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遅くなりましたがっ!!
出来ました!!
うるうる注意ですwww
それでは、楽しんでください!
私は次の作品頑張ってカキカキしてきますノシ
では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。
以上を守れる方は、下記から23お楽しみください
=======
サザン国の城、三階廊下には、茶紀の仕事場であるフィーリング室がある。室内は、草花がすくすくと育つよう温度調整され、硝子で出来たそこをきれいに彩っていた。怪我を負った獣達や、サザン国民たちが世話を仕切れなくなった悪戯好きな獣をたまにここに呼び、共に遊んだり、人なりに声を聞くのが茶紀の仕事で、日課となっている。
この世界に人間と同じほど…いや、それ以上はいる獣達と数匹とはいえ話す毎日。そこには、獣以外にも人が来たりする。特に来るのは、やはり兄弟の業と冷だった。茶紀にとっては、二人が傍にいてくれるだけで心の支えになっていた。だから、この仕事を苦痛に思ったことは一度もない。今日も食事を終えた後、直ぐにここに立ち寄ってくれた。
茶紀は、周りをタマゲタケやクルマユ、モンメンら数匹に囲まれながら仕事をしていた。悲しげに俯くタマゲタケに丁寧に話しかけている。その近くでは、大きな人の体ほどの太さの木の根に腰かける冷がいた。黙って茶紀の仕事を見ている。
一方、業の方はそれは楽しそうに向う側で数匹のメラルバ達と遊んでいた。今朝方までいつもと同じようにお菓子作りに没頭し、夕食を過ぎた今もまだ元気に遊んでいる。前の件が聞いたんでしょうか、と冷は心の中でぽつりと思った。その直後、見ていた茶紀が冷に振り向く。
「この後は、今日もプリンを食べるの?」
苦笑いをしながら微笑む茶紀に冷もたじたじ口を開く。
「そうです。今朝も業が大量に作っていたので…流石に試作品をフレイム王様や皆さんにお出しするわけにはいかないでしょう」
溜息を漏らす冷にそれでも笑顔で、手を叩くと茶紀は続ける。
「でも昨日のプリンは絶妙なテイストだったよ」
言った茶紀に冷は反感することはなかった。確かに、昨日のプリンはここ最近食べた中でとてもおいしかったのだ。業がお菓子を作ることは、今まで確かに沢山あった。でも、リバリー国の王様の付人である少年、タキと友達になってからそれは頻繁に作るようになったのだ。彼が帰った後も何故かプリンだけをずっと作り続けている。
茶紀は、メラルバと遊ぶ業を見つめながら続ける。
「業は一番料理が苦手だったのにね。覚えてる? 僕らが執事になるまで、業は学校で料理の授業のときだけ脱走して、じいやに怒られてた頃があったよね」
「懐かしいですね…僕ら三人でグループ一つでしたから、日に日に与えられていたポイントが減っていって大変な事になりかけて…」
「そうそう! 結局、最後は業がそれを知って頑張るようになったんだよ」
くすくす二人で業に聞こえないようひっそりと笑い、茶紀は改めて業を見た。一匹のメラルバが、業の背中に着いており、バッグの様に見える。
「今の業はそのときと同じ感じがする。何か一点に集中して…あの頃に戻ったみたいに、今まで以上に生き生きして見える。僕もそんな業の役に立てたらって思うんだ」
だから、彼が頑張った証であるプリンを毎日食べる。業に指図されてではなく、自らの意思でそうする。時には苦く、時には甘く、一口頬張るたびに業がどれほど頑張っているのかがわかる。そして、内緒で獣達と食べて業が作ったのだ、と言い美味しそうに食べる獣達の顔を見て一緒に業を応援する。
思いにふけながら、業を見ていると何かを探すように左右上下に辺りを見回し、こっちにやってくる。それに気が付いたメラルバ達も、のそのそと業に着いてきた。
「なあ、茶紀。あの花ないのか? 毎年咲くやつ。オレンジ色で、尖った花弁のとウルガモスの羽みたいな花」
「もしかして…太陽の花のこと?」
