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ああ…あぁああorz
二つも更新出来なかった。皆さん、私を殴っていいですy((
今回は、今までの長いものより長くなっています!
新キャラ登場! 楽しく?出来上がっていると思いますので今週はこの一作で勘弁してください。
「000との出会い」も…残り、あと半分です。
では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。
以上を守れる方は、下記から⑰お楽しみください。
========
サザン国からリバリー国に帰還し、久々に自分の寝床で眠った。枕の近くでは、ビクとベルが自らの身を丸めて気持ち良さそうに眠っている。自分の横になっているベッド付近では、クジャが長い体を丸めて寝ていた。いくつか前の日に本当に戻ってきたみたいだ。少しの間でも、家の中に声が増えて楽しかった。だけど…もしかしたら、もうこんな風に一緒にいられないのかもしれない。
「なあ…ビク」
眠るビクの頬に触れながら、タキは静かに呟いた。王様から、手紙が渡された。しかも、本人からでなく、ウォーグルのリベットを使うのでもない。ただ、ビクから王様の字で記された手紙を渡された。内容だって、ビクを遠くへ連れていくというものだ。皮肉にもこの国から連れ出さなければならない本人から、その手紙は受け渡された。
明日は、その手紙通りにビクを遠い、誰にも見つからない場所に連れていかなければならない。タキは、ビク達を起こさぬようそっとベッドから抜け出してリビングへとやってきた。まだ、外は暗い。テーブルの上にまだ残っていた蝋燭にマッチで火を付ける。部屋が薄暗く見える様になると、タキは大きな布を棚から引っ張り出して、テーブルの上に広げた。そこへ、床を引きずるような音が微かに背後から聞こえてくる。きっと、クジャだろう。案の定、クジャがタキの隣にやってきて顔を覗いてきた。
「まだまだ夜は明けない。寝てていいんだぞ」
「くぅじゃ…」
タキの言葉にクジャは眠そうに欠伸をしながら首を横に振る。タキは、口元に笑みを浮かべると続けた。
「王様からの手紙で、明日はビクを安全な場所に連れていくように命令された。そのこと、今クジャが知ったようにビクもまだ知らないんだ。いや…絶対に言えない」
苦い表情でタキは本棚から何冊か本を手に取ると、テーブルに広げていた布で包んだ。そして、クジャに向き合うと更に続ける。
「戦争が終わったら…ディスコード王との戦いに勝ったら…絶対にビクを迎えに行く。でも、それまで何も言わない。ビクは、この国で戦争が起こるとか、自分のせいで起ころうとしてるとか…そんなこと聞いたら絶対に悪く思う」
言いながらタキはクジャから離れると、本棚からまた別の本を取り出した。赤い柔らかな布で表紙を模った本だ。タイトルや絵も可愛げのある男の子とポケモンが描かれている。絵本の様にも見えるそれをタキは広げて見せた。
「明日はお別れの日じゃない。精一杯遊びつくそう。ビクが寂しくならない様に一杯想い出作るんだ」
「クぅっ!」
クジャとタキは歯をニッと剥き出すと何か企むように本を見つめた。
======
今日も 闇がやってきた
次は 貴方を塗り替えよう
光 そう言い溶けだした
星が 月が 還って行く
人の心も 目覚め行く
こうして 朝はやってきた
潮の香りが混ざった木の甲板上で唄う小さな人影。彼女の唄った言葉は、光の粒となって空へと登って行く。そして、唄の通り光が海辺から頭を出した。その日差しを感じながら、彼女は立ち上がり小さな港を見下げた。沢山の人が船へ乗り込んでくる。その中の大きな黒い海賊帽を被った一人が、彼女に大きく手を振りだした。
「おはようございます! メロエッタ!」
声を掛けられた彼女、メロエッタはその小さな体を手摺に乗せて同じく手を振って見せた。
「(おはよう、船長さん)」
メロエッタの声に皆が一斉にあいさつをする。メロエッタは、そんな船員達を見て溜息をつくと船長の肩へと飛んで行った。船長の大きな海賊帽に頭をぶつけないよう、首を屈ませながらメロエッタは小さな口を開いた。
「(今日は、昼から出港したほうがいいです)」
「どうしてだい、メロエッタ。こんなに日差しが強いのに…」
「(寝起きの悪い雲がここを通ります。怒りんぼうで短気…少しでも荒れるので、皆さん奥で控えていた方がいいでしょう)」
親切にそう言うとメロエッタは、船長の肩から離れて舵の近くの手摺りに腰を降ろした。船長は、深く頷くと細い腕を振り下ろし、大きく口を開いた。
「お前達! 今日は、昼から出向だ! 自分の準備が終わった者は奥で休んでいてください!!」
船長の声で喜ぶ船員達は、その手を速めて仕事をはじめた。船長は、メロエッタの隣で地図を広げた。
「さて。今日はどこへ行こうかな?」
「(そうですね…ですが、今日はもう決まっているみたいですよ?)」
質問を質問で返されたような気分だ。船長は眼を丸くしながらメロエッタを見つめた。すると、港から手紙を片手に走ってくる同じ顔立ちに色違いの帽子を被った一人の人間の姿を目にする。白い海賊帽を被った男は、息を切らしながら船長のところまで行くと手に持った手紙を渡した。
