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遅くなってしまいましたが…
出来ました!
4話です! よろしくお願いします!
では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公、BW小説です。
・↑は公式名ではありません。「公式名じゃなきゃ嫌っ」という方はご遠慮ください。
・誤字脱字、文章を見て「あっ」と思った方はメールでお知らせくだされば幸いです。
・感想…くださったら大喜びします///
・前回の1stのお話と少し繋がりがある…かも
・ゲームをまだやってないかたは、ちょいネタバレを含みます。
・ぜひ! HPの方にも遊びに来てください!!
以上が注意事項です!
では、ご理解くださった方は下記から 4 をお楽しみください。
出来ました!
4話です! よろしくお願いします!
では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公、BW小説です。
・↑は公式名ではありません。「公式名じゃなきゃ嫌っ」という方はご遠慮ください。
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・感想…くださったら大喜びします///
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・ゲームをまだやってないかたは、ちょいネタバレを含みます。
・ぜひ! HPの方にも遊びに来てください!!
以上が注意事項です!
では、ご理解くださった方は下記から 4 をお楽しみください。
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アララギ博士のポケモンであるチラーミィとキョウジの起こした事件。小さいながらに伝達力はあるカノコタウンには、すでに町の人々にその事件の一部始終が流されていた。発作の出たタマキは、チェレンが母親を呼んできてくれたおかげでなんとか助かった。医者のいない病院で一日休むことになったタマキは眩しい光に瞼を開ける。
頭痛の止んだすっきりした頭が周りの景色を読み取るのにもそう時間はかからなかった。がっしりして丈夫なベッドだと思っていたのは案の定病院の長椅子だった。あのまま廊下で寝てしまったのかと長椅子に座り直し、身体を抱き寄せる。春先の朝、感じるのが陽の光以外に寒さとは…。
寒さに身を震わせながら右肩を上下に動かしてみる。昨夜まであった関節の痛みも無くなっていた。毎度これを味わうのだけは勘弁してほしいと心底思う。うんと背伸びをして立ち上がると静かに自分の病室の扉を開いた。
突然開いた扉に自分以外にいた病室の男が震えあがる。手にはリモコンを持っていた男はタマキを見るなりそそくさとそれを隠した。昨日の事で相当、驚かせてしまったようだ。
臨時速報とかいうのでいきなりニュースが入った。あの時、はじめてテレビを長く見た気がする。父さんのいた頃はちょっとした幼児向け番組を決まった週に見てたけど、父さんが出稼ぎに向うへ行ってしまってからは何も見れなかった。
思い老けて自分のベッドに横になると静かに男の人に声をかけた。
「昨日は本当にすいませんでした。家、テレビは見ちゃいけないって決まり事があるんだ」
居辛そうにしていた男もそれを聞いてようやくタマキを見た。
「そっか…お前の家、厳しいんだな。母さんもおっかねぇ人だし…逆らいたくても逆らえないってやつか」
「いいや。逆らってみようとはするんだけど、その度にいろいろ先回りされてるっていうか」
「どんな?」
「電源抜かれてることは散々。俺の部屋は二階にあるんだけど、リビングに降りた瞬間からロックオンされてる感じで」
こっちは真剣に話しているのに男はそれを聞いて声を殺して笑っていた。散々笑った後に男は続ける。
「自分の部屋にテレビ置いてないのかよ」
「あったけど小学1年の秋にコンセントをハサミでばっさりやられた。今は置いてあるだけ」
言いきったタマキに男は腕を組む。
「お前、歳は?」
「誕生日終わって、もう12歳」
「それじゃあ、お前って6年間も社会的情報経ってきたってわけ?」
「失礼だな。もしそうでもちゃんと勉強はしてきたさ」
それに6年間じゃなくて12年間だ……なんて続けて言うこともできず、タマキは出そうになった言葉を噛み殺した。男はそんなタマキの姿に気づきにやりと笑む。
