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日記,ポケモンアレンジ小説中心に更新中のブログサイトです! ※This site is Japanese only.
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2ndに突入してもやっぱり前置きはかかせませんよね!
テストが来週から&高さんなのにまだ何も決めてない…やばい!
と、いう状況なのですが頑張って書きたいと思いますよー
書いて感想貰う、拍手をいただくが私の生きる糧となってますから!
ホント! みなさんには感謝です!


では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公、BW小説です。
・↑は公式名ではありません。「公式名じゃなきゃ嫌っ」という方はご遠慮ください。
・誤字脱字、文章を見て「あっ」と思った方はメールでお知らせくだされば幸いです。
・感想…くださったら大喜びします///
・前回の1stのお話と少し繋がりがある…かも
・ゲームをまだやってないかたは、ちょいネタバレを含みます。
・ぜひ! HPの方にも遊びに来てください!!



以上が注意事項です!
では、ご理解くださった方は下記から 2 をお楽しみください。



======

 
 心地よい風が窓際から入ってくる。焦げ茶色の大きな木材で出来たここは、結構昔に建てられた学校だ。しかし、ここは田舎のカノコタウン。教師が来るのは、週に三度だけ。月曜日、水曜日、金曜日。この三日間は、この田舎に住む小さな子供達が授業を受けにこの学校を訪れる。
 学校の名前は特に決まっておらず、皆はカノ校と呼んでいた。
 僕の名前は、チェレン。今日は日直で、当番が全て僕に当たっているので忙しい。皆が騒ぐ中、教室に女の先生が入ってきた。この人は、海外から出稼ぎでやってきたタケミ先生だ。カントーの方から来た人で、外国語も上手い。最初の授業では、カントーの言葉で自己紹介をしてくれたが僕達には何も解らなかった。
 チェレンは、椅子から立ち上がると一呼吸する。
 
「起立。礼」
 
 言うと皆も同じようにタケミに礼をして、がたっと音を立てながら席に着く。タケミは、分厚い本を置いて白いチョークで黒板に大きく文字を書きはじめる。ドリフト国とサザン国の戦い。そう、これから歴史の授業だ。
 ちなみに、さっきまではポケモンの生態についての授業をしてた。
黒板前の僕の友達、黄緑色の帽子を被った女の子、ベルは楽しそうに教科書に何かを書いている。早速だ。彼女は、結構絵が上手い。どうせ、歴史上人物の写真にでも落書きをしているんだろう。前に見た、シンオウ地方の歴史上人物にケツ顎を描いていたのは、予想していなかっただけに吹いてしまったのを憶えている。
 そして、僕の目の前にいる茶色い髪の少年。今は、前の授業の教科書を机にピシッと綺麗に並べながら、ガン寝している。机からはだらーんと彼の両腕が垂れていて、前から見たらホラーだけど、後ろから見ていたら凄く面白い。たまに寝ているのに不意打ちで、後ろに声をかけてきて「プリンはカラメルがなきゃ駄目だ」とか「俺、早くワイドショーデビューしたい」とか意味不明な事を言われる。その時は大爆笑して僕が先生に怒られる。
 まあ、そういう時は、一人だけ助かってるのを見て少しムカつくけど…。それでも、タマキは元気良くて、素直で正義感もあっていい奴だ。で、歴史が馬鹿と超が付くほど大好きな奴なんだけど…なぜか、ドリフト国とサザン国の戦いの辺りから授業を聞かずに寝る事が多くなった。
 いつもは、ポケモンの授業の時しか寝たりはしなかったのに、何かあったのかな。タマキには、苦手な物が一つ、恐ろしいものが一つある。ポケモンと刃物だ。小さな頃からベルと僕、三人でこのカノコタウンに仲良く暮らしているが、これだけは未だに克服できずにいるみたい。
タケミがチョーク片手に続ける。
 
「えーっと。今日もドリフト国とサザン国の続きね? じゃあ、前回のおさらいから行くわよ? ドリフト国とサザン国は現在の何処でしょうか?」
 
「はーい! せんせぇー!」
 
 手を挙げたのは、授業開始早々、教科書に落書きをしていたベルだった。
 
「はい、ベルちゃん」
 
「うん。ドリフト国は、ポケモンリーグからチャンピオンロード。で、サザン国はサザナミタウンだよねぇ」
 
「ええ! 正解よ」
 
 一つ手を叩くとタケミは続ける。
 
「サザン国は、現在サザナミタウンで眠る海底遺跡がもう少し海の縁にあった時代の王国のことよ。サザン国の王、フレイム王は、その海底遺跡に住んでいたポケモンの王様と共に国を護っていた、と言われています」
 
