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ようやくオワタ\(^o^)/
これから宿題やらないとアタイ死ぬww

だけど、これから1st最終まで今日はバンバンあげますのでw
何か月か前の…約束通りwww


では、読む前の注意事項いきます!!
・男主人公。
・これから書く本編へ繋がる鍵となる章です。
・漢字の間違えとか文とか気にしない。
・主は文章能力はないからね?(´∀`)
・背景の絵写的な要素少なめ。
・↑だから心で、感じやがRE。
・うん、これはもうお話っていきだ、小説ではないNAI♪
・↑それでも誤字脱字教えてくだされば嬉しいです。
・感想嬉しスw
・これ、フィクションね(・∀・)
・そんでもって、読んだ事妄想して頭で具現化する 能力 !! コレ大事。


以上を守れる方は、下記から25お楽しみください



======


 リバリー王国対ドリフト王国の戦い。神の宿る崖とも称するハイヤードポンドでの争いは、付近の王国や小さな町にさえも声が届かなかったようだ。思っていた通り、人々にも獣達にも被害を与えることはなかった。
 西と東に分かれて戦ったリバリー国は一つは勝ち、一つは引き分けに終わった。



 リバリー国に帰ってきたのは、戦争後の3週間後。レイン達が率いる西側からの音沙汰が無かったので、体力の残る者たちだけで様子を見に向かった。東側は渇いた血や死体が転がり生存者はわずか3人しかいなかった。
 少しでも残った戦友達の形を木箱の中に入れ、それでも5個しか埋まらなかったそれを担ぎリバリー国へと帰還した。

 長い距離を歩き続けた141人の兵達は、足腰を唸らせながらリバリー国の門をくぐった。彼らを見た瞬間、門番が上から無事帰ってきたと鐘を鳴らす。周りに国民たちや小さな獣達が集まってきた。
 それでも、兵達に触れようとする者たちはいない。その場で足を崩す人もいれば、死臭や血の匂いを纏う兵を見てみんな言葉を失っていた。やっと声をかけてきた人間は、白衣を着た男だった。

「皆さん無事でなによりです」

 白衣の男の背後から、髪を二つに結っている女の子もやってくる。いつも城で食事作りを手伝っている女の子だ。少女は、タキを見つけると静かに声をかけてきた。

「皆もお兄ちゃんも怪我…大丈夫?」

 言われてタキは拳を強く握りしめると、無理やり優しく笑って見せた。それでも、大丈夫だよ、とは言えなくて…結局かえって心配させてしまった気がする。女の子を隣に白衣の男はやってくると一つお辞儀をして見せた。

「国で科学者をしております、アーチャーです。お会いするのは初めてですね」

 少し笑むとアーチャーは、背負っていたリュックの中から銀色の箱を取り出し続ける。

「傷ついた獣達を集めます。この箱の中に入れてください」

 そう言いアーチャーは傷つき少し動くのがやっとだったタキ達、一人ひとりに回って赤い球を回収していく。回収を終えたアーチャーは、箱を大事そうに両手で抱えながら兵達が持って帰ってきた物を見た。
 人が一人分入りそうな木箱が5つだけ。命を懸け戦った兵は、480人。帰ってきたのが141人だ。生き残ったのが141人で、何故ここにある棺桶は五つしかないんだ。思いながら、アーチャーはクライムへ視線を移す。

「国のため勇敢に戦ってくれた戦士たちはリバリー城の広間に連れてきてください」

「よろしくお願いします」

 同じくクライムは頭を下げる。アーチャーも銀の箱を両手に城へと歩き出した。兵達もそれに続き、棺桶を引き続く。
 追うようにしてそれの家族だろう、女や子供たちも列に続いた。




======




 城に戻った彼らを先に出迎えたのは、目の下を黒くしたリバティ王様だった。すこし痩せてしまったようにも見える。みんなは、休むことを知らずに共に戦った仲間を詰めた5つの棺桶を城の大広間へと移動させた。
 桶の中は、もう見ていられないほど人の肉の破片が腐敗しているだろう。せめてと思い、最後に皆で棺桶の上に白い花を手向けた。

 広間には先に集まっていた沢山の人がいた。みんな家族を迎えにきたのだろう。生きて帰ってきた彼に抱きつく女もいれば、家族の姿を探す人もいた。それでも行った時より半数以上の人がいないんだ。それぞれを静かに見つめるタキ。自分は、この人たちに何をした。希望のために彼らからなにを奪った?
 棺桶の数と生き残った人数を見て、唖然と立ち尽くしていた女はがくりとその場に座り込んでいた。きっと、彼女の家族もこの中にはいないんだろう。彼女を見つけたもう一人の女も、彼女をそっと抱きしめ静かに泣いていた。
 抱き寄せられた彼女は泣きながら小さく口を開いた。