「いいよなぁ。それってこれから見るのも感じるのもはじめてって事だろ。12歳なのにぃなーんて言う奴らもいるかもしれないけど」
「まずお兄さんみたいな見かたする人なんて今いないだろ」
苦笑いをするタマキに男は続ける。
「昨日さ、おまえ、母さんから旅に出ないかとか言われてなかったか? 行けよ。絶対に楽しいって」
「どういう意味?」
反射的に問いかけたタマキの声を聞きながら男はリモコンを隣にある棚に置く。
「旅ってのはさ、おまえが今まで見れなかったものも、ここじゃ見れなかったものも全部感じることが出来る。良く言えば夢が膨らんで、悪く言えば夢が消えてくそんなスリルを味わえる」
「夢が膨らんで消えるって最悪だろ」
「さて最悪なんだろうかな」
さっきと同じように男はまた腕を組むと大きく息を吸った。
「知らないだろうが芸能人でマミちゃんっていうのが今人気あるんだけどよ。この子、カナワタウン出身で旅してようやく自分の夢を見つけて…今現在に至ってるんだ。見えない自分の才能が分かる。それが、夢が膨らむってやつ」
男の話を聞いているタマキもじっと動かず彼だけを見ていた。彼はその目線を感じながら続ける。
「だけどよ、成れる人ってのは笑えるくらい決まっちまってるもんでよ。たとえばお前が芸能人に成りたいって思っても、カノコタウンのお前の家に生まれたんじゃ才能は有ろうとマミちゃんのような芸能人には慣れない。その現実を知る。それが、夢が膨らんで消えるってやつだ」
最後の言葉を聞いてタマキは、体制を変えベッドの上で体育座りをすると小さく笑った。
「お兄さんよ。良いこと言ってるけど、俺にはちょっと生々しいんじゃない?」
まだ小学六年の自分に言う事ではないだろう、とこんな歳のくせに思ってしまう自分も相当変だが、それ以上にこの男が12歳という自分にこんなことを言っていたのに対して変な感覚を覚えていた。
そんなタマキの思いも態度もすぐに分かってしまったのか、大人である男が慌てて首を振る。
「おいおい、俺がお前にこんな話してるのはお前が情報知らずでも人間出来てるから言ってんだ」
聞いたタマキはふーんと生返事を返すだけで男に反抗することもしなかった。人間出来ている…か。身内や幼馴染に迷惑ばかりかけている自分が、果たしてそんなに出来た人間と言えるのだろうか。男は話を続ける。
「でもよ、旅して気づくもんやすでに手に入れていた、なんてものもある。芸能人っていう有名どころには行けなかったが、話し上手で年取ったポケモンや人間の世話をするのに向いてるってのに気づいたり…。まあ…これがまた、夢が膨らんだってやつ」
男はひと段落つけると何かを思い出すように顎に手を当てていた。芸能界に入って有名な芸能人になりたかった人。それでも、自分がとことん歩いた道のりの先で見たものがこれ以上は無理だって真実だとしたら…。人はとことん落ち込むだろう。足掻く人は足掻きまくる。
足掻いた先に、足掻く前にまた次に思い浮かんだ夢や希望があればまたそれが理想に繋がっていくんだろう。
だけど、自分はどうだろう。今まで自分が触れちゃいけない物に触れようと努力した。父さんが出稼ぎに行った時なんて「父さんを追う」とか言っておきながら、心のどこかで自分はようやく何にも囚われたりしない、自由を手に入れられるんじゃないかって馬鹿みたいに思ったりもしていた。
それから何も進展はない。いや、はじめから何も進んじゃいなかった。俺は持病に抗って、足掻いて足掻きまくったけどそこには何もなかった。野原を駆けだして、その先に見えるものは決まって同じ景色ばかりで…。だから、何度走っても同じならいっそのこともう諦めて家に戻ろうって思った。
自分の夢なんて願っちゃ駄目なんだ。その分、他の人達の願いが届くように。困っていたり、助けを求めているのなら手を。もっと高見を目指したいのならその人の台に…。そうやって逃げてきた。
俺は何も望んじゃいけない。食事をとって、寝るところがあって、家族や友達がいるだけで幸せなんだ…ってそう言い聞かせていたら、いつのまに自分の目から見る景色が少し高くなっていた。
「お前、包丁とか見ると駄目なんだろ?」
包丁。急に言われてドクリと心臓が脈打つ。考え事をしていたせいで何が起こっているのか一瞬分からなくなったが、青ざめた表情のタマキを見て男が一言「大丈夫か?」と声を掛けてくれたおかげでこの男と話していたと薄々思い出すことができた。
男はタマキが大丈夫そうなことを確認すると話しはじめる。
「どんなものかは大人が使ってるの見て初めて知る。物を切るもんだ。自分と同じ肉でも魚でも木の実でも切っちまう。そんでよ、ドラマとかで包丁で夫を指す妻を見たりするんだ。ああ、人間も切れちまうんだなってそのとき気づく。そして考える度に一層恐ろしくなる」