「先生っ! アタシ、ドリフト国の事わっかんない」
 
 二つに可愛く結んだ髪を揺らしながら女の子が言う。
 
「ドリフト国には、ディスコード王という王様が居たの。そのディスコード王は、自分だけ…と国民に食べ物も何も与えなかったのよ。ポケモンも人間も自分の思うがままに操っていたと言われています。そして、ポケモンと人間の共存を強く願っていたフレイム王と戦いをする。フレイム王は、負けてしまうのだけれど…その後、ディスコード王は従えていた6人の賢者達と行方不明。結局、ディスコード王の悪事は消え、今の私達の世界があるのよ」
 
「それはつまり、僕らがポケモンと暮らせているのはそこに関係しているってことですよね?」
 
「そうね! イッシュ建国の有名な伝説もその時代は、ディスコード王の部下達がでっち上げて偽物の物語にすり替えていた、という話も残っています。だから、よく古本屋さんに売ってるイッシュ建国の本は偽物が少し多いの」
 
 質問したチェレンににこやかにタケミは言った。近くにいた男の子が、頬を膨らませながら腕を組む。
 
「なーんーだーよぉー!! なんでそんなカッコいいのさ! オレ達の住んでるココには、何もなかったのかよっ」
 
 言った男の子の話を聞きながらも、タケミは古来のイッシュ地方の地図を広げる。そして、サザナミタウン…サザン国の真下をチョークで突きながら続けた。
 
「サザン国の真下は、昔からなんにもないのよ。ただの平地…今のハイリンクが、ハイヤードポンドって名前の時の風景に似ていたらしいわ」
 
「じゃぁーカノコタウンは昔から何もない場所だったんだね」
 
 しょんぼりした顔でベルは教科書に落書きをしていた。
 
「だけど、こんな田舎でもいいことは沢山あると思うわ! それに、もっと大きな世界を見たければ大人になってから一杯見ればいいんだもの! これからだって、色んな事沢山経験でき…」
 
 あ、気づかれた。先生が凄い形相でこっちに近づいてくる。先生が止まった先は、僕の机の前の人。未だに寝てる。
 タケミは、右手の拳を握りしめるとタマキの頭を思いっきり叩いた。痛い、と声を濡らしながら何があったのかと周りを見回している。相当、遠くの世界に旅へ出ていた様子だ。
 
「タマキ君…貴方、歴史の授業はあんなに熱心に取り組んでいたのにどうしたの? なにか夜更かしでもしてるの?」
 
「あぁ…いやっ」
 
 ぼそぼそと口籠りながらも、意を決した顔でタマキは口を開く。
 
「聞いてた」
 
「え? 何を聞いてたの?」
 
「聞いてたって言ったの。俺、夢ん中でも先生の声、ちゃんと聞いてましたから」
 
 真剣に言っているタマキの真後ろで、チェレンは俯きながら口を手に当てて笑っていた。何をコイツは、先生を口説いているんだろうか。いや、実際は先生自身を口説いてるって言うよりも、先生のお怒りに触れてるだけだと思うけど。
 
「何を…聞いたのかしら?」
 
「っーと…ヒウンアイスが食べたい」
 
 言っている傍からタケミはタマキの頭をまた叩く。
 
「それは貴方が今思っていた事でしょ?! タマキ君は、オザキ先生が今下級生にポケモンとのふれあい授業をやっているので、そこに行ってきなさい」
 
「はあっ?! そんなぁ」
 
 思わず椅子から立ち上がり唖然とするタマキに周りの生徒達が笑いだす。チェレンも苦笑いをしながら、自分の鞄から飴玉を出すとタマキのポケットに入れた。気づいたタマキは、横目でチェレンを覗う。
 