「クライム! 今日、王様から手紙きてる。ここ、行けって」
そう男が言う言葉を片耳に船長、クライムはリバティ王様からの手紙を開き目で辿り始めた。
「ふむふむ…今日の乗客は人間が一人、ポケモンが三匹。帰りは、ポケモンが二匹になるのか……行先は、安全で誰も知らない地帯ならどこでもOK…」
クライムの言葉にメロエッタは、くるりと回って立ち上がると腰に手を当てた。
「(それなら、以前、私が見つけたあの場所が一番いいです)」
「あの場所…? メロエッタ、何か知ってる」
「ああ! ダン、あそこのことですよ! まだ名前を決めかねてましたが…前にメロエッタが見つけた小島のことですよ!!」
ああ、とクライムと一緒になって白い海賊帽を被った男、ダンは頷き口を開く。
「あそこ…昨日、建物建ったばかり。皆、頑張ってた。名前、決まってないけど…」
そうだ、その小島に昨日建物が建ったばかり。固い作りで出来たそれは、レンガとも違う無機質な型で作られていた。冷たいが頑丈で立派な建物だ。作業に取り掛かっていた人々を、昨日の夕方にダンが船を使ってリバリー国に戻ってきたばかりだった。何に使われるでもない、食べ物も備わっている。帰りに一匹ポケモンを置いていくんだ。なにがあったかは知らないが、そのポケモンもその小島で生きていくことは可能だろう。
クライムは、海賊帽を深く被るとにやりと微笑み人差し指を立てた。
「今日は昼、名もなき小島へと出発です! 乗客は人間ポケモン…合わせて4名! 行きも帰りも手を抜く事の無いようお願いします!!」
ぴしっと敬礼して見せると、その場にいた船員達も敬礼した。青空に黒い雲が掛かって行く。
======
枕元、昨日は久々にタキの温もりを感じながら眠りに着いたのに、今朝目がさめればもう奴はここにはいない。ビクは、むっすりした顔で起き上がると隣でまだ寝ているベルの体を揺さぶった。
「(おい、起きろベル! 今日は遊びに行く日だぞ!)」
揺さぶられてベルは眼を回しながら起き上がると、ふわっと欠伸を濡らした。ベルは小さな手で頬を叩くと喉を優しく鳴らしてみせる。ビクはベッドから飛び降りると、そのままリビングへと走って行く。おどおどしながら、ベルもビクの後を追っていった。
リビングに行けば、昨日の夜にベッドでお休みした顔ぶれが床に倒れていた。タキの傍によって、ビクはペチッと頬を軽く叩くがタキはぴくりとも動かない。ただ、気持ち良さそうに眠っていた。
「(寝坊スケはいけないなぁ…今日はオイラと遊ぶ日だぞっ!!)」
小さな両手をタキの頬へと掲げると、ビクは一斉にその手で頬を叩きはじめた。いつもより強いビクのビンタは、目覚ましビンタより劣るが強力なものだ。
「っ! 痛い! いたいたっ!」
「(起きろぉ! タキぃ!!)」
「わっ、わかった! 起きてる! もう起きた!」
痛みに負けたタキは直ぐに起き上がって頬を撫でた。ビクより業の方が、起こし方が優しいのがよく分かった。心底そう思いながらタキは、窓の外を見上げた。暗い…まだ、夜中なのか。そうタキが思っていた矢先、窓から陽の日差しが差してくる。明るい、朝にしては明るすぎる。
嫌な気がして、少しふら付きながら急いで斜め掛け鞄の中に入れていた懐中時計を開いた。11時54分だ。
「ヤバい…」
完璧に出遅れた。船は早朝からどこでも行き来している。この時間帯からなんて乗れる船があるのだろうか。とりあえ支度をしないと、とタキは鞄に木の実を何個か詰め込んで、ビクとベルにも手渡した。
「それ食べてすぐ行くぞ」
布で包んだ袋も鞄に入れると結構な重さだ。ずっしりした斜め掛け鞄を肩に掛けると、タキは急いでマントを身につける。眠っている、クジャも優しく頭を撫でて起こすと、赤いリボンの付いた箱をタキは肩に乗せた。急いでいるタキをビクとベルは不思議そうに見ながら木の実を食べていた。
「(タキ? もう、行く場所は決まってたのか?)」
「ああ、船に乗るんだ」
「(船?! あの、物語に出てくる大きな島亀のことか? 地面から出てきた、ドダイトス!)」
「それとは全く違うよ!」
興奮するビクの腰を掴むとタキは箱の上に乗せた。ベルを手招きして自分の首にしがみ付く様、手で丸々と支えこんだ。
「クジャ、行けそうか?」
「ふぅじゃぁ」
欠伸をしながらクジャは答えるとタキを見つめた。タキは、すぐに玄関の扉を開けて街中を走って行く。その後を追う様にクジャも長い体を撓らせてタキの隣に着いた。
街中は、昼ということもあって子供や大人で賑わっていた。タキとクジャが人をかき分けて進んでいると、突然目の前にシキジカがやってくる。見覚えのあるシキジカだ、とビクは舐めまわすようにその姿を見ていると、更にチラーミィとミネズミもやってきた。初めてリバリー国に来た時、一緒にかくれんぼをしたポケモン達だ。
(あら? タキがこんなところにいる)
シキジカがそう言いながらタキの足に絡みつく。タキは、困った様に下を覗いた。
「ごめん、今はちょっと…」
困った表情のタキに、ビクはむっと頬を膨らませるとシキジカ達に箱の上から声をかけた。
「(おい! タキは今からオイラと遊ぶんだぞ! タキは今日はオイラと遊ぶんだ!)」
「こら、ビク!」
(えぇ…タキはビクティニ君と遊ぶの?)