言いながらタマゲタケの頬を撫でる。
「太陽の花が咲いてるんだったら、業の周りにいるメラルバ達はウルガモスになってるよ」
聞いて顔を真っ青にする業。きっと、自分の周りのメラルバ達が一斉にウルガモスになっているシーンでも想像してしまったんだろう。茶紀は続ける。
「それに、一般的に咲く太陽の花の形がウルガモスの羽に似てるんだ。二つの花びらが尖った方は、滅多に見られないんだって」
「ふーん。それじゃあ、俺達が学校の最後の試験前に見た花は、俺達が合格出来る確率と同じくらい貴重だったんだな」
言った業の言葉に二、三度瞬きをすると、茶紀と冷は顔を合わせて腹を抱えながら笑い出した。二人で話していた昔話を、遠くでメラルバと遊びながら聞こえていたみたいに、同じく昔の話を振られた。いつも耳にタコが出来る程、何度も業が言うように本当に僕ら三人は、三人で一人なんだと思ってしまう。
なんとか腹の底から湧きあがる笑い声を押さえる。冷は、それでも口元を緩ませながら腰かけていた太い根から離れた。
「そろそろ行きますよ」
「うん、少し待って」
冷と業の元から離れ、茶紀は木の実の生る木々まで行く。そこには、ヤナッキーとバオッキー、そしてヒヤッキーが座って木の実をすり潰していた。潰した木の実は、明日の獣達の食事として使われる。いつもは茶紀とヤナッキーでやっていることだが、今回は二匹が手伝ってくれたのだ。
「三人とも、もう遅いから部屋に帰るよ。今日はありがとう」
「ヒャキー!」
三匹ともいやいや、と首を横に振りながら擂り潰した木の実を袋に入れる。茶紀もヤナッキーの隣で木の実を拾う。が、突然地面から天井に上るように丸い印が駆け巡り、地響きとともに周りが揺れ出した。木々の上からは、まだ収穫していないモモンの実やオレンの実が落ちてくる。
気が付いたヤナッキー達は、茶紀の上から降り落ちてくる木の実払いのけ、彼の上に被さった。揺れが収まると、遠くから獣達の震える声や業と冷の声が聞こえてきた。
「っ!? 茶紀! そっちは大丈夫ですか!?」
「な、なんだ今の!? 地震か!?」
二人の声が聞こえる。よかった、無事みたいだ。茶紀は、直ぐにヤナッキー達を連れて二人の元へと向かう。折角の木の実だって気にしている暇などない。
木々を抜けると、そこから床はびっしりガラスの破片が散っていた。上を見上げれば天井から曇りのない星空が見える。急に鳥肌が立った。本当に二人は無事なんだろうか。茶紀は、急いで二人の元へ走った。そこには、獣達と怪我のない業と冷の姿があった。きっと獣達が護ってくれたんだろ。
ほっと一息つくと、業はバオッキーの隣に着き、声を上げる。
「ここにいたら危ねぇ! 獣達を連れて城を出よう」
「そうですね、急いでいきましょう! 危険です!」
三人同時に頷くと、業はメラルバ達をバオッキーの肩や背に乗せる。タマゲタケやモンメン、クルマユらもヤナッキーとヒヤッキーが持ち上げた。業はそれを見ると、歪んだ扉に思いっきり蹴りを入れた。砂埃と共に重い扉が、廊下側へと倒れる。急いで廊下に出て見ればそこには4階の床が抜けて落ちた瓦礫が落ちていた。
皆で廊下を駆け抜けながら、茶紀は眉をひそめる。
「獣王の自己防衛か…」
「フレイム王様は大丈夫でしょうか?」
「カモミルラもいるし大丈夫だと思う」
瓦礫に躓きそうになりながら答える。運動神経の良い業は、バオッキーと先頭を走っていた。冷は茶紀の後ろを走っている。こういうときに、直ぐにバテやすいのは冷かもしれない。少しだけ息が上がってくる。背後からも冷の息が聞こえてきた。
「冷、大丈夫かい?」
「舐めないでください」
声をかければ少し怒り口調の冷の声が返ってくる。言うとおり、まだまだ大丈夫そうだ。茶紀が思い、業のあとを追うように駆けていると、急に背中を強く押された。弓なりのように背が反りずっと前に追い出される。勢いついたその速さに、足がついていくわけもなくその場にあった瓦礫の上に倒れた。