「なに? これ」
 
「タマキがポケモンと仲良くなるには、今はまだそういう手段しかないだろ? だって、話しかけるきっかけをいつも掴めない」
 
 チェレンの話を聞きながらタケミは頷く。
 
「そうねぇ。なんの話かはさっぱり解らないけど、タマキ君は下級生の時代からオザキ先生の授業に無関心でしょう? 前の授業だって寝てたんじゃないの?」
 
 うっと喉を詰まらせながらタケミの言葉を飲む。確かに、寝ていたのは事実。ポケモンの授業だけ点数が悪いのも事実だ。タケミは、タマキの腕を引っ張って廊下に出すと笑顔で続ける。
 
「私の授業で寝た罰です! 今からオザキ先生の授業を下級生と一緒に受けてきなさい。後で、参加してたのかどうか…オザキ先生に聞きますからね?」
 
 ガタンと大きな音を立てながら教室の扉は閉められた。タマキは、ポケットに入った飴玉を握りしめながら溜息をつく。なんで、ただ寝ていただけで怒られなくちゃいけないんだ。
 だけど、自分の中でも不思議だ。なんで歴史の授業で寝てしまったんだろう。
俺の部屋には、テレビやパソコンがある。だけど、テレビは局に繋がれていなくて何も見れないし、パソコンも父さんにメールは出来るがそれ以外は何もできない。たまに母さんの眼を凌いで、リビングのテレビも見ようとする。けど、直ぐに見つかって結局は何も見れない。
 周りにいる奴らも、チェレンも、ベルも皆、映画や芸能とか意味不明な事話してる。だから俺も名前は知ってる。けど、実際に見た事がないから会話に入る事も出来ない。一緒になって笑えない。最近、ワイドショーとかいうのでシンオウ地方のデボンの会社の事が話されていたらしい。デボンの会社には、俺の父さんが出稼ぎに行ってる。
 俺もワイドショーデビューしたい。もっと色んな事が知りたい。俺は、この小さい世界で何もしないまま終わってしまうのかな…。
 
「夢…か」
 
 ぽつりと呟きながら、タマキは廊下を渡り外回りを出て庭に向かう。学校には環境係というものがあり、その人達の御蔭で庭は瑞々しいオレンの実や色鮮やかな花々で彩られていた。
 そんな庭を歩いていれば、小さな子どもたちの姿が見える。下級生達だ。皆、一人一人が茶色くて柔らかいミネズミやシキジカ、ヨーテリーを抱きしめたり、庭に在る小さな遊具で一緒に遊んだりしている。
 タマキが呆然とその様子を見ていれば、中心で一緒になって遊んでいたオザキが気づきこちらにやってきた。スーツにエプロンをしたその姿は世間を知らないタマキも変だと思えた。
 
「やぁ! 来てくれたんだねタマキ君!!」
 
「うん。転寝してたらタケミ先生に追い出されて、挙句の果てに先生の授業に参加しろって脅された」
 
 転寝レベルじゃなかった気もするが、まあ、それはよしとするか。そうタマキは自分の中だけで解決する。オザキも聞いて笑っていた。その周りには、シキジカやミネズミがいてじっとタマキの事を見つめている。彼らに気が付いたオザキは、ミネズミを抱き上げてタマキに向けた。
 
「ほぉーら! この子達も君と遊びたがってる」
 
「チュギギぃ」
 
 差し出されたミネズミは、オザキの手の中でその小さな手をバタつかせながらタマキに鳴いていた。その姿を見て体をびくつかせながら戸惑うタマキにオザキは溜息をつく。
 
「タマキ君は、まだポケモンが苦手なんだね」
 
「…うん。嫌いではない。苦手…だな」
 
 苦笑いしながらタマキは持っていた飴玉をミネズミの小さな手に乗せる。ポケモンの手には少々ずっしりしたその飴玉は、ミネズミを喜ばせるのには十分なプレゼントだった。貰って相当嬉しかったのか、その大きな瞳を輝かせながら飴玉にしがみ付いている。
 
「ハーイ! オザキ先生! 頼まれていたポケモンを連れてきたわ」
 
 背後から大きな声で話しかけてきたこの人は、イッシュ地方では誰もが知る有名なポケモン博士。アララギ博士だ。ワイドショーでも彼女を取りあげ、各地の放送局からも出演のオファーがきているらしい。伝えているのは「ポケモンについて」、「人間とポケモンについて」などだ。
 各地方にいる博士とも親しく、前にオオキド博士を招き研究の結果を報告していた。
 アララギ博士は、持っていたモンスターボールを掲げる。そこからは、青い光と共にチラーミィの姿が現れた。長い尻尾で自分の顔を擽ると、アララギ博士の肩へと飛び乗る。アララギ博士はタマキを見つめ続ける。
 