(ボク達も入れてくれていいじゃない…嫌な奴)
最後のミネズミの言葉に、腹を立てたビクは腕を振り上げて怒鳴ろうと大きく口を開くが、先にタキを怒鳴る声が賑わう街中に響き渡った。声を聞いたタキは、顔を真っ青にしながら背後を振り返る。まだ遠くではあるが、その野太い声は肉屋の店主、ワグダのものだ。よく解らないけど、今捕まると凄く面倒くさそう。
すると、クジャは首元からつたを伸ばしてタキの腰に巻きつけた。軽々とその体を持ち上げると、クジャは自分の背にタキを乗せて素早く人混みを抜け、その長い体をうねらせ走り出す。落ちない様に後ろを振り向けば、もうワグダは見えないくらい小さくなっていた。流石、クジャ。
タキがほっとしながら満足気にそう思っていると、ビクはクジャの頭の上に飛び移り目の前から来る風を浴びていた。大きく手を広げるとビクは嬉しそうに声を上げる。
「(速いぞ! 凄いぞクジャ!)」
後ろからだから見えないけど、もしかしてビク楽しんでる? クジャも奇妙な声を上げてビクに何か伝えているように見えた。よかった。まだ、無事に船には乗れてないけど。
街中を抜けて急に潮の香りが広がる。もうすぐ港だ。小さな港に出れば、一隻のみ船が止まっている。あれに乗れるだろうか…。クジャは、とにかく船へと進んでいく。
「おーい! 君達ぃー!」
船の上から黒い帽子を被った人が一生懸命手を振っている。なにか言っているようだ。タキはクジャの背から片手を離して、手を口に当てて大きく息を吸った。
「すいませーん!! この船! まだ出港しますかぁあ?!」
「するよぉー! 出発出港だよぉー! 急げぇ! 頑張ってくださぁあい!!」
げほっ、と最後に咳き込むとその人はそのまま、うずくまってしまったようで姿が見えなくなってしまった。タキはクジャにしがみ付くと、それに影響されてかタキの首に足を巻いたベルもぎゅっと首に掴まった。クジャは、加速しながら船に掛かっている木の板の上を登って船に乗り込んだ。急ブレーキを掛けながら、クジャは船の甲板へと上がって行くとそこでようやく止まった。甲板のほうには、さっき叫んでいた男の人が荒い息を吐きながらしゃがみ込んでいた。
クジャから降りたタキとビクは、そのままその男の人へと駆けよる。よく見ると、帽子も格好良い海賊帽子だ。
「あの…大丈夫ですか?」
「きっ、君達っ…こそっ! はぁあっ、だいじょっ…ぶっかい?」
この人は叫んだだけでこうだったのだろうか。タキは、とにかく背中を擦りながら横に寝かせようとするが、男は手を横に振るとふらふらしながら立ち上がった。冷汗の残る凛々しい顔で彼は、空中に人差し指を立てた。
「やあ! ようこそ、船へ! 私がこの船の行きの船長、クライムです」
船長、クライムがそう言うと甲板をあがる階段ごしから、白い海賊帽子を被った男と本の挿絵で見たポケモンが現れた。白帽子の男は、お辞儀をするとクライムと同様、空中に人差し指を掲げた。
「はじめまして! 僕が船の帰り船長、ダウです。君とポケモン、疲れてて、大丈夫。僕が責任持って届ける」
少し片言なしゃべり方のダウは、そう言いながらタキの手を握った。その隣からは、艶のある緑髪のポケモンがやってきた。小柄な彼女は、お辞儀をするとこちらにようやく目を合わせてきた。しかし、彼女は大きな緑の瞳を丸くすると小さな手で口を押さえながらビクに声をかけてきた。
「(もしかして…ビクティニ?)」
彼女の声は透き通るように美しく、一言声を発しただけなのにそのまま吸い込まれてしまう気になった。声をかけられたビクも片目を細めて迷った末、あっと声を出してメロエッタに近づいた。
「(お前…湿原に住んでいたあの?!)」
「(貴方こそ湿原を出てこんな所で何を…ずっと、あの森でポケモンの大将になると威張っていた貴方が…)」
「(うっ、うるさいぞ! そんなのは、昔の話だっ)」
二人が知っているような会話をする間できょろきょろと双方に眼をやるとクライムとダウはタキを挟んで話しだした。
「…すいません。失礼ですが、二人はお知り合いだったんでしょうか?」
「知りませんよ…そんなの」
「僕はじめて聞いた。メロエッタ、話ししてない」
話していたタキの首からにょろんとベルが出てきた。二人はびっくりしながらタキを見つめる。
「ちょっ!! 君、それは目印のバンダナとかじゃなかったのかい?!」
「そんなこと一言も言ってませんけど。ベルはポケモンです」
タキとクライムが話していると、ベルはビクの隣にやってきた。ビクは、ベルの背中を押すとメロエッタに続ける。
「(コイツはオイラの友達のベルだ。ベルも、ほら! この間、オイラが話してた唄の上手い奴がいるって言ってただろう?)」