同じくして背後から砂埃が舞う。一瞬、喉が渇き張り付く感覚がした。細々と出来た両手の擦り傷も気にならないくらい、茶紀は新たに出来た瓦礫を跨いで冷のもとへと向かった。
「冷っ!!」
喉元から口へ、ようやく声が出た。茶紀の異様な叫び声に気が付いた業も、直ぐにバオッキーと共に廊下を戻っていく。二人が付いた時には、ぐったりと横たわる冷の傍で泣くヒヤッキーと、心配そうに見守る獣達の姿があった。
茶紀は、急いで冷の上半身を肩から持ち、仰向けにさせようとするが冷は顔を痛みに引きつらせながらくぐもった声を上げた。驚いてそれ以上動かないようゆっくりと、同じ体制に戻す。すると、涙声で鳴きながらヒヤッキーは冷の足元を指差した。その先を見て、茶紀も業も唖然と言葉を失った。
落ちてきた瓦礫に足を挟まれてしまっていたのだ。両足からは、瓦礫に潰されながら血が滲み出ていて、床の煉瓦の作り目を沿って広がっていた。いつもへっちゃらな顔をして、なんでもこなす冷と過ごして、はじめてその苦痛に耐える顔を見た。茶紀と業は、とにかくいてもたってもいられなくなり、冷の両足を潰す瓦礫に手をかけ一気に持ちあげた。
人間二人の力でどうと出来るものでもなく、瓦礫は三人の体力だけを奪っていく。そんな主を見ていたヤナッキー達も背負っていた獣達を離し、瓦礫に手をかけ持ち上げた。何度やって微動だにしない。何度も何度も瓦礫を持ち上げようとしていると、冷が震えながら上半身を軽く持ち上げて茶紀に声をかけた。
「僕に構わず…二人はっ、獣達を連れて先に逃げてください」
「何言ってんだ!? そんなこと出来るはずないだろ!!」
茶紀の隣で業が必死にそう叫ぶ。そんな業には目を合わせず、茶紀だけを冷は見つめていた。業に言っても、聞かないことを冷は知っているからだ。それでも、そうだね、なんていつものように軽く言うことが茶紀にはできなかった。茶紀は、額に浮き出た汗を拭い答えた。
「冷も放っておけないけど獣達も逃がさないといけない。ここは、僕にまかせて! 業は、獣達を連れて逃げるんだ」
「けどっ!!」
「大丈夫! 冷を助けたら、絶対に後を追うよ」
大丈夫。そうまた付け足し茶紀は、業に微笑んだ。それでも、業を見つめながらずっと微笑んでいられなくて、茶紀はすぐ瓦礫に向き合いヤナッキーとヒヤッキーと共にまた瓦礫を持ち上げようとした。
見てられないよ、あんな心配そうな顔。背後からは、獣達の声と業とバオッキーの足音が聞こえた。段々と遠くなっていく足音に、さっきの悲しそうな顔が浮かぶ。ごめんね、業。絶対に、絶対に冷は助けるから。
======
1階廊下、救護室前。突然、地面から丸い斑点の模様が上へ上へと城を駆け抜け、地震が起こった。ベラは、共にいたタブンネとアーチ、そしてアーチの相棒であるハハコモリと戸にそこにた。
城に起こったこの反応は、フレイム王様を護るために獣王が行った自己防衛。フレイム王様と獣王は、昔、ある契りを果たして獣王は自らフレイム王様の獣になったと聞いたことがある。この反応が起こったということは…。腰に手を当ててベラは話し出す。
「フレイム王様に何かあったね…」
「フレイム…君たちは何か知ってる」
突然聞こえた男声。アーチのものではないその声に、ベラは眉間に皺を寄せながらその主を目で辿った。廊下の奥から瓦礫を身軽に飛び越えて姿を現す。緑の髪に左目。隣にはバイバニラやレパルダスを連れていた。
ふぅっとため息をつくとベラは静かに青年を睨む。
「アンタかい…こんな事したのは」
威嚇の目など気にせず、青年はベラとアーチをただ見つめていた。すると、包帯に覆われていない左目に一滴涙を流す。
「僕は友達を救いたいだけ…僕と同じ彼らを全部」
「うーん…ちょっと何が言いたいか分からないけど、君の仲間がこの城のどこかにいるってことなのかな? それにしちゃーやり過ぎだと思うけど」
急に涙を流した彼がこれ以上涙を流さぬよう穏やかに話す。それでも、気は抜いていない。彼が何かしたのは、アーチにも解っていた。アーチの警戒に気が付いた青年を護る獣達も、戦闘態勢に入っていた。彼は続ける。