「…一回感じたり見たりしないと解んないんだよな、人間って」
「そうそれ! やっぱお前、子供のくせにすげぇわ」
「……話、長いんだよ俺より年上のくせに」
「ちょっ! 酷ッ!?」
冷たい言葉を吐かれた男は酷く落ち込む。言ったタマキも何も感じて無かったわけではない。お互い様だろうと心の中で思うタマキは、落ち込む男に続ける。
「説教っていうか、説明臭いから俺達くらいの歳のやつは皆ムカつくんだ。ああ、これ、俺がいつもクラス見てて思う感想な」
「生意気な奴だなぁ」
「それ! その言い方。これでまたムカついた奴はすげぇ反抗するんだよ。そこからまた説教、挙句、怒鳴り散らすんだよな。伝える方も受ける側の方もさ…まったく人に伝えるってのは難しいことだよ」
先程までの男と逆転してタマキがそう思い老けたように、うんうんと頷きながらぼやく。姿は子供なのにもう爺さんみたいな事を言って、背伸びをした子供にも見えない彼が男には不思議過ぎて思わず笑いが込みあがってきた。
「お前、本当に面白い奴だわ。大人になったらどう化けるんだろうなぁ…名前は?」
「タマキ。聞くの遅いよ」
「はっはっ! まあいいだろ。な? タマキ。おまえ、絶対に旅に出た方がいいって」
また振出しに戻った。苦笑いしながらタマキは男に視線を向ける。でも、男の顔はさっきとは違っていた。さっきは軽いノリで言ってたんだろう。でも、今は「行け。必ずそこに何かある」っと男の瞳が訴えかけているように思えた。
旅なんて駄目だ。またいろんなものに目移りしてしまう。それに、刃物だってポケモンだってそこら中にある。やっぱり他人に迷惑をかけてしまうに決まってる。
思い男から目をそらしたタマキ。丸くなるタマキの姿を見ていたら、何か若いのに随分と歳を取った人にも見えてしまう。本当にまだまだ若いのに勿体ないと少し溜息を漏らした。こんなになるまで誰もコイツの事を救おうとしなかったのかと感じると少し苛立ちさえ覚えた。そう言っても男がタマキの事を知っている訳じゃないので、これ以上なんと背中を押してやればいいのかもはっきり分からなかった。
お互い何も話さなくなってしまった。病室内に静かに時が流れていく。冷たかった朝も太陽が昇ってきたのか暖かくなってくる。しばらく経つとタマキは棚から上着を取り出し着替えはじめる。昨日、学校で着ていった服と鞄。空色のパーカーの背は、昨日キョウジに押し倒された時に着いてしまったであろう砂がまだ少しついていた。パパッと掃うとすぐに着替えた。
「おはようございます!」
病室の扉が開かれ母の声が聞こえてくる。男は少しびくりと体を震わせたがなんとか平然を繕って無理矢理笑っていた。そんな彼を見て母はすぐに頭を下げる。
「昨日はごめんなさい…カッとなっちゃって」
「いえいえ、いいですよ」
「本当にすいませんでした」
また一つ礼をすると母は、紙袋を手にタマキのもとにやってくる。
「昨日はちゃんと寝た?」
「うん、ぐっすり寝た」
廊下でなんてそんなことは絶対に言えないのでそれ以上は何も言わない。斜め掛けバックにお気に入りの帽子を被るとベッドから立ち上がる。そんなタマキの出で立ちを見て母は首を傾げた。
「ちょっと待って。そのパーカー、昨日砂まみれになってたでしょう?」
「大丈夫だよ。少しだけだったし。もう掃ったから」
「だーめ! せめてパーカーだけでも着替えてちょうだい」
母はタマキに有無を言わせず腕に下げていた紙袋から同じパーカーを取り出し突きつけた。仕方なく受け取り自分の着ていたパーカーを脱ぐ。
以前より大きな服を着る様になったタマキに改めて母は驚いていた。発作が起こるようになったり、ポケモンが苦手でお父さんは自分のポケモンをホウエン地方に連れて行ってまでタマキから遠ざけてきた。あの時は、まだ抱っこ出来るくらい小さかったはずなのに、今はちょうど自分がトレーナーとして旅に出たあの時と同じ年になっていた。目なんてあの人にそっくり。
旅で沢山の物に触れて、ポケモン達と触れ合った方がこの子は成長できるはず。私やあの人がそうだったように…。
着なおしたタマキは汚れたパーカーを紙袋に入れる。いつもより少し笑顔の無いタマキに母は静かに声を掛ける。
「旅…出るなら家に帰ってから答えを聞かせてちょうだい」
言われてタマキの動きが一瞬止まるが、簡単に聞き取ったような素振りでベッドの布団を綺麗に直していく。そんなタマキに母は続ける。