「ちりりりーん」
ベルの鳴き声を聴いてメロエッタは微笑むとベルの小さな手を握った。
「(とても綺麗な声を持ってるんですね。皆さん、申し遅れました。私は、メロエッタ。数週間前にリバリー国の人々に命を救って頂いた、ただの通りすがりのポケモンです)」
ぺこりとお辞儀をしたメロエッタに、タキも続ける。
「俺は、タキです。こっちは、ジャローダのクジャです」
「くうじゃ!」
奇妙な鳴き声を上げてから長い首を下げるクジャ。そんなクジャを見て、メロエッタはくすりと笑む。
「(とてもお似合いですね。恋が実ることを祈ります)」
聞いたクジャはぼっと顔を赤く染めてつたで目を隠して恥ずかしそうに丸くなっていた。勿論、こっちも恥ずかしい。タキは頬を赤く染めながら咳払いすると続ける。
「怪我の方も治ってよかったです」
「(はい。とても調子が良くて…困ってしまうくらい)」
力瘤なんて出るはずもないだろう、それでもメロエッタは自分の腕を曲げて元気であることをアピールしていた。よかった。王様が船に乗せた御蔭で、人とも随分話せるようになっているみたいだ。
「そういえば、ビクもさっき言っていましたけど唄が上手のようですね。一度、聴いてみたいです」
ビクから聞いていて、ではなく、本当は自分で調べていたので解っていたけど…。本には、彼女は自分の歌声を恐れていたと書かれていた。本の通りだとすれば、メロエッタは唄うのを拒むだろう。だが、メロエッタは何も嫌々ではなく、むしろ嬉しそうに頷いてくれた。
唄い出そうとするメロエッタに、クライムが両手で制止し、急いで舵を持った。そして、船の上で働く船員達に声をかける。
「メロエッタが唄うのなら、船を出港させてもらいますよ。さあ! 出発だ!」
ゴングの音が響き渡る。船の出港の合図だ。ゴングの音に合わせて、船はゆっくりと海の波にのって動き出す。ゆっくり動きだした船を肌に感じたビクとベルは、慌ててその場によたよたと足踏みをすると座り込んでしまった。メロエッタはふわりとその身を空に浮かべるとタキの周りを一周してから、木で出来た樽の上に足をのせた。
「(これから唄うのは、私が木々や空、自然から聞いたお話です)」
ふぅっと息を吸うとメロエッタは、片手を空へと差しのべた。
「(『昔、沢山の人間が生まれました。その後に、人間の住まう世界にまた違う生き物が誕生しました。そして、とある湿原で小さなわかごまが生まれました。成長し、家族を持ったわかごまは、子を産み幸せに暮らしていました。しかし、人間達はわかごま達の居場所を奪ってしまいました。焚火の炎を片手に集まった人々は、その湿原に火を放ったのです。
驚き逃げ惑う生き物たち。彼らは、仲間も自分も生きる為に必死でその場を逃れようとしました。しかし、それは荒れ狂う炎に塞がれ叶う事はありませんでした。それでも、生の道を指したのは三匹の勇敢な生き物たちでした。一人は、火を立ち破り。二人は、生き物たちに生きる希望を与えた。
そうして、湿原に炎は消え去りました。ですが、わかごまの家族は、子を残し皆何処かへ姿を消してしまったのです。わかごまは、悲しみました。自分が悲しくて、憎くてならなくなりました。そう、自分にもっと力があれば…。
こうして、親のいなくなったわかごまは、湿原から炎を消し去った三人に育てられることになりました。三人から知識を得て、成長したわかごまは、ポケモンが幸せに暮らせる世界を作る ためその湿原を後にしました』)」
メロエッタはすっと息を吸うと続ける。
「(『人間はポケモンを使い、炎を使い、牙を使ってそれぞれの野望のために戦いを続けていました。そこに、戦いの大嫌いな二人がやってきました。彼らは、この地方を見守る神。二つの光は、どんなに苦しい事があろうとポケモンや人々を救ってきました』)」
さっきの話は、よく解らなかったけど、これは解る。イリスから聞いた、二匹のドラゴンポケモンのことだ。メロエッタは、大きく息を吸うと声を出し始めた。綺麗な透き通る声は、光の粒になって空へと登って行く。
「(『光を 奏でる星も
闇を 生み出す雲も
古き語り 永久語り
白を 染める篝火(かがりび)
黒を 染める電光
黒白は 命(こころ)へ
古人 暗がりに
落ちても
夢唄よ
現在(いま)届け 未来(せかい)へ』)」
唄い終えると、彼女の声に反応したのか周の海辺から黒白色の光の粒子が船の周りを覆いだした。段々、霧架かってきた周りをクライムは気にすることなく船を進めいく。タキやクジャが驚く暇もなく、メロエッタはまた語りだした。