「これは…なんなのよ!? なんでこんなに棺桶が少ないわけッ? なんなの…なんで旦那の亡骸すらないの!? 死んでしまった彼にも私は会えないの?!」

 両手で顔を覆いながらただ彼女は泣きじゃくっていた。それを咎めるものも勿論いない。みんな同じ思いだからだ。ここにいる半数以上は皆同じ気持ちだ。
 死者の家族たちは、徐々に数を増し広間を抜け場内を廻って人が集っていた。それでもそこに、大切な人の形はもうない。

 また、家族を迎えに親族が広間の扉を開いた。その中には、ミリアやレインの家族たちが見受けられる。ミリアがワグダを見つけ縋り寄るようにやってくる。涙もろいワグダは、ミリアを精一杯抱きしめながら声を上げ泣いていた。
 一緒に来ていたレインの家族たちも周りを見てすぐにレインを探し始める。

「レイン! レインは!? レインは無事なの?」

 とにかく彼の名前を呼び、人を掻き分け必死になって探していた。きょろきょろ辺りを見回すレインの姉妹たちはタキを見つけ、すぐにこちらにやってきた。レインの母は強張った表情で笑んで見せる。

「ああ、タキ君。レインは? レインの姿が見当たらないの」

「…レインは……」

 目を細め視線を避ける。ここには息子さんはいません、なんて言えるわけがない。すると急に言い留まるタキの両肩を掴んでくる。

「な…に? なんなの? 隠してるのね? 隠してるんでしょう、タキ君ッ!?」

 目を合わせたレインの母親は狂ったように何度もレインの名を呼び、ずっとタキにそう聞いてきた。姉妹達もその場で泣き崩れタキの言う言葉を待っている。真実はもう知っているんだろう。ここにレインがいないのも一目見ればわかるだろう。それでもついこないだまで元気にいたレインが、もうここにはいないということを信じたくない。
 自分だって信じたくない。レインもダンも共に戦った兵達も死んでしまったことを。
 タキにまだ言い寄るレインの母親を止める様にして、杖を持った老人が静止しに入ってくる。その隣からまだ若いだろう髪を一つに後ろに束ねた女性が口を開いた。

「やめなよレディさん。タキ君はこっちに来て!」

「え…?」

 体を引き寄せられタキは何故かその人達に囲まれた。疲労で力の抜けそうな体は有無を言わずにそのまま連れて行かれる。自分の背中を押される感覚に顔を少し後ろに向けると、そこにはレインの妹達がいた。タキの周りにいた兵士達が見えなくなるくらいまで連れて行かれると、赤毛の頭とクライムの黒い海賊帽子だけが見える。
 表情の読み取れない場所まで連れてこられてしまった。何が起こるのかとタキが首を傾げていると、急に赤毛の女が甲高い声で話しはじめた。

「この後もまだ戦う気なんだろう? これ以上殺し合いをしてなにになる?」

「子供も大人も死んでるのよ!? もう戦争はさせない!」

 他の場所からも女性の声が聞こえてくる。それに刃向うように男の声も聞こえてきた。

「必死でお前ら女や子供を護ってるんだぞ!? 死者は当然出る」

「あんた…ッ! 何言ってるか分かってんの!? 命を馬鹿にしないで!」

「そんな正義語るならお前たちも戦えばいいだろ!」

 女に言い返す男の声は、兵達の方から聞こえてくる。男が何かをしようとしたのか、ガタンと大きな肌の打ち合う音が聞こえてくる。黒い帽子がゆらりと動くと誰かを押さえつけたのか、その帽子が沈んで見えなくなってしまった。

「止めてください! 死者の前ですよ!!」

「うるせぇ!! お前もお前だッ! 何が元リバリー兵だ! お前の弟は全く戦力にならなかったじゃないかッ!!」

 男の怒鳴り声と一緒にまた肌の打たれる音が響いた。クライムの被っていた帽子が風を切って上へと舞う。殴られたのはクライムだ。彼は全く悪くないのに。

「待って! やめ」

 連れられていた女の手を振り解きタキはクライムを助けに急いで向かっていく。しかし、背中を押していたレインの妹達ががっしりタキの体にしがみ付いてきた。

「お願い…離して」

「駄目! タキ兄ぃまで死なないで!」

「絶対行かせない!」

 タキの黄緑色のポンチョが彼女達の手に閉められしわしわと跡を刻んでいく。頑なになってタキを離そうとしない姉妹に抵抗できずにいると向う側からクライムの声が聞こえてきた。