「自分の気持ちには素直になってね。チェレン君やベルちゃんを見てる時みたいに、自分の事もちゃんと見てあげて」
綺麗に整え終えたタマキは母に優しく微笑み答えた。
「旅って…そんな冗談もういいよ母さん」
「え?」
急にいつものように優しく笑み言うタマキに母は驚かずにいられなかった。同室の男も驚いてついタマキとその母を見ずにいられなかった。タマキは母が持っていた紙袋を持ち言う。
「昨日は発作が起こったからついつい弱くなっちゃったっていうか…。だから昨日の事は忘れてよ、母さん。二度とあんな弱ったりしないからさ」
「タマキ…!」
「俺が旅なんか出来るわけないだろう」
笑みを絶やさずにそう言い切るとタマキは母の手をとって病室の扉を開けた。同室の男にお辞儀するとそのまま去っていく。このまま、アイツを放っておいたらどうなってしまうんだろう。そんなのは誰だって分かる事だ。楽しくねぇだろ、そんなの。
男はベッドから起き上がって病室の扉を開ける。廊下を歩いて行くタマキと母親を見て男は大きく息を吸った。
「タマキ! はじめてやる事だって、同じようにまたやる事だって皆絶対に最初は怖いんだ」
廊下に男の声が響く。驚いて振り向いたのはタマキの母親だった。何が起こっているのか分からない母はタマキと男を交互に見ている。ここまでいいに来るとは思わなかったんだろう。タマキも少しだけ顔をこちらに向けた。
「自分に負けるな! 出来る出来ない、やるやらない。決めるのは全部お前だ! もしお前の中の何かが出来るわけないって言ってて、そいつの言うとおり何もしないで違うことして…後で後悔してもそいつのせいじゃないぞ? 自分のせいなんだからな!」
折角向いたタマキの顔が俯く。何か迷っているのか下唇を噛んでいた。目なんてうろたえていて焦りが見える。素直になってしまえばいいのに。男は思う。
「理想があっていいじゃないか。真実を知ってしまってもいいじゃないかよ…。今は真実を知っちまって理想を変えちまう人間なんて沢山いるけどな…でも、真実だって変えることはできんだよ」
男の声がまた廊下に響く。他の病室にいた女性や子供が出てきた。タマキはハッとそのことに気が付き母の手を引く。
「母さん、行こう…」
「え…そう」
母はタマキに手を引かれながら男にまた頭を下げ、そのまま階段を下って行ってしまった。男は少し咳き込むと病室に戻り窓辺から病院を出てくタマキを見つめる。
世界は広いんだ。一歩踏み出せば全部が新しい物なんだぞ、タマキ。お前も一歩踏み出してみろよ。
「あいつ…どんなポケモントレーナーになるんだろうなぁ」
ぽつりと呟き男はまたベッドに戻った。
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1番道路の水辺を渡り、18番道路前の電光掲示板を通ったところには特に何もなく、ただありのままの自然と不自然な急流が続く。その場所に多くの人々が集まっていた。暑苦しそうな普通の人は着ないであろう白い服を着る人達の胸にはPの文字が刻まれていた。
ここまで来るのにもヘトヘトナな彼らにリーダーであろう人間が叫ぶ。
「アンタ達! ボサッとしてないでちゃんとしなさいよ!」
「すいません!」
叫んだ人間は女だったようで声は華奢な感じがした。体つきも細く、他の人達よりアレンジされた服を着ている。黒のレースが多彩に使われておりなんだかゴスロリ服にも見えた。しかし、それでも胸のPの文字は入っている。
「ここから先、研究所までは電波が全く通ってないわ。気を緩めてたら死ぬわよ」
無理やり他の人を連れてきてしまったのだろうか。女を見て焦る男が出てくる。
「しかし…先程までN様も一緒にいましたし…」
「研究のことは…」
「馬鹿ね! あの研究はプラズマ団の科学班と七賢人様方しか知らないのよ。気づかれる訳ないじゃないの」
散々怒鳴り散らし、息を整えると女は口紅を取り出してササっと塗って見せた。こんな場所で見ている人もいないだろうましてや仕事中にも関わらず女はメイクを直していく。そして一通り終えるとようやく話し出す。
「それより問題はレシラム捜索よ。体と魂が別々になってるなんてとんでもない話だわ」
「でも情報をくれたのは黒い三人組みでしょう? あの方たちを信じてもいいんでしょうか。ゲーチス様も信じていらっしゃいますけど」
「はっ! これだから新人は駄目なのよ。いい? あの三人はゲーチス様の御用達なのよ。何考えてるかさっぱりわからないし…とにかく情報屋なのよ、情・報・屋! 動くとか面倒な事は私達に任せておいてね」
「御用達って…」