「(『そうして、湿原にポケモン達が増えていく。炎の子も唄の子もそろっていく。ただひとり、わかごまは姿を消してしまった。わかごまは、いつかきっとこの世界の王になる。木々も水も、みんな、みんなそう思っています。そして、みんなは争いをしないことを決めました』)」
メロエッタは静かに息を吐くとその場でお辞儀をした。すると、ビクとベルは小さな手で拍手する。クジャやタキも拍手すると、メロエッタはその場に座り込んだ。少し笑って見せると彼女は続ける。
「(長くて退屈でしたでしょう?)」
「いいえ、とても面白い物語でした」
そうタキが言うと、メロエッタはタキの元へやってきて肩の上に乗ってきた。ビクより軽い彼女の体はタキの顔を覗きこむ。
「(タキさんは、お話が好きなんですね。みんながそう言ってますよ)」
「みんな…?」
不思議に思い首を傾げたタキにメロエッタは微笑んだ。クジャが何か言ったのだろうか。黙っていたタキに、ビクは体が疼いて仕方なくなり大きく背伸びして立ち上がった。
「(タキ! オイラとベルは、船の中で遊んでいるからな)」
「ちりーん!」
「あ、うん。いってらっしゃい」
ビクはベルと船の中を走りだした。下の方へ行ってしまったビクとベルは手摺に身を乗り出して海の方を眺めている。二人とも楽しそうだ。タキは、持っていた赤いリボン付きの箱を置くと、クジャを見つめてニヤリと笑んだ。
「クジャ…昨日、俺と考えた遊び…ビクとベルにしてきて」
「くじゃっ」
ピシッとつたを伸ばして敬礼すると、クジャはゆっくりビク達の方へ進んでいった。その姿を見ながらメロエッタはタキの少し青白くなった表情を見つめる。
「(…タキさん。昨日はちゃんと寝ましたか?)」
「あ、えーと…結構遅くまで起きてました」
「(駄目ですよ。船酔いします)」
言った傍から口に手を押さえて吐き気を抑えるタキ。メロエッタが、慌ててタキの耳元に口を近づけると優しい音色で唄い出した。
「(『船酔いではない 楽に酔いしれた』)」
瞬間、タキの顔色は血色が良くなっていく。吐き気の消えた体は軽く、タキは息を吸い込むと照れながら頭を押さえた。
「すみません…船酔いなんてあるんですね」
知らなかった、とタキが言っていると、遠くでビクとベルの嬉しそうな声が聞こえてきた。上から様子を伺えば、クジャが自分の頭上にビク達を乗せて、自分の長い体を滑り台の様にして遊んでいた。昨日の夜、クジャとタキで考えた遊びである。笑っているビクを見れば、どうやらこれは成功したように思える。タキがそう思っていると、メロエッタが急にタキの耳元をクンクン嗅ぎ始めた。驚きながら、タキはびくりと肩をすくませた。
「どうかしました?」
「(匂いがする。貴方から息子の匂いがします)」
メロエッタは耳元から離れると、首を傾げてから顔を横に振った。そして、タキの目の前に移動するとメロエッタは悲しそうに言う。
「(…戦いを起こすのですね。ビクティニを巡った戦いを。だから、ビクティ二を…)」
「なんでそれを…?!」
メロエッタの言葉にそうと言わずにいられなかった。さっきから、メロエッタは言ってもいないことを当てていく。しかも、全て当たっている。自分の声以外に、他人の声も聞こえているのだろうか。タキは、真剣に目を合わせると軽く頭を下げた。
「お願いします。ビクには、何も言わないでください。ビクにはもう…悲しい思いをさせたくないんです」
頭を下げるタキにメロエッタは少し溜息をついた。思っている事は正しいが、その思いが逆に大切な人を悲しませる時もある。ビクティニは感情に敏感なほうだから、貴方の考えを見透かされる可能性もある。
二人で黙っていると、遠くからビクが飛んできた。くるりと空中で一回転してからタキの膝の上で着地する。見上げてお茶目な顔で舌を出すと、ビクはタキの指を引っ張った。
「(タキも来い! 皆で遊ぶぞ!)」
ビクに指を握られて、ふと遠くのクジャとベルを見ればこちらに手を振って呼んでいた。タキはビクを持ち上げて頭に乗せると、メロエッタに手を差し出した。
「メロエッタも一緒に遊ぼう」
差し出された自分の大きな手に、小さな手がちょこんとのせられる。手を握って甲板から下へと下ると、タキはクジャとベルの元へと向かった。タキは手を離すと、その手で指を鳴らす。
「はい! これから、勇者ごっこをします」
「(勇者ごっこ?)」
聞いたことがないぞ、と興味を漂わせるビク。その顔は本当に面白そうでタキも胸が高鳴った。
「勇者ごっこは、一人一役を決めて仮相の中で遊ぶんだ。俺は最強の殺人鬼、ゲノセクト。ビクは、勇者。メロエッタがお姫様で、ベルは王子。クジャは、俺の付き人だ」