「ダンのいる東側軍は確かに相手と共に敗北しました。ですが…」

 無事だったみたいだ。気が付けば周りの家族たちが冷酷な目つきで兵達を見ていた。そんな視線や思いも感じさせないくらい、クライムの声は大きくなっていく。

「ですが、命を懸け戦ったダンは私よりも強い! 勿論、レイン君や他の人達もです! 命を懸け護られた私達が彼らの思いを潰して、こんな言い争いをしていていいのかッ!!?」

 クライムの一喝で今まで言い争っていた赤毛の女も兵の声も聞こえなくなった。しばらく静まったあと、レインの母…レディの涙声が聞こえてきた。

「それでも…っなんで子供を戦争なんかにッ…! 王や大人は何を考えているの!? レインを返して! 返してえええッ」

「もうやめろ! 皆、悲しんでいるんだ!! 私やお前だけじゃないんだよ」

 泣き叫ぶレディの後に男の人がそう続いて声をかけていた。どうやら、レインの父親の様だ。タキ達率いる東側軍と共に戦った兵だった。
 泣き叫ぶ声を耳にしながらクライムを殴った兵が、床を強く殴りつけ震える声で叫んだ。

「俺達は本当に勝ったのかッ!!?」

 本当に勝ったんだろうか。俺はビクを護りたかった。勿論、みんなも護りたかった。自分と同じ思いを持った仲間達と共に戦って、彼らは何を得たんだ。確かにビクを護りたかった。けど、皆を犠牲にしてしまった。
 自分の勝手な決断でこうなってしまった。

 俺はどうしていたら皆を護れたんだろうか?

 考えても、考えても答えなんて出てこない。答えはもう、ここにあるから…。これが、今俺達が見ている真実だ。

「ごめん……ごめんなさい…ッ」

「タキ兄ぃ…」

 心配そうに見つめるレインの姉妹達も声を合わせぽつりと名前を呼んでいた。
 皆こんな理想を求めていたんだろうか。求めていた結果が犠牲という二文字だけ。自由なんて言葉には程遠い。
 ミリアと共にやってきたワグダは、その太い腕でタキの頭を抱き込むとそっと頭を撫でる。

「おめぇだけが悪いんじゃねぇ、タキ坊。俺達全員が護れなかったんだ」

 なんでだろう。なんでこんなに優しい人達ばかりなのに…。戦争に賛成すべきだとお様に言った俺を憎む人なんていない。それだけで泣きそうになってしまう。
 絶対に泣くもんか。俺は絶対泣かない。命を張って闘ってくれた仲間のためにも、まだ泣いてる暇なんてない。こんな犠牲のない平和な世界を絶対に作ってやる。




======




 サザン国から帰還したハルモニアは、獣達と共にドリフト城へと向かう。途中、少数の兵の軍隊を見たが気にすることなくハルモニアはディスコード王のいる部屋へと向かった。
 部屋を開けたその先には、王座に深々と座るディスコード王がいた。彼は、ハルモニアを見て厭らしく笑んでいる。一方のハルモニアは、約束通り持ち帰ってきた金の首飾りを差し出した。金の箱の首飾りは、何か文字が刻まれているように見えるが…そんなもの今のハルモニアには関係ない物だ。
 差し出された金の首飾りを見てディスコード王はまず窪みの部分に目を凝らす。淡く満ちる水の光を確認するとふぅっと息を吐く。

「ふふ、確かにこれはフレイム王の身に着けていた金の首飾りです。ご苦労様でした、ハルモニア。これであの国に囚われていた獣も逃げられたようです」

「そうですか。それはよかった」

 包帯で覆われていない左目が嬉しさに細くなる。ディスコード王は、金とダイヤで出来た器に首飾りを入れ続ける。

「獣たちは部屋にいるのですか?」

「はい。皆疲れているので…」

「そうですね。今日は城で休んでいくといいでしょう。それでも、今から貴方は自由の身ですよ」

「自由…」

 ようやく手に入れられた。ハルモニアは嬉しさから自分の頬が緩むのが分かった。君が言っていた夢を追う旅にようやく僕も行けそうだよ、タキ。今君は、どこまで行けているのかな。
 ハルモニアは深々と頭を下げると最後の挨拶をする。