「僕の夢は、この世界にある全ての獣を救う事。それにはまず、僕と友達の呪縛を解放しなければならない。だから僕はここに来た」
言いながら青年はベラに目を移し、優しく微笑んで見せた。
「君はタキと同じ感じがする。だから僕は君を殺めたりはしない」
そう言うと、彼は背を向け元来た道へと戻っていく。しかし、彼が瓦礫の上に登ったそのとき、見ていたアーチは声を張り上げた。
「ちょーと待って。僕がなんか危なそうな人を勝手にこの先に行かせると思うのかい? ハハコモリ!」
言われてアーチの隣にいたハハコモリが青年の方へ駆けていく。周りにいた青年の獣達も咄嗟に身構えるが、それを青年は右手で静止するとすっと息を吸い込んだ。
「『お休み ハハコモリ』」
その言葉を耳にしたアーチのハハコモリは、赤い瞳を細めるとその場にばたりと倒れて寝息をたてはじめた。青年が一言声を上げただけなのに、それだけでそのとおりにハハコモリは眠りについてしまった。ベラもアーチも瞬きを忘れてその光景を見ていた。
近くにそういう技を使う獣がいるわけでもない。ハハコモリを眠らせたのは間違えなく彼だった。
「なんで急に…!?」
ベラの声を聞きながら、アーチはすぐに眠りについてしまったハハコモリに近づき抱き寄せた。その姿を青年は瓦礫の上から見つめる。
「獣を救う人を殺めたりしない。タキも君にも手を出したりはしないよ」
言いながら青年は瓦礫の向う側へと降りて行ってしまった。その後をバイバニラやレパルダスが追うようにして着いていく。行ってしまった、青年を追おうと立ち上がったアーチにベラが後ろから声をかけた。
「アーチ、追うのはやめときな。私達の力じゃどうにもなりゃしない」
「だけど彼をそのまま放っておくとヤバい気がするんだ。嫌な予感しかしない」
「今日はソウチクも来てる。だから先に茶紀達の様子を見に行った方がいい。きっと3階にいるから侵入者が入ったことなんて気づいてないだろう」
「わかったよ、ねぇさん」
悔しそうに言うとアーチはハハコモリを抱いて、ベラの元に向かった。すると突然、救護室の扉からイリスとヒメが姿を現した。
「イリスちゃん! ヒメちゃん!」
声をかけられたヒメは、口をへの字にして目尻にいっぱい涙を溜めていた。今にも泣きそうな彼女の肩を借りていたイリスは、そこからずるりと体がすり落ちる。血塗れのイリスに気が付いたベラは、タブンネを連れてイリスの元へと向かう。
「ちょいと見せな」
真っ青な顔のイリスに一言そういうと、ベラはゆっくりと左手を持ち上げた。同時にイリスの顔が痛みに歪む。肩が外れ、手の甲から指は殆ど砕けているように見える。こうなってしまえば、タブンネの癒しの力を使ってもどうにもならない。
まったく誰がこんな酷いことをしたのだろうか。さっきの青年なのか。もしくは、他にも仲間がいたのか。
「完璧に粉々だね…」
難しそうな顔をするベラを弱々しくイリスは笑って見せた。
「っ…どうせもう治ったりしないわ。こんな重いモノ…早く千切ってちょうだい」
「ちょっと何言ってんの!?」
いきなり行儀でもないことを言ったイリスにアーチは慌てふためいていた。多分、アーチにとっては手は掛け替えのない宝だ。そうでなくても、人間が前に進むために道を作り出す手を千切ってなんて言われたのだ。信じられないとこうなってもおかしくないだろう。
それでも、もう決めていたことのようにイリスは黙って口をつぐんだままだった。全くしょうがない子だね。
「分かったよ。アーチ! イリスをおぶりな! 街へ避難するよ」
「え!? 茶紀君達は!?」
「それなら私に任せて!」
今にも泣きそうになっていたヒメは、顔を強張らせながらも真剣な表情でそう言った。ヒメは暗がりの空に両手を伸ばし続ける。
「スワンナが近くを飛んでる気がするの! 合流して茶紀君たちを呼んでくるよ!」
「そうだな。今は可愛い子ちゃんに任せるしかないか…」
アーチの声にヒメは頷くと、空から目を離し救護室近くにある階段へと走った。姿を見ていたイリスは、霞む目の前で揺れる桃色の髪のヒメに、頑なに閉じていた口を開く。