説明し終えるとタキはゆらりと手を前に出してビクに襲いかかる。急だったので、驚いたビクはその場でたじろぎ直ぐにタキに捕まってしまった。タキは、目を細めて口元をヒクつかせながら大きな声で笑い出した。
「はっはっはー! 弱い勇者めー! お前の姫は、俺が頂いたー」
無理をして厭らしい笑みを作るタキは、口元が引きつってどうにも変な顔だ。ビクは、笑いを堪えながら、意味を理解したのか小さな指でタキを指した。
「(お前なんぞに姫は渡さないぞ! ゲノセクト、お前を倒してやる!)」
「ちりっ! ちりりーん!」
胸を張ってベルもビクに加戦しにきた。タキはゆっくりビクを降ろすと少し黙ってからメロエッタの手を、優しく掴む。なんだか、優しい殺人鬼だ。ビクははっとした顔で口を開く。
「(くっ! 姫が捕まってしまった!)」
「はっはっはー! 馬鹿な勇者めー! お前の姫は、俺が頂いてやったぞー」
さっきと、同じような事を言っている気がする。まあ、ビクもベルもノッてくれてるし大丈夫だろう。タキは、メロエッタをそっと近くの樽の上に乗せると、またビクに襲いかかった。そうは、させまいとやってきたベルをクジャがつたで絡めて動きを止める。バタバタと小さな手や尻尾を動かすベル。身動きの取れなくなったベルをビクは助けに向かうが、クジャの体に上る前にタキがそんなビクを捕まえた。
「(うっ! くぅっ! 離せ!)」
「はっはっはー! のろ間な勇者めー! 俺の必殺技を受けよ!」
「(しまっ!!)」
冷汗を流すビクの体にタキは指を立てるとこしょこしょと撫でまわしはじめた。体が痒くなったような意味のわからない刺激に、ビクは大声で笑い出す。タキは、そんなビクに止めを刺すように最後まで撫でまわした。タキの手からぱたりと落ちたビクは、腹を抱えながらゆらりと立ち上がる。
「(くっうぅ…ど、どうすればゲノセクトに勝てるんだ?!)」
ゲノセクトの…いや、タキのあの殺人ハンドには絶対に勝てる気がしないぞ。見上げる様にタキを見つめるビク。タキは、天使の様な頬笑みで眉を吊り上げている。そういえば、なんか無理して顔を作ってるな。ビクがそう、少々思っていると舵を持ったクライムが大きな声で言いだした。
「勇者、ビクティニよ! 貴方はまだ勝てる希望が残っています!」
神の声で演出してきたクライムに、一同はえっと声を濡らすとそのままクライムに視線を集めた。クライムは続ける。
「おお…ビクティニよ! 貴方は殺人鬼ゲノセムトの必殺技に打ち勝つことが出来なかったのですね」
「クライム。ゲノセクトだよ」
舵の隣からひょっこり姿を出したのは白い海賊帽を被ったダンだった。注意を受けたクライムは、大きく咳こむと舵を片手に続ける。
「安心しなさい! 勇者ビクティニよ! 我々神々の聖なる武器を与えましょう! ダン!」
呼ばれてダンが取り出したのは、木で出来たチョロネコの手の形をした棒だった。
「この棒は、チョロネコの手といって…既にリバリー国で売られている、背中を欠く為の聖・な・る武器。しかし、それは強力すぎて他人には扱うことの出来ない技を秘めているのです! 今、ここで君にその技とこの武器を授けよう!! さあ、来いダン! 私を…欠き回しなさい! さあっ!!」
ダンは言われて、俯くと両手にチョロネコの手を掲げてクライムの脇下をこしょこしょと欠き回し始めた。息を噴きだしながら体をくねらせて、一生懸命笑いを堪えるクライム。もういいだろう、とダンが手を止める頃には先程のビクの様に力を失いながらも、舵を握っていた。
むくりと起き上がると、クライムはニヤリと殺人鬼役のタキを見下げながら口を開く。
「どうだね? 勝てそうかな? ゲルマニュウム君」
「そっ、そんな武器が…っ」
城下に…売られていたなんて! そして、名前! タキは苦い顔をしながらクライムの顔を見上げる。昨日考えたばかりの、遊びだったから…必殺技の対策なんてしていなかった。タキが油断していると、何故か神様役になったダンがチョロネコの手を掲げてタキの元へやってきた。
慌ててダンに捕まらないように逃げ出すタキ。ビクはしめたと、タキを追い掛け始める。
「(今だぁ! 今ならタキを触り放題だぁ!)」
ビクの言葉にぴくりと最初に反応したのは、タキの付き人役のクジャだった。ベルを捕まえていたつたを緩めると、クジャは一斉にビクと共にタキに突っ込んでいく。気づいたタキの方は、驚きながらもクジャのつたに足を掴まれてその場で尻もちをついてしまった。ひゅっと片手の自由をもつたに奪われると、タキは真っ青な顔で口を開いた。
「ど、どうして…仲間であるはずのクジャが……」