「お休みなさい」

「お休み、ハルモニア」

 これでこの国ともこの人とも二度と会わないだろう。僕も友達も自由になったんだ。ハルモニアがディスコード王に背を向け扉へと歩いて行く。この扉を開ければ、自分は解放されるんだ。
 自由はどんなものだろう。またタキに教えてもらわないといけないかな。
 思い連ねていたハルモニアの胸は、これから迎える自由に高鳴る鼓動とは違い別の感覚が体を駆け廻っていた。見れば自分の握りしめていたドアノブにかけて紅い紅い血がべっとりついている。
 苦しい。口からも胸からも血が溢れ出てくる。この部屋にはまだ人がいたんだ。体の力が抜け音を立てて冷たい床に倒れる。ディスコード王は王座から立ち上がると不敵に笑む。

「貴方の代わりはまだまだ沢山いるんですよ?」

 不気味な笑い声を聞きながらハルモニアは苦しさに咳き込む。後少しだったのにな…

 やっぱり僕たち獣に自由なんてないんだ。

 ゆっくりその息の根が止まるまでハルモニアを見届けると、七賢者の1人である男が彼を刺していた剣を抜く。背後にいたディスコード王は、汚らわし物でも見るかのように瞳を細めハンカチを口にあてがう。

「ふん。死んだか?」

「はい」

 剣を鞘に納める賢者の隣で、ディスコード王はハルモニアの亡骸を足で蹴る。

「こいつも馬鹿ですね。あの男と同じです。貴方にとっての自由は死ということなのに」

「しかし…本当に良かったのですか? 研究は…」

「大丈夫です。彼の研究はすでに終わっている。彼の代わりはいくらでも作れますよ。それより、他の獣も殺しなさい。夕食に毒でも持っておけば時期に死ぬでしょう。化け物でも所詮は動物なのですから」

「はっ! わかりました」

 告げられた賢者は、血塗れのドアノブを懐に入れていた布で拭き取りそのまま部屋を後にした。賢者の行った後に、何処からともなく黒い服を着た三人の若者たちがやってくる。彼らは、ハルモニアの亡骸を担ぐとまたその場から消え去った。
 誰も居なくなった部屋の中、ディスコード王は大きな窓辺から国を見渡しぽつりと声を濡らした。

「ここも潮時ですね」




======




 広間に集まっていた人達がみんな帰ってしまった後。タキも久々にリバティ王様の部屋へと訪れた。怪我をしてしまったクジャは、まだアーチャーさんの元にいる。しばらく怪我が治るのにも時間が掛かるらしい。
 付き添いできてくれたクライムと共にタキは椅子に座るリバティ王様に声をかけた。

「ただいま帰りました」

「タキよ。よく…頑張ってくれたのう」

 頑張った…?
 俺は頑張ったのか?
 皆から大切なものを奪ったのに?

 渇いていた唇を開くとタキは悲しそうに言う。

「俺は全く頑張ってなんかいません。自分から王様に戦争をしましょうと言っておきながら……大切な人を失ってしまった」

「そうだの。それでも、それはタキのせいではあるまい。私のせいでもある」

 リバティ王は、その席で庭に繋がる窓辺を見つめる。タキとレインがこの庭でドリフト国のスパイを捕らえたのがついこの前のように感じる。あの時いたこの子の友達は、もうこの世にいないのか。王は続ける。

「自由や夢を持つということは、それほど過酷な運命と共に生を成していかなければならないと言うことじゃ。お主や私、国民にはそれを結ぶ覚悟があれど…力が足りなかった」

「だけど…」

「まだ戦いは続く。ディスコードも戦力が半減したところで生気は失わないじゃろう。かと言い相手も体制を立て直すのに時間が掛かるはずじゃ」

 リバティ王は、真剣に言うとタキの瞳を見てにっこり優しく微笑んで見せた。

「最後に一度、ビクティニの顔が見たいじゃろう?」

 リバティ王様が悲しげに微笑むのを見て、タキはぎゅっと下唇を噛んだ。最後に、と言った。でもそれはきっと、死ぬかもしれないからという意味だろう。今ビクに会って自分はどうなるんだ。平然としていられるか。
 一体何を話してやればいいのか分からない。リバティ王様は、俯くタキから目を逸らしクライムに続けた。