「ヒメ…業達をお願い」
「うん! 任せてイリスちゃん!」
はきはきした声でそう伝えると、ヒメは急いで階段を昇りはじめた。階段は所々崩れたり歪んだりして形が変形している。さっきまで、イリスと一緒にダリアンに教えられた細い通路は、揺れはあったがこんなに崩れたり歪んだりはしなかった。
2階までくると、ちょうど3階に向かう階段が瓦礫に阻まれていた。3階は、相当瓦礫で埋もれて酷いことになっているのかもしれない。ヒメは、瓦礫に手を付け力いっぱい持ち上げる。こんなに大きいものをヒメの力でどうにかなる事もないだろう。それでもずっと同じことを繰り返していた。
「ん? ふぁ? いる!」
一人でぽつぽつと話だし、瓦礫に背を向けるとヒメは2階の廊下窓際から上空をじっと眺めた。そこからは、白く大きな翼を広げて飛ぶスワンナの姿が見えてくる。スワンナは、ヒメを見つけると一声鳴き、ヒメの元へと降り立った。広げていた翼を折りたたみヒメにすり寄る。
ヒメもギュとスワンナの顔に抱きつく。
「無事だったんだね! よかったッ! よかったよぉッ!!」
鼻声でそう言うとヒメはスワンナの頭を撫でてから3階への階段を塞ぐ瓦礫を指差した。
「スワンナ! あの瓦礫をなくして!」
「スワォォ!」
指示されたスワンナは、ヒメの元から離れ長いくちばしからハイドロポンプを放った。強い水圧を受けた瓦礫は、階段を削りながら真っ直ぐ吹っ飛んでいく。階段奥の壁に留まった瓦礫を確認するとスワンナは、ヒメの元で首を下す。
屈んだスワンナの細い首元に触れながらヒメはスワンナの背に乗った。重みを感じたスワンナは、何度か翼を羽ばたかせて宙に浮く。
「3階まで行こう!」
ヒメの言葉に頷きスワンナは瓦礫のなくなった階段の上を羽ばたきだした。3階に着いたスワンナは、大きな瓦礫を綺麗に避けながら進んでいく。
「おぉーいッ!! ヒメ!」
業の声だ。ヒメはスワンナの上から真下を覗く。すると、そこには業とバオッキー、獣達の姿があった。瓦礫を昇ってこんな近くまで来ていたのだろう。スワンナは業の近くに着する。
「業君、皆は?! 皆は無事なの?!」
スワンナの背から降りて業の傍に駆け寄る。業は、下唇を噛み締めるとバオッキーの肩にいたメラルバをヒメに手渡し続けた。
「それより、この獣達を外に出してやってくれ!」
「あ、うん! 了解!」
バオッキーの背や近くにいた獣達をスワンナやヒメの背に乗せていく。不思議そうにしているヒメに頼んだ、と言いバオッキーと共に瓦礫に這い登っていく。
「ちょっと、業君! 何処行く気?! 戻ったら危ないよ!!」
「まだ、茶紀と冷が中にいるんだ! 俺は二人を迎えに行ったら、絶対に戻るから…」
「バオキッ!!」
言ってそのまま業は、瓦礫の向うへと行ってしまった。ヒメはスワンナに乗り急いで後を追おうとするが、震える小さな獣達を見て思いとどまってしまった。こんなに怖がっているのに、また戻ろうなんて言いだせない。ごくりと息を呑むとヒメは悲しげに空を見た。
「スワンナ…この子達を連れて街に逃げよ」
指示されたスワンナは、獣達が落ちないようゆっくり翼を広げ3階の窓から上空をに向かう。ヒメは空から業を見るとそのまま街へと羽ばたいていった。
======
瓦礫の多い廊下を抜け、城の中側に入り、ここはちょうど中心部になるのだろうか。緑に茂る草木が連なるそこに、ハルモニアはただじっと見入っていた。眠っている花の蕾が沢山ある。
「この庭……なんだろう…悲しい」
傍に着いてきたバイバニラやレパルダスも一足遅れてやってきた。レパルダスは背を伸ばすとハルモニアを見つめる。
「ふっ…うっ……」
どうしたんだろう。急に涙が止まらなくなった。心配したレパルダスがハルモニアの足にすり寄ってくる。何度涙を拭っても涙は止まることはなかった。ふいに出てくる光景。でも、それは直ぐに消えてレパルダスやバイバニラしかいなくなってしまう。
あの人たちは誰だろうか?