恐る恐る聞きながらも、クジャはその長い体でタキに抱きついてくる。そうこうしているうちに、目の前にビクとダンがチョロネコの手を分け合ってタキを見降ろしていた。にやりと口元を吊り上げるビクは良からぬことを企んでいるとしか思えない。
「(ゲノセクトよ。倒す前に聞いておこう、降参するか?)」
「今なら、間にあう」
見下された顔触れにタキは、ふっと笑って見せると睨み上げた。そうか、とビクとダンはタキの脇元までチョロネコの手を持っていく。それを見て、タキは慌てて口を開いた。
「ちょ! ちょい! もうゲノセクト倒されたも同然なんだし、終わりにしよう! 終わり、終わり!」
「(はあ? 何を言っているんだタキ。まだオイラは、ゲノセクトを倒していないんだ)」
「勇者が勝つまで、戦い続く」
「へ? いっ!! ぎゃああああああああああああああああ!!!」
勇者ビクは、神ダンと共に伝説の武器、チョロネコの手を使って殺人鬼タキの体をこしょこしょと撫でまわした。数分後、彼の体はクジャの体に包まれ、ばたりと脱力する。ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、タキは静かに瞼を閉じた。
世界に、平和が戻ったのだ。ビクとベル、神様のダンはお互いを抱きしめあいながら感動をその両腕で抱きしめた。そう、もうこの世界は平和になったのだ。
「拍手っ!!」
感動した、舵を握りしめる神様のクライムも思わずそう叫んだ。周りの船員達も合わせて拍手をしている。うん、そう。なんか、凄い起き辛い。目を瞑りながらそうタキが思っていると、船の動きが急に止まった。船床が軋む音がして、タキの近くでその音が止まる。
「…着いたよ。タキ君」
さっきまでとは違う、優しい音色でクライムはそう言った。タキは、瞼を開けると絡まるクジャから体を抜け出し、船の外を見た。見つめた先を追ってきたビクやベル、クジャもじっと見つめる。そこには小さな島があり、大きな白い灯台が立てられていた。まだ一度も使われていないそこは、光を灯すのを待ち望んでいる様に佇んでいた。周りには、見た事もない花々が咲いている。
「綺麗な場所でしょう」
「はい…とっても」
こんな美しい場所でなら、ビクも住んでいけるだろう。まるで、天使が自由に遊び舞うようなそこは、天界にでも来たような錯覚を覚えさせる。ビクも隣で瞳を輝かせながら島を見ていた。
「タキ君、これ」
声を掛けられて振り返れば、ダンが赤いリボンの付いた箱を持っていた。ダンは、タキに箱を渡すと人差し指を空に掲げた。
「帰りは、僕が船長! どんな顔でも待ってる」
「お願いします。ベル、クジャ…ここで待っててくれ」
そう言ったタキに、ベルは首を傾げる。クジャは、そんなベルに頷いて見せると、何か気付いたベルも頷いた。ビクは、そんなみんなを見て不満気に頬を膨らませる。
「(なんでみんな来ないんだ)」
「ここからは、ビクの仕事だからさ」
「(オイラの仕事?! もしかして、今日は仕事だったのか?!)」
あわわ、とビクが両耳を下へびろんと垂らすとタキの肩に乗った。船の上から長い板が降ろされる。落ちない様にタキは、バランスを取りながら渡ると小島に足をつけた。島から見た大きな灯台は、船で見ていた物とはわけが違う。そう思いながら、タキは花道を通り灯台への扉を開いた。
中には、壁にランプが幾つか置かれていたが薄暗いのには変わりない。さっきまでの、美しい場所とは違い、やはり人間が造ったような無機質な形をしている。固い階段を降りて、奥まで進んでいけばようやく光が見えてきた。
部屋の中は、ちゃんとベッドや棚などが一式揃っている。床にもやわらかな絨毯が敷かれていた。タキは箱を絨毯の上に降ろすと口を開く。
「さっきの楽しかったか?」
「(ん? 勇者ごっこのことか? 凄く楽しかったぞ!)」
無邪気に笑いながらビクはタキの肩から降りると続ける。
「(クジャに乗った時も速くて楽しかった! 船の人間も楽しかった! メロエッタの歌も久々に聴いたし…タキの間抜けな顔を見てベルもオイラも久々に大笑いしたぞ)」
嬉しそうに頬を染めて微笑むビク。よかった。楽しんでもらえた。タキも微笑すると箱に着いていたリボンを解き始めた。興味有り気にビクも箱を覗いている。タキは蓋を開けると、ベラから貰った色鮮やかな積み木を取り出した。
「これは、積み木って言うんだけど…このブロックを積み上げて遊ぶ玩具なんだ」
へえと言葉を濡らしながらビクは、積み木を手にとって急に齧り付いた。しかし、すぐに口から吐き出すと少し不機嫌そうに積み木を突いていた。遊び方、教えたばっかりなのに…。タキは、次に汽車の玩具を取り出した。黒光りしたそれは、まだハルモニアと出会った時と同じくらい新品である。
