」

 ダンの静止も聞かぬまま彼は悲鳴を上げながら、自分の銃器を口内へ差し込みそのまま自我を撃ち殺した。兵の後頭部から射し込むのは紛れもない、鮮明な赤だ。
 止められなかった。それ以前に、今リバリー軍隊に何が起こっているのかが理解できない。最初に受けた濁流に何か仕掛けがあったのだろうか。いや、それはこちら側の軍勢を散りばめるための策略だった。これは違う。
 じゃあ、どういうことだろうか。みんな、アイツという奴に支配されている。まるで、脳の中を書き換えられてしまったように、何度も何度もアイツが怖いと恐れている。もし、そうであったとしたら人間ができる技じゃない。

「うっ…あ?」

 あれ…どうしたんだろうか。ダンは片手で頭を押さえながらがくりとその場に倒れた。沢山流れ込んでくる。自分は、リバリー国の兵だった。兵の前は…ドリフト国のスパイだった?
 違う。でも、そうだったのかもしれない。兄弟はいない。いや、いたかな。

「おかし…自分、記憶が…」

 沢山ある、今までの辛い思い出も楽しい思い出も無い。思い出すことができない。タキ君の顔、どうだったかな。レイン君との約束は覚えてるのに、クライムとした大切な約束は思い出せない。
 怖い。自分のモノなのに、自分のモノじゃない。気持ち悪い。ダンは、頭を押さえながら大きな怒鳴り声を上げた。喉が痛い。どれくらい叫び続けた。

「頭弄るなッ!!! これは僕のだッ!!」

 約束したとき、誓ったとき。クライムの表情は覚えてる。でも、直ぐにディスコード王の姿が出てきて……何を誓ったのか思い出せない。
 ああ、そうだ。みんなの言っていた奴はディスコード王のことだったのだ。


 リバリー軍隊から叫び声が絶えない。一体何が起こっているのかも分からず、レインは胸を押さえながらエンブオーの様子を見た。胸の痛みは、たぶん打撲傷だろう。あれだけ強い水圧を食らってこれだけの傷だった。運が良いのか、悪いのかよく分からない。エンブオーは無事だろうか?
 体を揺すっても反応がない。



 シ ン デ シ マ ッ タ 



 ぞわりと体が竦む。

「エンブオー?!」

 信じられない。レインが必死になってエンブオーの体を揺すっていると、見ていたアミラスが冷たい声で言った。

「レインよ。炎の獣は、お前を護って死んだのだ」

 これだから、弱い者は見るに堪えん。アミラスが笑いを堪える中、レインはその場で肩を脱力させた。
 嘘だ。エンブオーが死んだなんて、そんなのおかしい。考えられない。さっきまで、一緒にいたんだ。昨日の夜だって、一緒に絶対に勝とうって……。
 愕然とするレインと、死んでしまったエンブオーに狂いかけのリバリー兵達も息を呑んだ。このまま、負けてしまうのだろうか。

「ちりっ! ちりりりりぃ!!」

 ダンの近くにいたベルが喉を鳴らす。なんだと皆が見つめたベルの姿は、既に前々から決意していたとでもいう勇ましい姿だった。ベルはその軽い体でひゅうッとエンブオーの頭上まで飛んでいくと、大きく息を吸った。
 彼女の喉から奏でられる、優しい鐘のような響き。聴いたこともないその音色は、エンブオーを包み込むように暖かく辺りに広がっていく。ベルは、一体どんな技を繰り出そうとしているのだろうか。なんでだろう、声が出ないほど息が詰まる。エンブオーも消えてしまった今、自分の中で嫌な事しか思い浮かばない。
 恐れてるんだ。死を恐れてる。身近にいた、大切な人が消えて、今改めて理解した。
 震えるレインを真上で歌うベルは、見て大丈夫だよと優しく微笑んで見せた。希望を捨てては駄目。君が望んだ理想を求めて。こんな真実は、決して望んじゃ駄目。信じちゃ駄目なんだ。