そんな言い方はないじゃないかと言う集団を放って女はフムと腰に手を当て急流を見つめる。
「体はゼクロムと同様にシッポウ博物館にあるとして、問題は魂の方。切り分けられちゃった理由すら教えてくれないなんて、ホント! 御用達めッ!」
「だから御用達って言うのは…」
「ああ! そうか! わかりました! この場所はめぼしい物なんて全くないと言われているからもしかしたらレシラムの魂もここにあるかもしれないって思ったんですね! 凄いです、コールダさッ」
合点のいった同じPの文字を胸に刻む女が口達者に話していると、コールダと呼ばれた女は頭に思いっきり拳骨を食らわせた。殴られた女は頭を抱えてその場に座り込む。その光景を見ていた集団にコールダは睨みを利かせる。
「一般人に聞かれていたらどうするつもりよ! そんなに大声出さないでちょうだい!」
「さ、さっきは大丈夫って言ったのに…」
「なに?」
「ヒィッ!」
睨まれた他の人達が恐ろしさに一歩後ずさる。そんな彼らを見て鼻で笑うとコールダはモンスターボールからハーデリアを出現させる。
「さあ、行きましょう。レシラムの体と御霊は必ず探し出して見せる。我らが王の為に」
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病院を出てあのまま真っ直ぐ家に帰ってきた。母さんに声をかけられたが返事もせずに今は自分の部屋の中にいる。きっと旅についてだろう。でも、さっき病院で言った通り。俺は旅になんか出ない。普通にここで暮らして学校に行って、大きくなったら父さんの所に行って働く。それでいい。
でも、そう思う程に同じ病室だった男の言葉が思い浮かぶ。
“真実だって変えることは出来るんだよ”
あの言葉を思い出すたび、もしかしたら、なんて期待をしてしまう自分が腹立たしく思えてくる。窓の外はまだ明るい。昼くらいだろうか。
自分を見る…か。どうしたら自分なんて見えるんだろう。鏡でも見てみようか。ちょっと馬鹿にしてそう思ってみる。旅をして俺に何かできる事があるんだろうか。あの男が言っていたように、旅に出ればそれも分かる。だけど、他の人に迷惑がかかる。
“自分の事もちゃんと見てあげて”
同じように散々繰り返した「他人に迷惑がかかる」という言葉の後に、母が言ってきた言葉が頭の中で響いた。
自分は…本当は旅がしたい。
思った瞬間、頭の中がその言葉でいっぱいになっていた。溢れる涙を拭いながら思う。迷惑ばかりかけて本当に自分は嫌な人間だ。ゴシゴシと涙を拭いとり、帽子をきちんと被りなおすとタマキは自分の部屋の扉を開いた。階段下のリビングからはポークシチューの匂いがしてくる。お昼のご飯だったんだろうか。
階段を下ってリビングのソファーに座る母の目の前まで行く。気づいた母は気が付き思わず立ち上がる。母も何か思い悩んでいたのか表情が暗かった。タマキはそれを見て言い留まってしまったが、ぎゅっと拳を握ると口を開いた。
「俺…また母さんや父さんに迷惑かけるかもしれないけど…いい?」
「タマキ…あなたずっとそんな事で悩んでたの?」
驚いた母の眼は丸く見開いた。そしてタマキを強く抱きしめる。
「迷惑かけていいに決まってるでしょう? あなたは大事な私の家族なんだから。だからいっぱいやりたいことしていいのよ」
言われてタマキはまた涙が止まらなくなった。思い返せば、迷惑がかかると他人も友達も家族さえにも自分の本当の気持ちを隠し続けてきた。手を差し伸べてくれてるのに遠慮して遠ざかったこともあった。
「母さん…俺、旅がしたい。旅に出るよ」
同じように母にタマキが抱きつこうとした瞬間。家の扉が開けられ大きなリボンのついた箱を持ったアララギ博士とそのポケモン、チラーミィが現れた。チラーミィは現れるなり早速、母とタマキの間を割ってタマキにべったりくっつく。
少し抵抗はあるが、流石に一時でも多くいたポケモンであるチラーミィにふっつかれていても身震いすることもなかった。
「みぃみみみみぃ!!」
腕から首元まで移動してくるくると回って見せるチラーミィを前にアララギ博士がタマキを指差す。
「”旅に出る”なんて言わなくても君は旅に出なくちゃ駄目よ、タマキ君…いいえ、もうタマキでいいわね」
「チラちー!」
そうそうと大きなチラーミィの瞳がタマキの顔近くで揺れる。泣いていたのを見られていたと知って恥ずかしくなったタマキは急いでまた涙を拭う。
「えっ? あ、なんでアンタがここに…」
ポコっと訳も分からないまま次は母親に頭を殴られてタマキに謎は深まるばかりだった。さっきまでとは一変、何か起こっている様子の母。