「(タキっ! タキっ! なんだそれは?)」
積み木とはまた違う、見たことの無いフォルムに圧倒されたのかビクはタキの腕にしがみ付きながら汽車の玩具を見ていた。タキは汽車を絨毯の上に乗せるとビクを見つめた。
「これは汽車っていう玩具。ビク、後ろから汽車を押してみな」
「(ん? こうか?)」
言われた通りにビクは、汽車の玩具の後ろへ周ると少し力を銜えて見せた。すると、汽車は少しだけ前へと進む。ビクは、目を輝かせながら身震いすると汽車に抱きついた。
「(凄いぞ! オイラが少し押しただけなのに)」
「気に入ったか? それ、ビクにやるよ」
「(ホントか?!)」
「ああ、本当だよ」
タキの言葉にビクは大きく口を開くと嬉しそうに、耳をわしゃわしゃと欠きながら汽車にそのままずっと抱きついていた。もう一つ箱の中に入っていた、業から貰った水色のビー玉はベルにあげよう。そう思い、タキはビー玉を鞄の中にしまう。そして、真剣な表情でビクを見つめた。
「いいか、ビク。これから、少しの間だけビクはこの島を護らなくちゃいけなくなった。俺とクジャは、城を護らないといけないから、これはビクにしか頼めない」
ビクは聞きながら汽車の玩具を横に、腰に手を当てるとふんと鼻を鳴らした。
「(任せろ。そのくらい、オイラは朝飯前だ。それより、タキも城の方をちゃんと護るんだぞ! あ、そうだ。少し経ったらちゃんとオイラを迎えに来いよ)」
「はいはい、絶対に忘れないよ。絶対…」
よし、とビクはタキを見て微笑んだ。タキは、鞄から布でくるんだ本を何冊か棚に置き、箱を近くに置くと出口へと向かった。出る前にビクを見てタキは手を振る。
「じゃあ、また会おう。ビク」
「(おう! そんなに心配しなくても大丈夫だぞ。頑張れ、タキ!)」
しばらくお別れだ、ビク。タキは、早歩きで木板を渡り船へと上がる。メロエッタは静かにその姿を見ていた。きっと、もう彼を止める事は出来ない。彼もまた、古人となり語り継がれるのでしょう。
船に乗り込んだタキにクジャとベルが近寄ってくる。ベルの方は、ビクの姿がない事に驚いているようだった。綺麗な音色で一回鳴いて見せる。タキは、鞄から水色のビー玉を取り出すとベルの小さな手にちょこんとのせて、ゆっくり口を開いた。
「ベルにお土産だ。ビー玉って言って、飴玉じゃないから食べるんじゃないぞ」
ビクみたいに食べてしまったら、喉を詰まらせて死んでしまう。ベルは、瞬きしながらタキを見つめた。やっぱり、ビクが気になるみたいだ。
「ビクが気になるか?」
「ちりん」
一声鳴きながらベルは小さく頷いた。タキは白い灯台を船から見降ろすと続ける。
「これから、ビクを手に入れようと悪い奴らが国にやってくるんだ。だから、ビクはこの島に隠しておくことになった。危険な戦いになる。ベルもビクとここにいたいなら…残ってもいいよ?」
優しい表情でタキはベルにそう言った。ビクといたいなら、なんかじゃない。ビクだって、クジャだって、俺だって…戦争に出たら生きて帰ってこれるか解らない。二度と会えなくなるのは嫌だから、本当はベルに俺はここに残ってほしかったのかもしれない。けど、ベルは俺の首元に尻尾を巻きつけると頬にそっと触れてきた。
ああ、そうか…良い人過ぎるんだな、ベルは……
「タキ君。船、出すよ」
舵を持つ手が白い海賊帽を被ったダンに代わった。そろそろリバリー国へ戻る時間だ。タキは、木板付近から離れつつ白い灯台をじっと見つめていた。はじまりのように、ゴングが何度も鳴り響く。船員達の強い掛け声とともに、段々と離れていく白い灯台をタキとクジャ、ベルは眼に焼き付けていた。
⑱に続く…
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October 10
学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ
ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。
▼スタ
September 20
学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ
いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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