僕は一体何者だったんだろう。化け物だったんだろうか。今の光景はなんなんだろう。あれは紛れもなく僕だった。あの緑の獣はなんだろう。長い旋律を奏でる髪。僕と同じ髪。
僕に似た男の人。あんなに楽しそうに笑ってた。
こんなの知らない。きっとこのサザン城にかけられた幻だ。
ハルモニアは、俯いたまま地面に向かって声を張り上げた。
「『幻は消えて! 本当を僕に見せて!』」
鋭い雷光の様な旋律がハルモニアの周りを包む。しかし、見えてきたのは先程より鮮明な彼らだった。
[見てごらん。これが花だ]
優しくそう言うのは、ハルモニアが少し老けた様な人間だ。彼は手に持ったオレンジ色の花を小さな緑の髪の少年に渡している。二つの花びらから成る、尖った耳の形をした花だ。右目を覆った包帯や両手足を見ると、どんなに否定してもあれが自分だとわかる。
[はな?]
獣のように唸りながら、人間の発音を真似ようとしている。
[そうだよ。この花は太陽の花と呼ばれてるんだ]
説明をする男の周りを緑の髪の獣が一回りすると、次は小さなハルモニアの近くまで来てにっこりと微笑みつづける。
[(『眩き太陽の花は、人々や獣達に全てを与える。優しさ、笑顔、希望、そして勝利。太陽の花咲きしとき、そこに優しさが生まれ、笑顔が生まれ、希望が生まれ、勝利が生まれる。これは、神様が我々獣や人に与えた奇跡』)]
緑の獣の言葉を聞きながら、幼きハルモニアは首を傾げる。
[はな、さく、ちち、はは、まるくなる、さく]
片言に言葉を話す幼い自分。それを見て嬉しそうに微笑む男と獣はどこからどう見ても親子の様にしか見えなかった。
[(そうですね。貴方が良いことをすればそこにこの花が必ずあります。ですが、貴方が間違った道へ進もうとすればきっとこの花たちは教えてくれます。真っ暗になって教えてくれますよ)]
ほら、そこになにもないでしょう?
そう言い緑の獣がハルモニアに指を指す。驚いたハルモニアは、自分の両手を見つめるとすぐに庭を見まわした。綺麗な花が沢山咲いているが、今は夜なのでみんな眠っている。だが、分かる。ここには、太陽の花はない。
なら僕は間違ったことをしようとしてるのか?