「クぅっ…またあの獣が! レインよ! 貴様は何を企んでいる」

 声をかけられ、レインはぎっとアミラスを睨んだ。言うわけないだろう。でも、そうして自分を高ぶらせて楽しんでるのは理解できる。ベルが何をしようとしているか分からないが、ちゃんと護らないと。レインは思うと、腰に身に着けていた赤い球に手を添える。
 戦いより警戒心が強くなったレインをアミラスは疑わないわけがない。あの獣は癒しの力を使える。信じ難い話だがあの炎の獣を蘇らせようとしているのではないだろうか。

「そうはさせんぞ。ダイケンキよ! 将軍を薙ぎ払え!!」

 アミラスの言葉に、剣を構えていたダイケンキは自分の腕にそれを仕舞い込み、自身に水を纏ってレインに突進してきた。構えていた赤い球から、獣を出そうとしたがそれも叶わず地面に体を打ち付けられた。
 何度かボールのように体が弾む。衝撃に痛みを感じながらレインは、言葉を吐き出した。

「ベル!! 逃げろッ!!!」

 レインの声を聞きながら、ベルはそれでも歌うことを止めない。額に脂汗が浮かぶ。目の前には、ダイケンキの鋭利な剣が飛んできている。嫌だ。嫌だよ!
 後…後もう少し時間をください。どうか私の祈りが届きますように。ビクと練習したの。あのとき、全く出来なかった。だけど、今はできなきゃ駄目なの!
 私の音色よ。どうか、エンブオーの心に届いて……。


 将軍同士の戦いの中。今、レインがダイケンキに体を突き飛ばされた。ベルが危ない。ダンは、思いながら自分の中の記憶と戦っていた。震える両手で弓を構えると弧を引く。糸の引き攣る音を耳にしながら、ベルに襲い掛かるダイケンキに矢を射った。
 だが、ダイケンキは刺さった一本如きの矢には目もくれず、ベルのその小さな体を大剣で叩き切った。硝子が割れた様な悲鳴が響き渡る。真っ二つに割れたベルの体が地面に落ちた。それを見ていた、レインもダンもグッと拳を握り締める。
 助けられなかった。きっと、ベルはエンブオーにも自分の癒しの力を使おうとしていたんだ。でも、今も目の前で起こった死を記憶できないでいる自分もいた。既に分からない。今、ここで誰が死んだ?
 自分はなんでこんなに記憶が曖昧になるんだろう。さっきまで、その事について考えていた気がする。人間業じゃない。思い出した瞬間、キシシと笑む不気味な笑い声が聞こえた気がした。思わず見回した先は、敵将軍の背後で見守る人々。そして、人の間を割った陰から笑い声の主は笑っていた。
 機械質な小柄な獣は、緑色のサングラス型の瞳を細めダンをじっと見ていた。

「オーベム?!」

 そうか、そういうことか。ダンは持っていた弓を手元から落した。オーベムの両手にある三色の指が交互に点滅している。この獣は、生き物の記憶していた映像を操る能力を持っている。リバリー兵達もこの能力にやられていたのだ。
 主格を見つけられた。後は、あの獣を倒せばいい。でも、ここからの距離や万が一、レイン君に攻撃が当たったら…。今、記憶を操作されて自分のアイデンティティが安定していない状態で、上手くいくとは到底思えない。この状況は、正しく絶体絶命だった。


 ベルもエンブオーも死んでしまった。全身の痛みに耐えながらレインはその場を立ち、落ちていた自分の剣を持ち構えた。背後にいるリバリー軍隊の様子をもおかしい。自分に残された仲間も一人。そして、相手は水タイプのダイケンキ。
 だけど、このままで終わらせるわけにはいかない。右手に剣を持ち直したレインは、左手を後ろに回し静かにピースのサインを出した。怪しまれまいと、レインは口を紡ぐ。

「アミラス…。これで僕はこの戦いに勝つ」

 言うレインを見つめ静かにアミラスは目を細める。

「仲間が死に、考え誤っているのか?」

 将軍二人が話すなか、背後にいたダンはレインのサインを見逃しはしなかった。一番最初に約束した、危険信号の合図だ。
 このサインの意味は、ダンも将軍の戦いに参加する合図。ゲームで言う不正行為と同じだが、この際そんなことも言ってられない。何より、相手もオーベムを使って将軍に手を下すのでなく、敵軍であるリバリー軍に攻撃をしてきている。これも、立派な不正行為だ。
 ダンは、大きく息を吐くと腰に身に着けていた二つの赤い球からドリュウズとシャンデラを出した。ダンは一人一人に指示を出す。