「そうか…君がタマキ君ね。小さい頃に君のお父さんと私の研究所に遊びに来た事、もう憶えてないでしょう?」
 
 有名人に声を掛けられてタマキは驚く。
チェレンの持っている雑誌でしか見た事の無い人だ。近くには、アララギ博士の研究所があるがポケモンが苦手なので近くを通る事さえなかった。そんな人が自分を知っている。
 アララギ博士は続ける。
 
「君のお父さんは、若い頃立派なポケモントレーナ―だったのよ。だけど、君が生まれて引退しちゃった…きっと、タマキ君と一緒にいたかったのね」
 
「ああ、父さんは今…ホウエン地方に出稼ぎに出てるよ。俺と母さんを支える為に」
 
 言うタマキの顔はどこか哀しげだった。しかし、直ぐにアララギ博士から距離を置くと眼を細めて、肩に乗るチラーミィを見ながら口を開く。
 
「父さんがすげぇーポケトレだったからって、俺も一緒ってことじゃない」
 
「あら? チラーミィが嫌いなの?」
 
 アララギ博士の言葉を聞いていたチラーミィもガーンと口をあんぐり開きながらタマキを見つめていた。段々とその黒く大きな瞳が潤っていくのを見てタマキは、両手を少し仰がせると眼の端を上げた。
 
「ち、違う! そのポケモンが嫌いな訳じゃ…」
 
「そう! じゃあ、抱いてみましょうか」
 
「えっ?!」
 
 驚くタマキを無視して、アララギ博士はチラーミィを手の平に誘導させる。チラーミィの両脇を掴むとアララギ博士は、無理矢理タマキの腕の中にチラーミィを押し込んだ。ふわりと長い尻尾が顎に当たる。柔らかくて温かい小さな体は、自分の腕にぬいぐるみの様にすっぽりはまっていた。
 腕の中でチラーミィはタマキを見つめるとにっこりと微笑む。心臓の高鳴る音がする。少し怖い。緊張して抱いたまま動かなくなってしまったタマキを見てアララギ博士は優しく微笑んだ。
 
「ちゃんとポケモンを抱けるじゃない。大丈夫よ! その子は人に危害を加える様な事はしないわ」
 
 言われて、タマキは強張った顔のままチラーミィを見つめた。確かに自分は今、ポケモンに触れている。見つめてきたタマキに嬉しくなったのか、チラーミィはそのまま腕を渡って首筋の方へやってきた。そして、少し曲がった服の襟もとを直すと頬に小さな顔を寄せてくる。
 
「ミィミィ!」
 
 少しだけ近くで風を感じるとチラーミィが尻尾を振っている事が分かった。それでもまだ強張ったままのタマキにアララギ博士は腕を組み続ける。
 
「チラーミィは綺麗好きなのよ。汚いものを見ると、なんでもピカピカにしたくなるの! 今はタマキ君に尻尾で挨拶しているわ」
 
「尻尾で挨拶?」
 
「ええ。だけど、仲間同士でしかそういう挨拶は見られないんだけど…どうやらチラーミィは、もうタマキ君の事を仲間だと思ってるみたい」
 
「そんな…」
 
 ありえない。本当にこのポケモンはそう思ってるんだろうか。俺にはポケモンの声が聞こえないから解らない。同じ生き物同士なのに、ポケモンと人間ってそういう所が曖昧だよな。
タマキは恐る恐るチラーミィの頭を撫でながらそう思っていた。チラーミィの方は、恐れる事無く逆に嬉しそうにタマキの手に顔を擦り寄せてくる。そんな姿を見ていると、少しだけ可愛いと思ってしまう。
 
「お前……本当に俺のこと仲間だと思ってんのか?」
 
「チラっ! ミィミミィ!!」
 
 激しく首を縦に振るチラーミィを見て、タマキはなんだか嬉しくなって笑った。おかしいな。凄く苦手だったのに、もうチラーミィに馴れてる。またコイツの笑顔が見れたのが嬉しい。
 強張った表情から一変し、和らいだ表情になった事を確認するとアララギ博士は、ポケモン達と遊ぶ小さな子供達に手を振った。
 