いや、違う。絶対に違う。
僕は間違ったことはしていない。
だって、夢を叶えるにはこれしかないんだ。
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「うっ…!! 駄目だっ、動かない」
汗だくの茶紀とヤナッキー、ヒヤッキーは声を荒げながら瓦礫を押し上げていた。業と獣達の行ってしまったあと、何度も何度もやったがぴくりとも動かなかった。獣の力で瓦礫を崩そうとも考えたが、そうしてしまえば一気に冷に崩れた瓦礫が降ってくることになる。
体の芯から熱くなってきた茶紀は、黒いジャケットを脱ぎ捨てYシャツの袖を捲くり、また瓦礫に手を付ける。両手に出来た切り傷に、今日に限って手袋をはめていなかったことを不覚に思った
ヤナッキーとヒヤッキーに掛け声をかけながらまた瓦礫を持ち上げる。力いっぱい持ち上げて、腕がはち切れそうになったら一旦、瓦礫から離れる。何度同じことをしてもやはり少しも動かなかった。疲れから呼吸の乱れる茶紀に、冷は俯せのまま声を出した。
「もう、ここが完全に崩れるのも時間の問題です。茶紀も早く逃げてください」
「そんな……無理だ」
そんなこと出来ない。
「無理じゃ駄目です。さあ、ヒヤッキーを連れて早く逃げてください!」
名を呼ばれたヒヤッキーもそれを聞いて激しく首を横に振る。唇を噛み締め俯く茶紀に、冷は舌打ちをすると残った力で上半身を起こし、ぎらりと茶紀を睨んだ。その目に茶紀も二匹もびくりと体を震わせる。冷は、大きく息を吸い上げる。
「迷ってないで早く行きなさい!! 僕は…茶紀や業が消えてしまうほうが恐ろしくてたまりません…!」
「俺だってそうだ!!!」
急にさっき一人行かせたはずの業の声が聞こえてくる。茶紀も冷も驚いて走ってくる業を見た。ヤナッキーとヒヤッキーも唸るバオッキーを見て驚いている。肩で息をする業に冷は、悲しそうに目を細め震えた声で続ける。
「どうして!? なんで戻ってきたんですか!」
「お前達の事…放っておけるわけないだろ」
言って業は、茶紀と同じようにジャケットを脱ぐと袖を捲くって瓦礫に手をかける。バオッキーもヤナッキー達に頷くと瓦礫に手をかけた。そして一気に力を入れ持ち上げる。足腰を踏ん張り、手や顔が赤くなるほど力を入れる。
二人と三匹で瓦礫を持ちあげていると、急にガタガタと小さくまた城が揺れ出した。天井から小石や砂埃が落ちてくる。余震だ。業は歯を食い縛りありったけの力で押し上げる。
「うっごけーッ!!!」
「ひゃっきッ!!」
余震がきたのに、皆、瓦礫から手を離すでなくただ動かすことだけに集中している。嫌だ。皆がいなくなるなんて、嫌だ。冷は、冷えた手をぎゅっと握りしめる。
「二人とも早く逃げて! もう僕に構わないでください!!」
力み過ぎて無くなってしまった力を補充するのに、茶紀と業は息を荒げて瓦礫から手を離した。そして、呼吸を整える茶紀の横を業は通り過ぎると、冷の顔に合わせべたんと座り込んだ。
「……なんで、そんなこと言うんだよ…」
ぼたぼたと大きな涙が業の頬を幾つも伝っていた。茶紀と冷が驚く間もなく、業は大口を開いた。
「遊ぶときだって、勉強するときだって…っ! 料理も掃除もっ…今まで一緒にやってきたじゃねぇーか!!」
まだ息も整えていなかっただろう、業はそんなことも忘れて冷に叫んでいた。喉が痛い。ぜぇぜぇと呼吸を荒げ、少し咳き込むと業は揺れる天井に叫んだ。
「俺達は絶対に欠けたら駄目なんだ! なのに…っ、なのにっ、一人になろうとかすんなよっ!」
最後にそう言い放つと、業は赤ん坊のようにわんわん声を上げ泣きはじめた。ああ、一番心配しやすいのは業だった。茶紀は、ちゃんと物事を考えているようで自分の感情が絶対なところがあった。
僕は、なんでも出来るようで、なんだかんだ言って嫌な事でも自分の感情は出さないようにしていた。前に茶紀にそのことで注意されたことがあった。自分の感情は隠しちゃ駄目だよ、と。最後まで隠せていたと思ったのに…肝心なところで業も茶紀も見破るんだ。
一緒に居たいって。怖いって。寂しいって。痛いって。
冷は、大声で泣く業を片手で抱き寄せると、参った顔で口元を緩めた。
「まったく…業も茶紀も……大馬鹿者ですよ」
ぽつりとそう言った冷と業を覆うように茶紀は彼らを抱き込んだ。ヤナッキーやバオッキー、ヒヤッキーも輪になり微笑む。茶紀は、へへと声を漏らし笑むと冷と業の頭を強く抱きしめた。
「ああ、僕達は…いつでも三人そろって大馬鹿者だよ」
茶紀と冷と業は、三人でそう言い涙を流した。そして、彼らの滴が頬を伝って落ちる時、大きな瓦礫もポロリと涙を流した。
24に続く…
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October 10
学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ
ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。
▼スタ
September 20
学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ
いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
お気軽にこちらへお返事を…
→kokoyozuyozu@mail.goo.ne.jp