「博士にアンタって使っちゃ駄目でしょ!」
「えーっ…」
疑問だらけだ。なんでアララギ博士がチラーミィを連れてここにいるのか。母親が怒ったのが博士と言わなかった、というのは分かるが何故ここに博士がいることに疑問が湧かないのかも謎だった。
アララギ博士の持っている大きなリボンのついた箱は一体なんだろうか。プレゼントのようにも見える。でも、母さんも俺も誕生日じゃないし。
「話を進めてもいいかしら?」
「…どうぞ」
結局何も分からないままタマキは返事を返した。すると、首周りにいたチラーミィがアララギ博士のもとに戻って行く。
「タマキ! 君はもう12歳ね。旅立ち…そう! ポケモントレーナーとしての旅立ちもちょうどこの歳から!」
話が区切れると母とチラーミィが拍手を巻き起こす。何がどうなっているのかさっぱりだ。旅立ち? ポケモントレーナーって?
「よって! 君はこれから一緒に旅に出るポケモンを選ばなくてはいけません」
ポケモンがいないと旅が出来ない。なんだか、昔、チェレンにもそんなことを言われた気がする。とびっきりのデジャブを感じながらタマキは目を細める。
「ポケモンがいなくても旅は出来るだろう」
「何を言ってるの、タマキ!」
否定された。やっぱり昔、チェレンに言われたことは本当だったのか。思うタマキをお構いなしにキッチンのテーブルに箱を置く。
「イッシュ地方を旅するんだからポケモンがいなくちゃ旅にならないわ」
にんまり微笑む彼女の顔は、なんだか昨日の授業の時と違って少し嫌な感じがした。なんか凄くややこしい事になってしまった。困った顔のタマキにこれでもかとチラーミィは手を振ってくる。もう、訳が分からない。
「今、君の部屋にプレゼントを置いて来ました。あ! ちなみにこれはタマキ君のお見舞いです」
「ありがとうございます、アララギ博士」
「いえいえ」
さっき持ってきた箱を開けてプリンを見せてくる。うわぁ…プリンだ。自分の好物に少し浮かれかけたが駄目だと首を横に振って我に返る。アララギ博士はタマキの目の前までやってきて続ける。
「君の部屋に置いてきたその中には、君が手にする最初のパートナーが入ったモンスターボールが三つあります。そこから君はポケモンを選んでちょうだい」
「ちょっと! 勝手に」
「ああ! そうだわ! タマキがポケモンを一匹選んだら、二匹余っちゃうのね…」
わざとらしく思い出したふりをするとアララギ博士は手を叩いて見せる。
「君はこのカノコタウンという小さな町からあと二人だけポケモントレーナーを生み出すことが出来るわけだ…」
「二人…!」
「君が一緒に外の世界に出たい人がいるのなら早くここに連れてきなさい」
言われたタマキは考えるより先に体が動いていた。家を飛び出して二人の元へ駆ける。ポケモンと旅に出るっていうのはなんだか気に食わないけどこの際あまり気にしない。
それよりも一緒に旅に出たいなんて思う相手。そんなのアイツらしかいないじゃないか。
大事な、大事な幼馴染たちしか…。
5話に続く…
PR
☣更新日時☣
03 | 2025/04 | 05 |
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☣カテゴリー☣
☣プロフィール☣
HN:
代珠
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ
ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。
▼スタ
September 20
学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ
いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
October 10
学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ
ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。
▼スタ
September 20
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出身:シンオウ地方 ハクタイシティ
いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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