「わぁ!! アララギ博士だぁー!」
 
 気づいた子供達が一斉にアララギ博士の周りに集まってくる。子供たちの頭を撫でながら、アララギ博士は人差し指を立てた。
 
「ポケモン達とは仲良くなれた?」
 
「なれたよー!」
 
「私もシキジカと沢山遊んで友達になった!」
 
 子供達の顔には笑顔が溢れている。その隣で寄り添うポケモン達も同じく嬉しそうだ。そう見えてるだけなのかもしれない。実際は解らないけど、だけど本当にそう見えた。アララギ博士の話は続く。
 
「うん! こんなに直ぐにポケモン達と仲良くなれるなんて皆凄いわ! ポケモントレーナーとしてちゃんと旅も出来そう」
 
「ポケモントレーナー? それってポケモンを悲しませる人達の事でしょ?」
 
「そーだよ! オレ、そんなのになりたくない!」
 
 必死でそうアララギ博士に言う子供達。変だな。確か、チェレンの話しによればポケモントレーナーは、ポケモンと旅をする人の事だ。旅をして、同じポケモントレーナー達と戦いながら、もっとポケモン達との絆を増やす為に各町、街にいるジムリーダーとかいうポケモントレーナーと戦う。
 そして、8つあるジムを制覇し、強いトレーナー達が集まるポケモンリーグへと向かう。そのくらいしか覚えていないけど、この子達の言う悪い人間でないのは確かだ。アララギ博士は困った様に溜息をつく。
 
「君達…昨日のワイドショーを見たのね?」
 
「わいどしょー? 違うやい! てれび見てたの!」
 
 またワイドショーか。最近の奴等は皆ワイドショーが好きなのか?
 男の子が続ける。
 
「てれびでコスプレしたオジさんがなんか言ってたもん」
 
「カッコよかったよなっ! プラーズマーッ! って!」
 
 そう言いながら子供達は皆で揃って腰に手を当て敬礼して見せる。訳のわからないタマキは、横からこっそり口に手を当てアララギ博士に耳打ちする。
 
「なんなんだこれ。コスプレって、確か今、シンオウの方で流行ってるやつだよな? アニメキャラの服着るやつだろ?」
 
「そうじゃないのよ。今イッシュ地方で、ポケモンをトレーナー達の手から解放するってプラズマ団という組織が動いてるの」
 
「プラズマ団? 血漿のことか?」
 
 真剣な顔でそう言うタマキにふくれっ面でアララギ博士はまた大きな溜息をつく。どうして不機嫌そうな顔をしているのかよくわからなかったタマキは、えっと言葉を濡らし慌てるしかなかった。何か変な事を言っただろうか。
 近くでミネズミと遊んでいたオザキは、そんなタマキを見て口を開いた。
 
「プラズマの事を聞いてるんじゃないんだよ。そういう組織名なんだ。プラズマ団は、トレーナー達がポケモンを縛りつけていると思っていて、トレーナーからポケモン達を解放…つまり、自由にしようと活動しているみたいだよ」
 
「ふーん…」
 
 ようやく少し解ってきたのか、タマキは顔をしかめながら真剣にオザキの話を聞いていた。アララギ博士が続ける。
 
「確かに、トレーナーが自分のポケモンを見捨てたり痛めつけたりしている……それは現状よ。でも、それは何万、何億といるトレーナー達の中でほんの少しだけだわ。ポケモンを家族だ、仲間だ、そう大切に思っている人達は沢山いる」
 
「そうですよ! だから、皆はプラズマ団を格好良いと思ってはいけないんだ」
 
 後押ししたオザキの言葉に女の子がぎゅっと拳を握りしめ声を張り上げる。
 
「プラズマ団はカッコいいよ?! 苦しんでるポケモンを助けようとしてるんだもん!!」
 
「そ、そーだよ! 僕もそんなの許せない!!」
 
 一人がそういうと、また…と子供達は声を張り上げそうだよ、そうだよと声を合わせる。こうなったら、子供たちは全く言うことを聞かなくなる。アララギ博士も小崎もそんな子供たちに手が負えないと頭を支えた時。タマキは、真剣な表情で一人の男の子に向き合った。そして、抱きかかえていたミネズミの脇下にそっと手を絡めると持ち上げた。
 少し怖かったが、ミネズミはタマキに何もしてこない。少しほっとして肩の力を抜いた。男の子の方は、ミネズミを奪われて腹が立ったのかタマキの足に殴りかかってきた。子供ながらに強いパンチだ。
 タマキは、片手にミネズミを抱え直すと空いた手で男の子の腕を掴んだ。流石に高学年の力には劣るその腕は暴れるだけ無駄で、その男の子の体力はすぐに消耗されていく。
 