「クライム、船の準備を…もう戦えぬ者や国民も乗せなさい」

「はい」

「タキも支度をしなさい」

 言われて強く目を瞑るとタキは王様にお辞儀をする。

「クジャはまだ傷を負っているので置いて行きます。俺がビクに会いに行ってる間は…どうかクジャのこと、よろしくお願いします」

「任せておきなさい」

「じゃあ…俺はメロエッタに話しをしてきます」

 タキは最後にクライムにそう言うと、その場から走り出すようにして出て行ってしまった。残されたクライムは、悲しそうなリバティ王様を見つめる。

「それで…本当にいいのですね」

「ああ、もう構わん。これ以上、私の我がままを続けても傷つく者が増えていくだけじゃ。クライムよ。行く際、ちゃんとあの子をビクティニに合わせてやっておくれ」

 王は椅子から離れるとクライムの元へ行きその両手を強く握りしめた。

「私があの子を思うように、あの子も既にビクティニを家族だと思っておる」

「…わかりました。みんな無事に私が送りましょう」

 クライムはリバティ王の手を強く握り返すと、その場でお辞儀をして部屋を後にした。王は最後の決断を下された。優しすぎる王は、どこにもいないとは…今ならわかる気がする。
 廊下を歩いていると、小さな城からでも自分とダンの船が見えた。大きなあの船に乗って、いつも海原を渡った。笑顔を遠くに届け、笑顔と一緒にこの国に帰ってきた。
 潮風を感じ大きく背伸びをして帰りを待つダンを隣に、クライムはいつも舵を持ち行きの進行をしていた。

「なんで私一人置いて行くんですか、ダン」

 船を眺めているとやはり涙が溢れてくる。先程まで耐えに耐えた涙は、ぽっかり空いた心と同様に溢れ出ていた。

「私は確かに…全力で護り抜こうと言いましたが……命を張ってまでなんて言ってませんよ」

 クライムは自分の服の袖で涙を拭き取りじっと空を見た。
これから私が間違った道を進んでしまった時、私はどうやって帰ってきたらいいのだろうか。私が進んできた道に今までダンはいたのに急に消えてしまったから…。
 ダンは間違った行き方をしてしまったのだろうか。お互い、専門分野が切り替わってしまったからこんな結果になってしまったのだろうか。君のいない真実を信じたくない。

 みんなに前を向けと言っておきながら、私は前を向けそうもない。もう二度と帰れないのが怖いから…。




======




 城から離れたタキは、メロエッタを探していた。あの孤島への道を知っているのは彼女しかいないからだ。船乗り場に着くとメロエッタが腰を下ろし海を眺めているのを見つけた。彼女はタキが近づいてくるのに気が付くと静かに話し出す。

「(私も昔…夫に逃され、息子と逃亡したことがありました。その時…私は大怪我を負い、息子はどうなったのかわかりません)」

 透き通るような声で音質を変えながら歌を空へと刻む。彼女の紡いだ歌の粒が泡のように空へと消えていった。

「(嫌ですね。死の旋律はいつも気を暗くさせます)」

「メロエッタ…」

 言って少し歌うとメロエッタは、目を見開いて口を止めた。彼女はゆっくりタキに顔を合わせ驚いた表情で見つめてくる。きっと服か空か、どこからか自分が今言おうとしていることを聞きつけたんだろう。
 それでもタキがメロエッタにそのことを告げに来た、というのを彼女は黙って待っていてくれているように見える。タキは小さく息を吐くと思い切ってメロエッタに口を開いた。

「俺をビクのいる島まで…連れて行ってくれませんか」

 聞こえた音を真剣に聞き、メロエッタは静かに答える。

「リバティ王様のリバティとは、自由という意味だそうです。聞いた時からとても素敵な名だと思いました。リバリー国の人々は王の名前や意をあやかり、ビクティニのいる島にこう名前を付けました。リバティガーデン、自由の庭…」

 小さな足で立ち上がるとメロエッタはふわりとその場で浮いた。彼女の緑色の髪がなびく。聞こえるんだろう。何があったか、どうなったか、誰が生き延び、誰が死んでしまったのか。
 メロエッタは、大きな目を細めるとタキの顔の目の前に立った。

「タキさん。貴方をリバティガーデンへと案内させていただきます」


 26に続く…

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代珠
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性別:
非公開
自己紹介:
▼代珠(よず)
October 10
  学生
出身:シンオウ地方 コトブキシティ

ゲームや漫画好き。物語の構想を練るのが好物。←または捻る。←の作業時はとにかく変人になる。アップルティーが好きでチーズが嫌い。自分でよーさんとニックネームを付けている、なんか寂しい人。


▼スタ
September 20
  学生
出身:シンオウ地方 ハクタイシティ

 いつも物語の感想や間違えを指摘してくれる、代珠の心強いお友達。ホムペ等を作ってくださっています。好きなものはお猿。トラウマは、多分ゴリチュウです。
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→kokoyozuyozu@mail.goo.ne.jp
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