「進むの不得意。ドリュウズ、手伝って。シャンデラ…僕、いなくなったら、敵軍の命、吸い取って。その力で、残り倒して」

 指示を出すと、ドリュウズもシャンデラも悲しそうに鳴きそれぞれの仕事を始めた。ドリュウズは大きな爪で自分の体格差にあった大きな穴を掘っていく。砂埃が立ち、すぐにシャンデラの姿が見えなくなった。悲しく揺れる炎は、魂を吸えない痛みではなく主を失う悲しみに踊る


 サインを送った後、レインは素早く両手で剣を構えるとダイケンキ目指して剣を突き立てた。向かってきたレインにダイケンキは、容赦なく大剣を振るう。長い剣に先を越され、レインの腹を貫く。自分の向けた刃もダイケンキの脇を貫いていた。
 貫かれたままの腹からは血が流れ落ちる。暫く睨み合っていれば、咳き込みながら吐血し息を整えながらレインはにやりと笑んだ。

「っは…水の獣。僕ら人間を舐めるなよ? 僕らの想いは…こんな剣一振りじゃ貫く事はできない!!」

 吠えるレインを見ていて、アミラスは高らかに笑い出す。

「はっはっはっ!!! 自ら刃に向かうとは…怖くなって血迷ったか?!」

 アミラスが馬鹿にしたように言った直後、その背後でダンは剣を胸のど真ん中に突き刺した。突如として食らった痛みにアミラスの体が痙攣を起こす。ガクガクと震えるアミラスを背後でダンは睨み口を開いた。

「怖い? 大切な人、護る事! 全然怖くない!」

「ッ?! き…さまッ!! 一体何処から…?!」

 突然のことでアミラスは把握しきれていないみたいだ。ダンの言うとおり。大切な人たちを護ることに、弱いなんて言葉はおかしいだろ。弱くたっていい。その分、命を懸けて全力で護り抜く。
 タキもそうだ。自分より強い相手と何度も戦ってきた。相手のことばかり考えて、自分は二の次で…そんなタキをコイツはなんて言った。レインは、ダイケンキを貫き貫かれながらアミラスを一点に見つめた。

「タキを苦しめる…? お前達はッ…何もわかって、ない」

 アイツがどれだけ苦しんでいるか。傷ついているか。どんな時も笑顔で、時々見せるおとぼけた顔は、どれだけの国民や同じ城の使用人達の励みになっていたか。そんなタキを…アイツを…。

「アイツを…苦しめるなんておかしいッ。これ以上…タキを苦しめて何になる?! 出て来い! ギガイアス!!」

 レインの声を聞いて彼の腰に身に着けられていた最後の赤い球からギガイアスが飛び出した。迷いはしない。大切な人を護り抜くことこそ、僕の求めていた力の答えだ。レインに続き、ダンも貫いたままの剣を片手に赤い球を取り出すと、そこからダストダスを出現させる。生臭いこの匂いを嗅ぐのもこれで最後だ。

「ダストダス!! 最後の僕の言葉…聞いて!!」

 声を張って力任せに言う。ダンを見ていた敵地のオーベムが、また自分へ何かしたようだ。なんでここにいるのかも分からない。何しているんだろうか。
 だけど、分かる。別れた時に約束したクライムのことはまだ覚えてるから。さよなら、クライム。ダンは溢れる涙を隠す様に、トレードマークの白い海賊帽を深く被る。二人とも最後の力を振り絞り、体を軋ませながら大きく息を吸った。






「「ダイバクハツ」」






 その言葉は、その場で二度瞬きすると辺り一帯を煙と光で焼き尽くした。アミラスやダイケンキは悲鳴を上げながらもがき苦しんでいる。他にも人の声が幾つか浮かぶ。巻き込んでしまった人もいるかもしれない。
 死ぬ直前はこんなにも時間が長く感じるんだな。熱くて痛い。自分が呻きながら肉片になって行くまでが分かるなんて。

 自分は、今…強くなれたんだろうか?

 22に続く…


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▼代珠(よず)
October 10
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出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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