「放せよ! ミネズミは僕と遊んでたんだ! 返せっ! 返せよぉ!!」
 
 流石にやり過ぎたか、泣き出しそうな男の子にタマキは、視線を合わせるよう屈みながらゆっくり口を開いた。
 
「ミネズミはお前の大切な友達なんだな」
 
「そーだよっ! だから返せ! ミネズミを返せよ!」
 
「ああ、解った。だけど無理だな」
 
「っ! 兄ちゃんなんて大嫌いだ! 僕のポケモン…ふぅぇっ」
 
 目尻に溜まっていた涙が、男の子の大きな瞳から流れ落ちてくる。タマキは、男の子の頭を優しく撫でながら続ける。
 
「プラズマ団は……こうやって、お前や皆からポケモンを奪ってく。お前は、涙が出るほどそれが悲しいってこと…忘れんなよ」
 
「ふっうぅっ…嫌だぁ! 僕、ミネズミと離れたくない! ずっと一緒にいたい!!」
 
 とうとう大声を上げて泣き出した男の子に、ミネズミもタマキから離れてぎゅっと男の子を小さな腕で抱きしめる。タマキも男の子にごめんと謝りながら抱きしめていた。アララギ博士もオザキも真剣にその姿を見ている。
 そして、一人の女の子が俯きながらアララギ博士に話し出した。
 
「タマキにぃの言ってたこと…本当なの? プラズマ団は皆からこうしてポケモンを奪ってくの?」
 
「…そうよ」
 
 静かに頷きアララギ博士は皆にそう言った。
 
「プラズマ団は今、こうやってトレーナーや人からポケモンを奪っているわ」
 
 聞いていた子供達は俯き黙り込んで何も話さなくなってしまった。周りには、男の子の鼻を啜る音しか聴こえない。少し経つと、女の子はアララギ博士に頭を下げた。
 
「ごめんなさい…アララギ博士」
 
「ううん! 解ればいいのよ。ただ、皆これから大人になった時、こうして悪い考えを持っちゃ駄目よ」
 
「ならどうすれば悪い事を避けれるの?」
 
 泣きながら続いて言った男の子にタマキは優しく微笑む。
 
「悪い事は避けられない。けど、ポケモンと一緒にいればきっとそんな辛い事も乗り越えられる。まあ、俺…ポケモンとかそういうの詳しくねぇから分かんないけどさ」
 
 恥ずかしそうに青空を見ながらタマキは言う。なんか、少し臭い台詞に聞こえるけど多分そうなんだろう。優しく微笑むタマキの肩に乗っているチラーミィも男の子に鳴いた。
 
「甘いなッ! 子供(ガキ)は本当にこうだから見てて気色ワリぃぜ!!」
 
 突然、庭に男の声が響いた。金髪の青年は高らかに笑いながら校舎の1階窓から身を乗り越えてやってきた。背にはガーディを引きつれている。この青年はもう学校を卒業し、ポケモントレーナ―としての旅立ちも既に迎えている。名前は、キョウジ。
 6年前にカントー地方から母親と共にこのカノコタウンに引っ越してきた。皆からは悪大将と呼ばれていたが、それが長年と続くと彼のポケモンの扱いも、彼自身の悪い性格も知ってしまう。彼の悪事には皆頭を悩ませていた。中でも彼が一番に手を出すのはタマキだった。なぜかキョウジはタマキを嫌っている。
少し泣き止んだ男の子をオザキに託すとタマキは、そのままキョウジを見上げた。彼はまじまじとタマキを見回すと厭らしい笑みを浮かべる。
 
「おお? ちっちぇーしポケモンなんて連れてるから解らなかったぜ」
 
 言われても無反応のタマキ。肩に乗るチラーミィは小さな体を震わせながらキョウジを見ている。気づいたタマキは、チラーミィの頭を撫でながら続けた。
 
「こっからチャンピオンとかいうのになるって自分の家の窓硝子割って出てったの…2年前だったか…?」
 
「2年? ああ、時間の事聞いてんのか? 今はタマちゃん、歴史の授業じゃねーの? たぁーくさん勉強して歴史の教科書に載るんだよなぁ? その時は、写真にいーっぱい色付きで落書きしてやるよ」
 
 ゲラゲラと狂ったように笑うキョウジに、耐えていたタマキもふっと息を漏らすと蔑んだ瞳でキョウジを捕らえた。
 
「ああ、そーだな。お前こそチャンピオンになって雑誌や本に載ったら、その暁に俺が立派な無精髭でも描いてやるよ。まあ、その前にイッシュ地方に住む勇敢な若者達の手で、顔面クレヨンで化粧されると思うけど」
 
「んだと?!」
 
 ガッとキョウジはタマキの胸倉を掴んだ。チラーミィに整えてもらった襟元が乱れる。険悪な雰囲気に気が付いたオザキは、キョウジとタマキの間を割って離した。それでも殴ろうと暴れるキョウジの頬をアララギ博士は平手で叩いた。肉の打ち合う音が響き、周りにいた子供達のざわつく声が広がる。
これは、相当痛かっただろう。キョウジは赤くなった頬を押さえながらアララギ博士を睨んでいた。
 
「糞ババぁが。研究所破壊すっぞ?」
 
「ええ、やりたければどうぞ。だけど、今の貴方には無理だと思うわ。2年前からちっとも成長してない貴方に、あの立派な研究所が壊せるはずない。そんな力、今の貴方にはない」
 
 冷たい視線がキョウジに集まる。子供達、オザキ、アララギ博士、皆が見つめていた。無性に悔しくなったキョウジは、舌打ちすると地面に唾を吐く。
 
「弱ぇ弱ぇってウゼー奴らだな?! ったくババァもガキもセンコーもよぉ!」
 
 言いながらキョウジは近くにいたガーディを蹴り飛ばした。驚いたアララギ博士は、急いでガーディに近づくがキョウジはそれに反感するように拳を振るフリをする。避けよう腕で顔を覆ったのを見計らって、キョウジはガーディを抱いてそのまま町中を駆けていく。
 そんな姿を見ながら子供たちは、こそこそと小声で話しあっていた。あんなトレーナーにはなりたくない、と。
 
 
 キーン…
 キーン…
 
 
 授業の終わりの鐘が鳴る。鳴り続ける鐘に負けないような声でアララギ博士はオザキに声をかけた。
 
「今日はもう授業無いんですか? オザキ先生」
 
「ええ、もう直ぐ春なので新入生達を迎えるのに備えて全学級4時間だけなんです」
 
 話しあっているオザキとアララギ博士を見て、タマキは今がチャンスだとそっと庭から離れていく。子供達はキョウジの事で話が盛り上がっているし、アララギ博士もオザキも二人で話しているので誰も気が付いていない。
 
「チラ! チラっミィぃ!!」
 
 肩に乗っていたチラーミィが首の袖を掴んで庭の方へと引っ張っている。しまった。ポケモンを置いてくるのをすっかり忘れていた。タマキは慌ててチラーミィを優しく掴むとアララギ博士達のいる庭に戻る。
 途中で木陰を見つけ、タマキはチラーミィをそっとそこに置いた。
 
「悪いな…戻ったらバレっからさ」
 
「ミィ! ミぃミミぃ!」
 
 ぶんぶんと首を横に振りながらタマキの人差し指を掴んでまた引っ張る。一緒に戻ろうって言ってるんだろうな。今回ばかりは、行動だけで読み取れる。それでも、タマキはチラーミィから逃れた。
 
「そのまま行けば博士の所に戻れる。またな、今日はありがと」
 
 そう言い残し、タマキはその場から立ち去った。残されたチラーミィは、悲しそうに大きな耳を垂らしながらその姿をじっと見つめていた。


 3話に続く…

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HN:
代珠
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
  学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
☣メールフォーム☣
感想・連絡・用事のある方は
お気軽にこちらへお返事を…
→kokoyozuyozu@mail.goo.ne.jp
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